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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第26章 最終決戦近し
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第一関門突破

 アース騎士団長は、駆け足でわたしの前まで走り寄ると、

「ウェルシー伯、ここにおられたか。我々は、ともかくも正門前にいた敵を片付けました。ここにいる名乗らぬ奥ゆかしい豪傑殿のおかげです」

 と、プロトタイプ1号機を見上げた。

 アース騎士団長の話のよると、プロトタイプ1号機は(騎士団長にとって)正体不明の敵・鎧武者をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、まるで鬼神のごとく獅子奮迅の働きを為したらしい。そのプロトタイプ1号機の戦いぶりを見て、それまで押されていたドラゴニア騎士団と青年ドラゴニア党は奮い立ち、平素の2倍、3倍の力を出して(早い話、とても頑張って)逆襲に転じたという。その結果、この戦いを通して味方の犠牲者ゼロというわけにはいかなかったが、ともかくも正体不明の敵・鎧武者を全てドラゴニアン・ハート城の周囲のクリークに叩き落とし、戦闘不能にすることができたとのこと。

「それにしても……」

 と、アース騎士団長はいぶかしげな顔でつぶやく。

「あの正体不明の鎧武者、あれは一体何者なのでしょうな。我々のような騎士ではなく、モンスターとも少し違うような……」

 それはそうだろう。騎士団長の言う正体不明の敵は、重武装人造人型兵器の量産型(と推測されるもの)なのだから。


 そして、その時、アース騎士団長の背後で控えていたニコラスが、一歩、進み出て、

「父上、ウェルシー伯、こんなところで時間を潰しているヒマはありません。とにかく、一刻も早く、新ドラゴニア侯のもとへ!」

「いや、待て、ニコラス。私も気持ちとしては、おまえと同じだ。しかし、敵が先ほど片付けた連中だけとは限らないぞ」

「しかしっ……」

 ニコラスは、不服そうに見えるものの、それ以上言い返そうとはしなかった。さっきまでとは態度が少々変わっているようだ。父子共に力を合わせてプロトタイプ1号機の(劣化)コピーのような鎧武者(量産型)と戦ったということで、ニコラスの心の中に心境の変化のようなことがあったのかもしれない。どうでもいいけど……

 わたしはおもむろに、「えー」と無意味な前置きをしつつ、

「少なくとも、ドラゴニアン・ハート城の中庭には、敵はいないはずよ。さっき、隻眼の黒龍が、あっさり片付けちゃったからね」

 と、中庭に幾つも転がっている大きな石のような固まりを指さした。これは、言うまでもなく、プチドラの火炎攻撃の犠牲となった量産型の残骸。でも、初めて見る人にはサッパリ分からないだろう。

 果して、アース騎士団長は「うーん」と首をひねりつつ、わけの分からないような顔をしていたが、しばらくすると、

「とにかく……、ウェルシー伯がおっしゃるように、結論的に中庭に敵がいないということでしたら、先に進みましょう」

 ゲーム的・RPG的には、これで第一関門突破といったところだろうか。

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