何度目か忘れたけどニコラス登場
その場でしばらく立っていると、「パカッ、パカッ」という音は更に大きくなり、馬に乗り甲冑を身にまとった戦士(騎士か?)たちの姿も大きく見えるようになってきた。
アンジェラは、わたしを見上げ、
「ドラゴニア騎士団の皆さん……でしょうか? それにしては……」
と、何やら合点がいかない様子。
「さあ、どうかしら。もし、そうだとしたら、あまりにも芸がなさ過ぎじゃない?」
昨日、アース騎士団長以下ドラゴニア騎士団は、ドラゴニアン・ハート城にいたプロトタイプ1号機にソックリな戦士の集団にまったく歯が立たず(犠牲者が出なかったのが、せめてもの救い)、街中に逃げ戻ったばかり。いくら騎士団長とはいえ、意味もなく同じことを繰り返すほど頭が悪いとは思えないし、また、その反対に、昨日の今日でお城の奪還作戦の妙案を思いつくほど、知恵の回る人でもないだろう。今頃は配下の騎士たちとともに「ああだ、こうだ」と議論を堂々巡りさせているのではないか。とすれば、今わたしたちのところに迫っているのは、ドラゴニア騎士団ではないというのが合理的な推論となる。
なお、戦士たちをよく見てみると、甲冑とともに緋色のマントをまとっていて、その格好には、アース騎士団長たちとは違った趣きがあって……
そんなことを考えていると、甲冑をまとった戦士たちの集団は、どんどんとわたしたちに近づき、
「ああ、そこにいるのは、ウェルシー伯ではありませんか!」
と、聞き覚えのある声が通りに響いた。
その(わたしに声をかけた)騎士は、やや危なっかしい手綱さばきながらも馬を停め、通りに降り立った。そして、彼は、あたふたと落ち着きなく兜を脱ぎ、
「ご無沙汰していました。ニコラスです!」
「あら、まあ……」
と、わたしは最初、少しビックリ。でも、次の瞬間には、適当に愛想笑いを浮かべつつも、内心「ふぅ~」とため息をついた。すなわち、いわゆるぶっちゃけ話としては、ニコラスは必要がないならなるべく会いたくない相手だという意味。緋色のマントを目にしたところで、その戦士の集団が(ニコラスと仲間たちによる)青年ドラゴニア党と気付くべきだったけど、今となっては後の祭り。わたしの記憶の中に、緋色のマントも青年ドラゴニア党もあまり残っていなかったので(多分、アンジェラも同じだろう)、言ってみれば不意を突かれたようなもの。
甲冑をまとった戦士たちは、わたしたちを前に、次々と馬を降りた。
全員が通りで整列すると、ニコラスが一同を代表するような形で、
「我々、青年ドラゴニア党は、今日こそドラゴニアン・ハート城を奪還すべく、こうして参上つかまつったところなのです!」
そして、彼と仲間の青年ドラゴニア党の面々は、場所柄など構うことなく、「うぉー!」と雄叫びを上げた。なんだか、またまた面倒なことに……




