騎士の屋敷
先導の騎士は、屋敷の立派な門をくぐると、
「こちらです。何もないところで、申し訳ないのですが……」
「ありがとう。泊めてもらえるなら、どこでもいいわ」
と、わたしは騎士に続き、屋敷の敷地内に足を踏み入れた。門から屋敷の玄関先まで小綺麗に手入れされた中庭を横切ると、玄関先では、十名程度の使用人たちが左右両側に分かれて立ち、わたしたちを出迎えている。先導の騎士は、ドラゴニア騎士団の中でも、それなりにグレードが高いのだろう。
わたしたちは、屋敷の中でおそらく最高級の部屋をあてがわれ、騎士曰く「夕食の用意ができるまで、しばらく部屋でゆっくりしてください」とのこと。ちなみに、部屋は、ドラゴニアン・ハート城の「大安室」のように理解不能なものではなく、騎士のステータスに鑑みれば一般的・平均的なもの。
なお、気になることを一つ挙げるとすれば……
「ウガガッ、ウガガッ、ウガガガガッ!」
これは、すなわち、プロトタイプ1号機の予測不能な行動で部屋が破壊されないかどうかということ。ただし……
「だめよ! プロトタイプ1号機、そこに『おすわり』!!」
と、アンジェラが常識的な感覚で相手してくれてるみたいなので、これなら、多分、大丈夫だろう。
そして、程なくして使用人が現れた。曰く「夕食の用意ができた」とのこと。
わたしは思わずドキッとして、
「えっ、できたの!?」
と、少し大きい声を上げた。しばらく前に帝都のゲテモン屋でドラゴニア料理を食べさせられ悲惨な目に遭わされたこともあり、できれば食事は遠慮したい気もするが……
「お姉様」
ここで、アンジェラがニコッとしてわたしを見上げた。ちなみに、彼女のおなかは「ぐぅ~」と悲鳴を上げている。わたしは「はぁ」と小さく息を吐き出し、アンジェラやプチドラとともに、とりあえずは使用人の案内にしたがって食堂まで行ってみることに(せざるを得ない)……
食堂では、屋敷の主人である先導の騎士が待っていて、
「お待たせしました。大したおもてなしはできませんが…… ただ、誓って、名誉にかけて申し上げますが、夕食は毒劇物ではありません。味はともかく、一応、安心して召し上がっていただけるはずです」
わたしは、「ははは……」と苦笑いとも愛想笑いともつかない笑いで応じた。彼が「一応、安心して」とか「名誉にかけて」と言うのだから、本当に、一応、そのとおりなのだろう。でも、普通、客に向かって言うことではないと思う。
こうして、結構盛り沢山でいろいろあったけど……、ともあれ、一日が終わった。




