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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第24章 なんとも形容しがたいドラゴニアン・ハート城
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戦術的撤退

 ドラゴニアン・ハート城正門前にて、プロトタイプ1号機の一回り小さなコピーみたいな鎧武者たちとドラゴニア騎士団との戦闘が続いた。剣と剣が打ち合わされる音、騎士たちの「やぁ」とか「とぉ」とか格闘戦に付きもののかけ声とともに、敵方の鎧武者による意味不明な「ウガガ」が響き、戦いは激しさを増していった。

 ところが、戦況は、ドラゴニア騎士団が劣勢にあることは変わりなく、騎士たちは、戦いながらじわりじわりと後ずさりし、死者はまだ出ていないものの、城の正門前にかかっている橋から街の方面へと駆逐されつつあった。

 プチドラは、「う~ん」と腕を組み、

「実力は相手の方が上だね。時間がたてばたつほど、力の差がハッキリと現れてくると思うよ」

「そうね。素人目に見ても分かるわ」

 と、わたしも大きくため息をつき、後方にいるプロトタイプ1号機を見上げた。こちらの本家本元プロトタイプ1号機なら、敵方のコピー版に劣ることはないだろう。でも、現時点では、投入はまだ早いような気もする。


 そうこうしているうちに……

「くそっ! このままでは埒が明かん!!」

 と、アース騎士団長の怒鳴りとも叫びともつかない声が響き、わたし的に、内心、「いよいよやぶれかぶれ、場合によっては玉砕覚悟の総員突撃!」か、と思ったら……

「一時撤退だ! 各員、敵の追撃に備え、現在の隊列を維持しつつ、ゆっくり後退!!」

 と、なんとも締まらない指示が出された。

 ただ、冷静にかつ客観的に判断すれば、現状では撤退もやむを得ないだろう。このまま続けても、ドラゴニア騎士団に勝てる見込みは薄い。であれば、とりあえずは退却し、体勢を立て直すのが賢明な策というものだろう。

 でも、問題が一つ。敵方が我々に簡単に退却を許してくれるかどうか。


 ところが…… その心配は杞憂に過ぎなかった。敵の鎧武者たちは、ゆっくりと後退するドラゴニア騎士団を追いかけようとせず、正門前の橋の上で隊列を組み、武器を構えているだけ。どうやら、侵入を試みる者を城内に入れないという役割はあっても、逃げようとする敵に追撃を加えて殲滅するまでの任務は与えられていないようだ。

 アース騎士団長は、地面に転がっていた石ころを思い切り蹴飛ばし、

「くそっ! バカにしやがって!!」

 と、かなり頭にきている様子。敵方が追撃してこなかったのを、ある種の手加減か温情のように思ったのだろう。武人を自認するプライドの高い人には、よくあることではある。しかしながら、今すぐ力押しで戦闘を再開しても勝利が望みがたいことは、アース騎士団長にもよく分かっているらしく、

「口惜しいが、さっきいた広場に戻ろう。作戦の立て直しだ!」

 アース騎士団長は、まるで吐き捨てるように叫んだ。

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