着地の際
隻眼の黒龍は高度を下げ、広場の真ん中に、騎士たちの集団を押しのけるようにして降り立った。ただ、黒龍が着地する際……、
ウガガガガガガッ! ガッシャーーーン! ウッギャーーー!
ちなみに、これは、着地の際にプロトタイプ1号機が地面を引きずられ、そのまま勢い余って数名の騎士たちをなぎ倒した時の音声を表現したもの。
他の騎士たちは、突然のこの予期せぬ出来事に対し、とりあえずはパッと散会し、隻眼の黒龍(及びわたしとアンジェラとプロトタイプ1号機)を遠巻きに取り囲み、剣を抜いた。しかし、さすがは(肝の据わった)騎士たちと言うべきか、数秒後には、おおよその(少なくとも、見知った顔なので敵襲ではないだろうという)状況を察したらしく剣を収め、隻眼の黒龍の周囲に集まった。
そして、「毎度おなじみ」みたいな感もあるが、アース騎士団長が一同を代表するように、更に一歩、前に進み出て、
「これはこれは、ウェルシー伯、前回もそうでしたが、突然の御来訪ですな。今回は初めての方もいらっしゃるようですが……」
と、プロトタイプ1号機に目をやった。さっきまで騎士たちの輪の中心で説明のようなことをしていたのは、やはり、アース騎士団長だったようだ。
わたしは隻眼の黒龍の背中から降り、一応、形どおりの挨拶として、
「あら、これはアース騎士団長、毎度のことですが、突然のことで(云々)……」
と、特に意味のない言葉を並べるとともに、今回は言わば新メンバーとして、プロトタイプ1号機が加わったことを告げた。ただし、正体が重武装人造人型兵器であることなど、詳しい説明は省略。おそらく、プロトタイプ1号機は今のところ、ドラゴニア騎士団にとって、「正体は分からないが、すごく体の大きな戦士」というくらいにしか映っていないだろう。
なお、隻眼の黒龍は、アンジェラを降ろすと、体を縮め、いつものように子犬サイズのプチドラになって、ぴょんとわたしの腕の中に収まった。
わたしは、ここで、おもむろに「ふぅ」とひと息つき、
「ところで、騎士団の皆さんが、どうしてここに? お城は……、きくだけ野暮か……」
と、ドラゴニアン・ハート城に顔を向けた。が……、すぐに目をそらす。とぐろを巻いて城を押しつぶすように覆いかぶさっている〇〇〇のような(「〇〇〇」は筆者の自己規制)アレは、見ていて気持ちの良いものでは決してない。
すると、アース騎士団長は、「ああ」と声を上げ、
「見つかってしまいましたか……、いや、見つからないはずがないですな。あれだけ堂々と、町の真ん中で、あんなものがあると……」
と、ほんの数秒前までの落ち着いた様子からは打って変わって、額に手をやったり天を仰いだり、今度は実にあたふたとした様子。話したくないのだろう。その気持ちは大いに分かる。




