用件はスヴォールの関係
わたしは、ふと、ソファの上であぐらを組むような格好になって、
「それはそれとして、今日は本当に来客が多い日ね」
「しかも、訪れた人たち……、マーチャント商会、アース騎士団長、ニューバーグ男爵のいずれも、用件は、言ってみれば、あのスヴォールの関係ですね」
パターソンは、彼にしては珍しく「ふぅ」とため息をついた。
「スヴォール…… できれば、あまり……、いえ、二度と聞きたくない響きだわ」
「失礼しました。しかし、このまま捨て置くわけにはいかないと思いますが……」
「やっぱり、そうよね」
わたしは「う~ん」と腕を組み、思わず天井を見上げた。
最初に来たマーチャント商会については、最悪の場合はプロトタイプ1号機を譲渡することにすれば、今以上に面倒なことにはならないだろう。設計・製作者のスヴォールが捕まらないのは、一応、事実だし……
ただ、アース騎士団長とニューバーグ男爵の悩みが解消するためには、スヴォールが改心して真人間になるみたいな、いくらこの世界の神様が御都合主義でも絶対にあり得ないような、超絶的かつ超越的な奇跡が実現する必要がある。でも、こんな可能性は、(何が起こるか分からない世の中だから絶無ではないだろうが)考えるだけ時間の無駄だろう。
ちなみに、廊下では、その時……
「ウガガガガガッ!」
「だめっ! プロトタイプ1号機、そんなに走ると危ないわ!!」
ガッシャーン!
なんだか知らないけど、アンジェラとプロトタイプ1号機が用を済ませて帰ってきたのだろうか。あるいは、忘れ物を取りに来ただけだろうか。それはともかく、プロトタイプ1号機を引き渡すとなると、せっかくこのところ元気を取り戻してきたアンジェラのメンタルが心配になるし……
わたしはソファの上に座り直し、
「う~ん……、困った……」
すると、パターソンもまた、腕を組み、
「問題点を一気に解決……とまではいかなくても、方法としては……」
と、難しい顔をして、打開策を考えている様子。
そして、わたしもパターソンも無言のまま、数十秒が経過。そして……
「カトリーナ様、妙案には程遠いと思いますが、先ごろ帝都で流行していた『人さらい』から連想したことがあるのですが……」
出し抜けに、少々説明的な言い回しだけど、パターソンが口を開いた。
「何か思いついたみたいね。どんな話? 説明して頂戴」
ところが、パターソンは手のひらを立ててわたしに向け、「ちょっと待って」のジェスチャーで、
「はい…… いや、しかし……、やっぱり、これは……」
なんだか話しにくそうな雰囲気だけど、一体、なんなんだ???




