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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第22章 とりあえずの平穏
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なんの力にもなれず

 アース騎士団長は、新ドラゴニア侯(正体はスヴォール)の「おかしさ」について、詳細な具体例を交えながら、延々と話し続けた。わたし的には、正直、こんな話を聞かされても迷惑なだけだが、その「おかしさ」を示すエピソードはなかなか尽きない。

 やがて、わたしの我慢も限界を超え、「いい加減にして!」と声を上げそうになったところで、

「以上のようなわけで、我々ドラゴニア騎士団としては、どうしたものかと……、ひと言で表現すれば、途方に暮れていると、こういうわけです」

 と、ようやく、アース騎士団長の話にも区切りがついたようだ。

 わたしは、ほっとひと息つき、

「はいはい、話は分かりました。でも、わたしにできることは多分ないし……、あるいは、今、国政に致命的な支障を来している、みたいなことがあるのですか?」

「『致命的な支障』ですか。言われてみれば、支障は数多くありますが、致命的かどうかと言われると、そこまでは至らないようにも思えます。ただ、しかし……」

「『しかし』、なんですか?」

「新ドラゴニア侯の変態的…… あっ、いや……、この話は聞かなかったことに……」

 と、アース騎士団長は、慌てて口を押さえた。なんなのだろう。「変態的」と言うからには、口にするのも汚らわしいが、もしかすると、スヴォールの「糞便マニア」の本性が……、いや、この話はやめよう。


 そして……

「では、ウェルシー伯、私はこれにて失礼いたします。本日は、お加減のよろしくないところ、申し訳なかった」

 アース騎士団長は、帰り際、屋敷の玄関でわたしに向かって深々と頭を下げた。

「いえ、こちらこそ、なんの力にもなれずに……」

 と、わたしも形式に則っての挨拶を返す。

 今日のアース騎士団長の来訪は、結論的に言えば、騎士団長の話を聞くだけに終わった。騎士団長としては、わたしからなんらかの助力なり、少なくとも助言くらいは欲しかったと思う。でも、理屈としては、ドラゴニアのことはドラゴニアで解決するのが本来の在り方だし、それ以前に、「スヴォールには二度と関わりたくない」というのが、わたしの本当の本音。

 ちなみに、アース騎士団長は、これからしばらく帝都のドラゴニア侯の屋敷に滞在し、帝国宰相にも、新ドラゴニア侯の「おかしさ」について相談を持ちかける予定とのこと。わたしとしては、そういう危険な(つまり、有り体に言えば、新ドラゴニア侯の正体がバレることにつながる)行動はやめてほしいのが正直なところ。でも、さすがに婉曲的な言い回しであっても「帝国宰相に会うな」とは言えないし、ここは、運を天に(あるいは、御都合主義の神様に)任せて祈るしかないだろう。

 なお、騎士団長がポロッと漏らしたところによれば、騎士団長の息子のニコラスは、今も仲間とともにご隠居様の城での籠城を続けていて、時折、「新ドラゴニア侯を受け入れるのは云々」とドラゴニアン・ハート城に談判に訪れるらしい。

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