状況を起死回生的に好転させる方法
屋敷の応接室のソファには、まずはわたしが、その次に、困り果てたという顔をしたニューバーグ男爵が「ふぅ」と腰を下ろし、
「では、ウェルシー伯、今更改まって言うのも妙な気がしますが、新ドラゴニア侯グローリアス様の一件に係る事態の収拾策を…… いや、なんというか……」
男爵は、そう言いかけて不自然に口をつぐんだ。というのは、丁度その時、パターソンが数名の駐在武官(親衛隊)とともに、馬車に積んでいた袋を持って応接室に入ってきたから。男爵とパターソンは全く知らない間柄ではないと思うけど、秘密を共有する人物はできるだけ少なくしたいということだろうか。
パターソンは、ニューバーグ男爵の意を察したのだろう、
「我々は外で待ちましょう。話が終わりましたら、声をかけてください」
と、一緒にいた駐在武官(親衛隊)とともに、(荷物は残して)部屋を出た。
こうして、応接室には、わたしとプチドラとニューバーグ男爵以外に誰もいなくなり(なお、夜も遅いこともあり、アンジェラは既に就寝していて、また、プロトタイプ1号機はアンジェラのペットのごとく、彼女のベッドの脇でいわゆる三角座りしているらしい)、
「では、ようやく…… いや、なんですな。早い話……、いや、どう言っても同じだが、宮殿での不始末をどう収拾するかですが……」
ニューバーグ男爵は、前かがみの姿勢で心細げな目をして、わたしを見上げた。
「そうですね、どう収拾するか……」
わたしはそう言いかけ、思わず天井を仰いだ。現在の状況を起死回生的に好転させるような都合のよい方法は、ハッキリ言って、あるはずがない。さっきも少し考えたところだけど、いくらファンタジーの世界とはいえ、死者が魔法の呪文一つで簡単に生き返るとすれば、世界の人口バランスは、とっくの昔に崩壊しているだろう。
わたしの膝の上に座っていたプチドラも、小さな腕を組み、「う~ん」とうなりつつ、首を右から左に、また、左から右に動かしている。隻眼の黒龍を名乗るプチドラにとっても、現在の状況はいかんともしがたいということだろう。
ニューバーグ男爵は、今にも声を上げて泣き出しそうな顔で、
「ウェルシー伯…… よいお知恵は……」
「そうね、よい知恵ね……」
わたしは、ニューバーグ男爵と視線を合わすことはせず、
「今、考えているところよ。なんだか、こう…… なんというか…… そうね……」
と、特に……いや、まったく意味のない身振り手振りでもって、男爵に応えた。
ちなみに、こうしている間にも、駐在武官が運び込んだ大きな袋からは、(血の)独特のにおいが応接室に満ちていく。
その時、不意に廊下がザワザワと騒がしくなり、ドタンバタンという大きな足音とともに、
「見かけによらず、やるじゃないか! 気に入ったぞ!!」
と、どういう脈絡かサッパリ分からないツンドラ侯の大声が廊下に響いた。




