始まりの終わり
外には雨が降っている。そのせいか時計はまだ3時を指しているのに薄暗い。一人ベットで横になっている男は雨音に消されてしまうほど小さなため息をついた。今日が自分の人生にとって一番の転換期だと自分自身わかっていたからだ。男はしばらく何かに取り憑かれたように動こうとしなかった。時計の短針が6時を回った。いつもなら両隣から賑やかな食卓を囲む家族の声が聞こえてくるのだろう。だがもうその声を一生聞くことはない。あの日から。
暗く小さな部屋でも出来事だった。
「それで。あなたがやったんでしょう、黙っていては何もわからないから」
「違う。俺はやっていない。殺す動機のない以上こんなリスクを犯す必要はない」
男は終始興味のなさそうに答えた。だがあちらでは答えが決まっているらしく決定的な言葉を引き出そうと執拗に同じ質問を繰り返していた。
「動機がない?笑わせるな。お前は亡くなった母の遺産を分けるために激しく言い争っていたそうではないか。それもその場にいた弁護士に聞いた話によるとすごい具合だったらしいな。なんだっけ?『目障りなんだよ。お前さえ生まれてこなっければこんな事にはならなかった』とも言っていたらしいじゃないか」
「確かにそれは言った。だがその発言には明確な殺人の意図はなかった。それに俺が直接妹に直接危害を加えるとは一言も言っていない。」
妹は世間一般でいうギャルというものだった。そのせいもあってか早期に結婚をし家を出ていってしまっていた。家には90を超える祖母と事務職をしている母と大工の父がいた。父は仕事柄よくいろんなところに傷をつけて帰ってきていた。その傷を見て少し心配したように困った顔をする母さんと申し訳なさそうに笑う父さん。 あぁ。いいな。これを見るといつもほっこりする母さんもまたか見たいな感じで優しく微笑んでいる。それに気がついた父さんも優しい笑顔を向ける。僕は大学生ながらこの二人が大好きだった。周囲からマザコンなどと揶揄されることもあったが全然気にならないほど二人のことが好きだった。だが日常という誰しもがもつありふれたものは実はどんなガラス細工よりも脆く壊れるものだということはまだ知る余地もなかった。




