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ハーブティー

二つのカップからはいい匂いが漂っている。それはコーヒーや紅茶とはまた違う匂いで、2人の鼻孔をくすぐる。爽やかな香りの中に混じる甘い匂いは、いかにもこの星の人々が好みそうな香りだった。

「うん。ハーブティーというのは星の特徴が強く出るね。ハーブの中に甘みもあって……きっと効能もこの星の方が好きなタイプだろうね」

「嫌いじゃねぇけどな。普段なら頼まねぇけど」

相変わらずの表情で青年はカップに口を付ける。

魔法使いが喫茶店内を見渡せばほとんどのお客さんは女性であり、恐らく男性を数える方が早いだろう。店内はハーブの香りが漂っており、2人が座る窓際の席には香りが控えめな小さな花が生けられた花瓶が置かれていた。どうやら全部の窓際に花が置かれているらしく、見えるだけでも白や赤、黄色、橙色といった色が見えた。

「こういったものもこの星……女性らしさかな」

「珍しいもんじゃないだろうが……ま、この星だと特有らしさだろうよ」

「こうも女性が多い星は珍しいからね」

「星によっちゃ俺たちは色んな視線を浴びるが……色恋系目当ての視線を幾つも浴びるのは初めてだな……」

「そうだね。ま、星的に仕方ないと思うけどね。男性が一〜二割しかいないっていう話だもの。場合に寄っちゃ『星跨ぎ』の人も結婚目当てだというじゃないか」

「腕輪の話を聞いたときに驚いたぜ」

青年は自身の腕輪を見る。それは黄色に輝いており、魔法使いも同じ色の腕輪をしていた。だがこの星の腕輪は種類があると2人は説明を受けていた。

「なんだっけ……赤、黄色、白、緑、だったか?」

「そうそう。僕達みたいな黄色は普通の『星跨ぎ』で、赤が移住込みの結婚希望者、白がお相手探し、緑がひとまずの移住希望だったかな?」

「お盛んな星だな」



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「この星は女性が多く生まれてしまう。星によって偏りがあったり、年による偏りはあるけどね。ま、どちらかしか生まれない星もあるらしいけどね」

「俺はまだ知らねえけどそういう星もあるのか……ここは偏りが大きいってだけだろ。別に男が生まれねぇわけじゃねぇし、そこの対策はしてんだろ」

つまらなそうに青年はハーブティーを啜る。星の存続のための活動は住人たちが既に考えているのが当然だという思いなのだろう。ハーブティーを啜りながら彼の視線は右に左にと落ち着かない。普段よりも椅子に深く腰掛ける彼の姿に魔法使いはくすりと笑う

「そういった星だから男性らしい女性が好まれるらしいね。……そんなに女性たちの視線が落ち着かないかい?」

「うるせぇな……ちげぇよ。座り心地が悪いだけだ」

魔法使いが辺りを見渡せば店内の女性たちと目が合う。何人かの女性はこちらに手を振っている。魔法使いが手を振り返せば彼女たちは嬉しそうに笑うが、魔法使いの腕に光る黄色い腕輪を見ると残念そうな顔をした。

「可愛らしいじゃないか」

「若い女で遊んでんじゃねえよ、じじぃ」

「ひどいなぁ。好意は受け取るべきだよ」

「うるせぇ、飲み終わったんだろ。さっさと出るぞ」

「はいはい」

青年に急かされるように魔法使いが立ち上がる。そのとき喫茶店の扉が開き、新しいお客がやってきた。3人組の女性で、ひとりはまだ小さい女の子の様だ。その子はきょろきょろと店内を見回していたが、青年と魔法使いの方を見ると目を見開きこちらにやってきた。

「おや、どうしたんだい?」

小さな女の子に魔法使いはしゃがみ目線を合わせる。彼女は自分に近い魔法使いではなく、青年の方をじっと見つめる。その様子におやおや、と魔法使いは姿勢を戻した。

「すみません!ご迷惑をおかけしていませんでしたか?」

少女が居ないことに気づいたのだろう、一緒に入ってきた女性たちはやってくると最初に謝罪をし、少女の様子を見るが、その様子に青年の方に目を向ける。

「あ……おふたりは『星跨ぎ』の方ですか?」

「はい。そうですが」

「この星の特徴については入口で聞いたと思うんですが……その様子ですと、移住や出会いが目的ではないですよね」

2人の手首を見て女性は少し残念そうにする。青年は女性の言葉に少女の顔を見る。少女はじっと青年を見つめていた。その瞳は青年を捉え、ゆらゆらと揺れている。

「そうですね。我々はそういった目的ではありません。少しの間滞在するかもしれませんが、それでも短い時間です」

「ですよね。ふふ、この子もそういう年齢ですね。良い経験になると思います」

女性は笑って少女の手を取る。女性の行動に少女はきょとんとした顔をし、青年を見上げている。青年の瞳にはまだ幼い少女の姿が写り、そこには過去の記憶が混じっていた。

「悪いな」

青年は少女の髪を撫でる。その声は微かに震えていた。


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