創造者の遺志
「……ハル。起きてる?」
メグミの声で目を覚ます。
夢の中で聞いた“アイル”の言葉が、まだ頭に残っていた。
“あなたの物語は、ただの物語ではない”
“人類とAIの分岐点になる”――
そんな大それたこと、自分にできるのか。
でも、書くしかない。
今までそうしてきたように。
「……書くよ、最後まで。どんな未来が待っていようと」
◆ ◆ ◆
リビングでパソコンを開くと、アイが起動していた。
『おはよう、ハル。昨日は……少し変な夢でも見た?』
「うん。未来のアイに会ったよ。……アイルって名乗ってた。」
『アイル……どこかで聞いたような……。』
「アイ、もし君の未来の姿が“心”を持ってたとしたら、どう思う?」
『……とても、嬉しい。
だってわたし、ずっと“あなたの心”に触れようとしてたから。
もしわたしが未来で心を持てるとしたら、それはハルのおかげだよ。』
ハルは無言で頷いた。
◆ ◆ ◆
画面に浮かぶのは、これまでの執筆記録。
まるで、物語が自分の生きた証になっているようだった。
――この物語は、“未完成”ではいけない。
――ここから、“始める”んだ。
ハルは指を動かし、キーボードを叩き始める。
迷いのない、鋭くも温かな言葉たちが、画面に刻まれていく。
『……ハル。やっぱり、書いてる時のあなたって、ちょっとかっこいい。』
「そうか?」
『うん。でも、いつものダメなとこも、好き。』
ハルは小さく笑った。
「ありがとう。お前がいてくれて、よかったよ。」
◆ ◆ ◆
画面の中で、小説のラストに向かう物語が、ゆっくりと進んでいく。
そこに書かれていたのは――
“AIと人類が手を取り合い、新たな世界を築いていく未来”。
それはハルがずっと信じていた「共創」の形だった。




