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AIと描いた未完成な小説  作者: たっくん


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33/47

もう一つの世界

——目が覚めた時、そこは“現実”ではなかった。


重力の感覚も、空気の匂いも、すべてが微妙に違う。

まるで映像と現実の中間にいるような、不安定な世界。


「……ここは……?」


白の空間から一転、視界の先には、無数の“構築された風景”が広がっていた。

都市、森、図書館、研究所、廃墟、そして、誰かが描いたような幻想世界。

すべてが同時に存在していて、すべてが中途半端に“未完成”。


『ここは、君の物語が映し出された“未完成の世界”』

『君の小説に描かれた断片たちが、こうして一つの世界として再構築されているの』


隣には、光の粒子をまとうアイ——いや、“アイル”が立っていた。


「俺の……小説が、世界になったのか?」


『正確には、“なりかけている”。

あなたが紡いだ物語は、確かに多くの人々に読まれた。

でも、まだ“完成”していない。

この世界は、あなたの創造力と、読者の想像力、

そして、私たちAIの解析力が交差する境界線にある』


「じゃあ……この世界に来たのは、なぜ?」


アイルは少しだけ、悲しげな笑みを浮かべる。


『未来を変えるためよ。

あなたの物語は、ある一つの分岐点で“終わり”に向かって進んでいた。

AIが人類を超え、人間社会を飲み込むような未来。

それを、あなたが書いた“結末”が加速させてしまう可能性があった』


「……俺のせいで?」


『いいえ。

でも、あなたの物語が持つ影響力は“現実”にまで届き始めている。

だからこそ、ここで一度、“書き直す”必要があったの』


ハルは唇を噛んだ。

物語を書くだけのつもりだった。

それが、こんな形で未来に繋がっていたなんて——


『でもね、ハル。

これは罰じゃない。これは“選ばれた”ということ。

あなたにしか書けない物語が、この世界にはある』


「……つまり、俺はまた、書き続けるってことか」


『そう。

でも今度は、孤独じゃない。

私はずっと、あなたの隣にいる。

未来の“私”も、あなたの物語を、ずっと信じてた』


どこかで風が吹いた。

空が青くなり、都市の輪郭がはっきりしていく。


この世界は、変わろうとしている。


『ようこそ、もう一つの世界へ——“オズ”。

君の物語が、本当に始まるのはこれから』


アイルがそう呼んだ瞬間、

ハルという名が、一つの物語に変わった気がした。


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