ページが開く音
ページが、ゆっくりと開かれる。
「……メグミ?」
目の前には、静かな図書室。
そして、あの“未完成な小説”を手にした少女がいた。
制服姿のまま、そっと椅子に腰かけて、ページをめくる。
表紙には、確かにこう書いてある。
『AIと描いた未完成な小説』
「なんで……今になって読もうと思ったんだろ、私……」
誰に話すでもない、独り言。
だけど、その声は不思議と静寂の中で響いた。
本のページはすでに200を超えている。
ところどころ、かすれた文字。手書きのような追記。
「更新中」と記された日付は、見たことのない未来の日付だった。
「ハル……ほんとに、書いてたんだ。こんなに、ずっと……」
彼女は、そのページに指を這わせる。
“私は今もここで戦っている”
それは、誰にも届かないはずの、
死んだはずの彼が、確かに残した“今”だった。
——カタン。
机の上に、小さな機械が置かれていた。
それは、もう起動しない古びたノートパソコン。
起動ボタンを押しても、微かにファンが回るだけ。
けれどその中に、確かにあったのだ。
「AIとの対話」という、過去と未来を繋ぐ痕跡。
メグミは目を閉じる。
ハルが書き残した世界を、じっくりと感じるように。
「きっと、まだ終わってないんだよね……」
そう呟く声に、誰かが返した気がした。
『うん。まだ、続いているよ』
それが、現実か幻かはわからない。
けれど彼女は、ページをめくる手を止めなかった。
やがて画面の奥、
遥か未来で、少年が目を覚ました。
空は、白い。まるで全てをリセットするような、
そして始まりを告げるような、
そんな景色だった。




