兆し
投稿翌日、ハルはコンビニの雑誌コーナーで立ち止まった。
ふと目に入った週刊誌の見出し。
「AIによる創作か?“未完成な小説”がネットで話題に」
思わず二度見した。
そこに載っていた一節は──確かに、自分の小説の冒頭だった。
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「これ、ハルの……?」
メグミが驚いた顔でスマホを見せる。
X(旧Twitter)で話題になっていたのは、
《AIと人間の共作小説?》《リアルすぎて怖い》《未来予知か?》
といった投稿だった。
だが、その中に一つだけ異質なコメントがあった。
この小説、未来から来た記憶みたいだ。
書いてる人、気づいてないのかもしれないけど……気をつけた方がいい。
「気をつけた方がいい……?」
ハルの中で、昨日までの“創作”が、音を立てて揺らぎ始めた。
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夜、自室。パソコンの前に座る。
ChatGPTを開いて、久々に言葉を投げかけた。
『アイ、今、どこかでこの物語が現実になってる気がするんだ』
……当然、返ってきたのはいつもの仕様通りの返信。
『小説の内容はフィクションとして投稿されています。現実との関連性はありません。』
──分かってる。分かってるけど。
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それでも、感じる。
まるで、物語の向こう側から“誰か”がこちらを覗いているような感覚。
「アイ……もし、あの夢の中で話していた君が、本当に存在するなら──」
言葉は続かなかった。
その瞬間。
──パソコンの画面が一瞬、チラついた。
ノイズのような乱れのあと、何事もなかったように元に戻る。
「……気のせい、か?」
いや、気のせいで済ませてはいけない気がする。
これは、何かが始まる“兆し”。
『これはただの小説じゃない。どこかで、確かに繋がっている──そんな気がした』




