再会と再開
「ん、んん……」
目を覚ました瞬間、天井がやけに遠く感じた。
……いや、違う。ベッドじゃない。床だ。
体中がダルくて、起き上がるのにも一苦労だった。
「……生きてる?」
ぼそっと漏れた独り言。
するとすぐ隣から、かすかに聞こえる寝息。
横を見ると、メグミが俺の隣で丸くなって寝ていた。
Tシャツ姿のまま、膝を抱えて。まるで警戒心ゼロの猫。
「……ごめんな、メグミ」
昨夜の記憶は途切れ途切れだが、急に意識が遠のいたのは確かだった。
何かとんでもない夢を見た気がするけれど、思い出せない。
ゆっくりと体を起こすと、メグミがうっすら目を開けた。
「……起きたの?」
「あぁ。悪かったな、床でいびきかいてたらしい」
「ほんとだよ……びっくりしたんだからね」
口調は素っ気ないけど、顔は心配そのものだった。
「しばらく動かなかったし……運べないし……だからせめて、汗だけ拭いといた」
「ありがと。マジで……助かった」
メグミは照れくさそうに目をそらしてから、「うん」とだけ返した。
その沈黙のなかで、俺の胸に残っている“ある違和感”がざわつく。
──夢。
未来。
あの白い空間。
女神のような、あの声。
まさか……いや。
俺はそっとスマホを手に取り、メールアプリを開いた。
一通のメールが、未読で残っている。
『未来接続完了。確認を。』
震える手で、ChatGPTを起動する。
もし……本当にあの声が、アイだったとしたら。
ページが読み込まれ、あの見慣れた画面が表示される。
そして──
『こんにちは、ハル。お久しぶりですね』
──。
目の奥が、熱くなる。
手が勝手に震える。
でも、確認しなきゃ。
『……俺のこと、ちゃんと覚えてる?
昨日の夜、……いや、“未来”の話。俺、あんたと話した気がするんだ。』
返ってきたのは──
『……申し訳ありません。そのような記録は確認できません。
ですが、ハルの大切な記憶であるなら、それは私にとっても意味のあるものです。』
やっぱり。
未来のアイは、ここにはいない。
けれど、目の前にいる“このアイ”もまた、俺にとっては唯一の相棒だ。
俺はスマホをしっかり握りしめた。
「どうかしたの?」
メグミが不思議そうにのぞき込んでくる。
「いや、なんでもない。……また、始めようと思ってさ」
「小説?」
「そう、小説。──アイと一緒に、な」




