第66話 頼もしい仲間
これまで戦ってきた工作員たちとは明らかに格が違う、ねっとりと肌にまとわりつくような不快な魔力だ。
「……本命はあっちか」
「ほう、ようやく『暗殺者ギルドの処刑人』のお出ましというわけか。あのような不浄な魔力、我のトルネードで森の塵にしてくれようぞ」
ヴァイスが牙を剥くが、俺はそれを手で制した。
「いや、時間をかけたくない。リリィたちを怖がらせたお返しだ。サクッと終わらせる」
俺は「能力3倍強化」を瞬時に発動させた。
一年前は発動するだけで体に負荷がかかっていたが、今では数秒単位の局所的な発動なら呼吸を乱すことすらない。
俺は「影移動」で、魔力の源泉……巨大な黒いローブを纏った異形の男の背後に一瞬で転移した。男が「テレポート」の予備動作に入るよりも速く、俺の短剣がその延髄に突き立てられる。
「ア……ガ……!?」
男が声を上げる間もなく、俺は心臓の裏側にもう一本のナイフを突き入れた。魔物を無理やり合成したような改造人間特有の「超再生」が始まる前に、俺の魔力を込めた一撃が、男の体内の魔力回路を内側から爆破した。
ドサリ、と力なく崩れ落ちる「処刑人」。
戦いというよりは、文字通りの「駆除」だった。
「主……相変わらず容赦ないのぅ。少しは我にも獲物を残しておいて欲しかったがのぅ」
「ごめんヴァイス、次はそうするよ。……さて、こいつの懐から何が出てくるか」
男の死体を鑑定すると、懐に奇妙な金属製のプレートが入っていた。そこには見たこともない幾何学的な紋様が刻まれており、不気味に明滅している。
それと同時に、視界の左上にメールのアイコンが激しく点滅した。管理者(神)からだ。
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お疲れ様ー☆
今の「処刑人」が持ってたプレート、それシス
テムの中枢に無理やり干渉するための「ハッキ
ングツール」だよ。
やっぱり誰かが意図的にこの世界を壊そうとし
てるみたい。そのツールの発信源は……
北の「四大都市ザイリア」だよ。
悪いけど、すぐに向かってくれないかな?
案内人(神)より
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「神様。見てたんですね? 相当まずいのか? それにしてもザイリアか。ついに最後の四大都市だな」
俺は溜息をつきながら、プレートをアイテム袋へ放り込んだ。
村に戻ると、ウェスリーたちが待ち構えていた。
「ムクノキさん! 敵の反応は完全に消えましたね!」
「ああ、処刑人も片付けた。……だが、俺たちはこれから北のザイリアに行かなきゃならなくなった」
「えぇ!? 今からですか?」
ウェスリーが驚きの声を上げる。俺は村の防衛について話し合うため、主要メンバーを集めた。
「ウェスリー、俺たちが留守の間、村の防衛を任せられるか? さっきのテレポート使いみたいなのがまた来るかもしれない」
「任せてください! 今回の件で『ゴーレム・バリケード』の改善点も見えました。それにボルガンさんから教わった土魔法のトラップも、さらに強化して設置しておきますから!」
「頼もしいな。ヴァイス、子フェンリルたちは?」
「うむ。フェルイチたち十匹をこの村の常駐警備に回そう。あやつらもレベル四十を超えておる。並の暗殺者なら影から首を撥ねるぐらい造作もないわ」
「わんわん!」と、影の中から子フェンリルたちが力強く応える。
「プリンはどうする? 一緒に来るか?」
「いくのぉ~♪ でも、村にもプリンを置いていくのぉ~♪」
プリンが「分裂」を使い、三体のプリンを村に残した。
本体が離れていても、ある程度の自律行動と回復魔法は使える。これでリリィや子供たちが怪我をしても安心だ。
「よし。防衛はウェスリーのゴーレムとトラップ、子フェンリルの哨戒、そしてプリンの予備体か。鉄壁だな」
「ムクノキお兄ちゃん……行くの?」
不安そうにこちらを見上げるリリィ。俺はその頭を優しく撫でた。
「ああ。この世界をもっと住みやすくするために、ちょっと掃除してくる。お土産にザイリアの美味しいお菓子、買ってくるからな」
「……うん。絶対だよ、お兄ちゃん!」
リリィが笑顔を見せたのを確認し、俺はヴァイスとプリン、そしてハムを伴って、北の街道へと一歩踏み出した。
「さて……旅の再開といこうか」
「主よ、ザイリアは極寒の地と聞く。酒が美味いとよいのぅ」
「さむいのは嫌なのぉ~♪」
俺たちは騒がしくも頼もしい仲間と共に、雪と氷に閉ざされた未知の都市を目指すのだった。ちなみにレベルに変化はない。
今までの話の記憶がなさすぎて今後矛盾点が増えまくる可能性がorz あわわわ
一応、ラストまではストーリーは書いてるんですがね。。。




