第九話 第五都市
「まず向かうべきは、ここから一番近い第五都市の内の一つ、王都ドラシェンね」
セシルが地図を開いて、右下、所謂南東あたりを指差す。こう見ると、俺たちの故郷である村はかなり南にある場所らしい。と、それより
「第五都市?」
「ああ、わからないんだっけ。教えるね」
第五都市。やっぱり、県庁所在地だとか、首都みたいなものは存在するらしい。セシルの動かす指を目で辿りながら、説明を聞く。
「マベネオ大陸には沢山の国、村、街、集落、その他諸々人が住んでいるところが沢山あるの。その中でも特に栄えていて、偉い人が統治している場所を第五都市として定められているの。中央都市だけはちょっと特殊だけどね」
中央都市と呼ばれた場所には太い縁で線が引かれている。どうやらここがその中央都市らしい。他の都市と比べてとても大きい。随分と栄えてるみたいだ。
「第五都市はそれぞれ、中央、北西、南西、北東、南東にあるの。中央第一都市・都アデネール、北西第二都市・王都サイルド、南西第三都市・聖都グレトワイト、北東第四都市・王都ネオック、南東第五都市・王都ドラシェン。それぞれの都には特徴があるけど、それは今回省略。その都に出向くってなったらその都度話してあげる」
指が地図の上を滑ってそれぞれの都を指していく。が、しかし。地名なんざ覚えられそうにないな。地図は必須になりそうだ……
「私達がまず向かうのはここ、王都ドラシェン。理由は一番近いからだけど、ここは今の私たちにぴったりな場所よ。なんでも、ダンジョン攻略や鍛錬に力を入れていて、沢山の冒険者が集まって暮らしているの。依頼も受けやすいし、宿も取りやすい。情報収集も買い出しも絶対楽!強い人も大勢いるから、鍛錬をつけてもらうのにも仲間を見つけるのも最適ね。ただ、ネックなのは向かうまでに徒歩で二ヶ月はかかるって事……」
「に、二ヶ月!?」
とんでもない言葉が聞こえた気がする。二ヶ月も野宿をしなければならないと思うと先が思いやられる。と言うか、キャンプだってまともにしたことないのにどうするんだ!
「仕方ないでしょ。こんな田舎じゃ馬車だって来ないし、魔法使いやテイマーがいるわけじゃないんだから空路だって使えない。当分はその辺の草木がベッドでトイレよ」
「そんなぁ!」
つい大声を出してしまってセシルの肩がびくりと揺れる。申し訳無いと思いつつも、異世界転生二日目で流石にそれは厳しい。どうしようかなぁ、どうしようかなぁ!?
「まあ、嘆いていても仕方ないでしょ。でも、一応ドラシェンに向かうまでの道に里や村はあるだろうし、そこで食料分けて貰ったり、宿貸してもらうなりしよう?」
「うん……俺、セシルがいてよかった」
「え、今更なに?」
しみじみ思う。こっちに来る前にいたグレイと言うやつ、お前はいいやつだ。俺のためにこんないい子と幼馴染でいてくれるだなんて。セシルの顔はちょっと引いてるけど、これからずっと一緒にいるんだもんなぁ。
「そう思っただけだよ」
「なんか気持ち悪い……」
微笑むとセシルはゴミを見るような目で一歩横に動いて俺から離れた。
悲しいことに、俺に心を開いてくれるのはまだまだ先らしい。




