第二十九話 契り
「あ、ども。助かりました……感謝……ッス」
「いえ別に」
男は全裸のまま正座になり、ぺこりと頭を下げてくる。ジャイアントスラッグは倒したが、残った粘液まみれの彼はぶっちゃけ汚い。触りたくない。
「取り敢えずどうする?この人」
「うーん、放置するのも哀れだし、契り交わしちゃったんだよね」
ほっといてもいいんだけど、契りがなんだか気になる。あとやっぱりムカつく。舌出して煽ったの忘れないからな。
「簡単なのだけどね」
「どんな契り?」
「裏切ったら服が弾け飛んで全裸になる」
「地味に嫌だなそれ」
契りの内容はセシルに任せ切りになってしまったけど。なんでそんな契りにしたんだ。この子頭とんじゃってる?なんで?
「くぅ……煮るなり焼くなり好きにしな!でも服は貸してくれよ!」
いけない。セシルの方に気を取られていた。にしてもこの男、どうするか。
「ぬとぬとしてて汚いから水場で洗って貰うとして……うーん、うーん……そうだ、いいこと考えた」
ふと男の方を見る。今は情けなく座っているが、さっきの身体捌きはかなり良かった。
「ん?なあに?」
セシルが俺の方を見る。俺は男を指差して口を開く。
「お前、俺たちのパーティに入れ」
「えっ」
「えっ」
面を食らったセシルが慌てて間に入ってくる。
「ちょ、ノーテル。流石に盗賊をパーティに入れるのはセンス無いよ」
「でも裏切れないなら丁度良くない?」
「確かに」
割とあっさりだった。セシルの横を通り、正座している男の前にしゃがみこんで顔を見つめる。
「お前もそれでいいよね、盗賊くん」
「拒否権ないだろ……」
「うん」
「ムカつく」
眉間に皺が寄り、ひくひくと小刻みに動いているのがわかったが放っておく。俺もお前にムカついてんだよ。しかも盗賊の癖にちょっとイケメンだし。世界は不平等だ。
「取り敢えず近くの水場に向かいながら、自己紹介しよっか。服はそれまでお預けで」
「え?俺全裸のまま歩かなきゃいけないの?」
「自業自得って……知ってる?」
「うす……」
俺は立ち上がり、セシルと粘液でぬとぬとな汚い新たな仲間と共に水場を目指し始めた。




