表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界を君と共に  作者: 園崎茶々
19/41

第十九話 お話

「お前、少しはあの女と話した方がいいんじゃないか」


修行を始めてから1ヶ月経ったある時、突然ケイトがそう言ってきて、木の棒を置いて何処かにいってしまった。きっと行け、という彼なりの気遣いなんだろうけど……取り敢えず、部屋に戻ってきてみた。ちらりと扉から部屋を覗く限り、セシルは椅子に座ってぼぅっと窓の外を眺めるだけだった。意を決して俺は部屋の中にはいる。しかし、セシルは何も言わないし、こっちすら見てくれない。


「あ、あの、セシル……?」

「……」


おずおずと話しかけてみる。返答は無い。ちょこちょこと移動しながら向かい側の椅子に座る。


「セシル……さん」

「何」


やっと返事してくれた。だが、返事は上の空だし、やっぱりこっちを向いてはくれない。


「あの……お話を」

「……うん」


窓の外、遠くを見ている。やっぱりなんだか怖い。もしかして会話しない方がいいんだろうか。でも、折角ケイトが背中を押してくれたんだ。もう少し頑張ってみよう。

居心地の悪さを感じつつも、俺は切り込んだ話題を出してみることにした。


「俺の事、どう、思ってる……?」

「……ドロテアと、話をしたの」


質問の返答はなかったが、どうやら俺と会話してくれる気はありそうだ。取り敢えず、刺激しないようにとセシルの言葉に耳を傾ける。


「ど、ドロテアと……?」

「貴方について。毎日、毎日。心の整理をつけようと」


俺について。やっぱり考えてくれていたんだ。根は優しい子なんだろう。


「う、うん……」

「まだ、気持ちの整理はついてないの」


当たり前だ。正直反応には困るけど、いつかはどうにかしないといけない。俺は頭を捻りながらもどうにか言葉を絞り出す。


「そ、っか。俺は、何をすればいい、かな……」

「……ねえ、グレ……違う。クジカワ」


鬮川、俺の本名だ。覚えていてくれたらしい。少しむず痒い気持ちがある。


「どうした、の?」

「修行、してて欲しい」


セシルの願いは俺が修行をする事らしい。修行、修行か。当分はするつもりだけども……


「修行?」

「私、いっぱい考えて、いっぱい理解したの。だから、貴方が何も分からないのも仕方ないなって、そう思えた」


そこで一旦区切ると、やっとセシルは俺の方を向いてくれた。


「でもやっぱり、グレイがいないなんて信じられないよ。こんなにも近くに、グレイと同じ姿の人がいるのに」

「……」


そうだろう。突然そんなこと言われたら、俺だって信じることができない。痛いほど気持ちはわかる。


「私、貴方が旅に出れるようになる頃には、結論を出す。だから修行をしていて」

「わか、った……」


俺はセシルに返事をして、目線を合わせようとする。だけどもすぐにふい、と顔を逸らされてしまった。


「……ありがとう」

「ごめんね。俺のために沢山考えてくれて」


申し訳なさが積もる。俺からしたら俺のせいじゃない、好きでこうなったわけじゃないって気持ちもあるけど、だからってどうすることも出来ない。兎に角、いい方向に進むべきだと思う。


「……」

「訓練戻るね」


そう告げると俺は席を立った。扉を開けた時、後ろから声がかかる。


「いってらっしゃい」

「うん、いってきます」


震えた声だった。だけども、声をかけてくれたのが嬉しい。俺はそれに答えて、ケイトが待っているであろう庭へと戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ