第四百九十四話 2人の秋ノ瀬彼方
「紗和ちゃん、やったね〜〜! 凄いよ〜〜!」
「ありがとう、紗希ちゃん! これでやっと、クルセイスに殺害されたみんなの仇が取れたわ。ティーナさん、本当にありがとう。あなたがクルセイスをここに引き留めておいてくれたから、私達は追いつく事が出来たんだもの」
親友の玉木に笑顔で抱きつかれて。顔を少し赤くしながらも、紗和乃は冷静な顔つきを保ち。グランデイル王国の新女王であるティーナに礼を言う。
「いえ、私の方こそ……玉木様達がここに駆けつけてくれなかったら、本当に危なかったです。こんなにも早く地下から地上に戻って来て下さり。しかも私とクルセイスが対峙している場所を探し出してくれるなんて思いもしませんでした……」
「何を言ってるのよ〜、ティーナちゃん。そんなの当然でしょう〜! 『暗殺者』の私には、『索敵追跡』の能力があるんだからね〜! だからティーナちゃんが抜け駆けして、どこかでこっそり彼方くんとチョメチョメしようとしても、すぐに突き止めて。2人の頭にハリセンを食らわしちゃうんだからね〜!」
「……そんな!? それは困ります! クルセイスがせっかく居なくなって、この世界はやっと平和に一歩近づいたんです! 私はこれから堂々と彼方様とチョメチョメをするつもりですので、玉木様に邪魔をされては困ります! 玉木様の『索敵追跡』は、対象の人物の所持品を頼りに居場所を突き止めるんでしたよね? 私の持ち物を無断で使用するのはやめて下さい!」
「ダ〜〜メ!! ティーナちゃんの持ち物は返してあげないよ〜! それに私は彼方くんに貰った猫さんキーホルダーも持ってるから、彼方くんの位置だって常に探す事が出来るんだもの〜! 残念でした〜!」
グランデイル王国の新女王であるティーナと、カルツェン王国の新女王ルカから、女王の座を譲りたいと勧誘されている玉木が、お互いの目を見つめ合いながら。バチバチと見えない火花を空中に散らせる。
そんなあまりにも平和過ぎる光景を見て、紗和乃は『ハァ〜』と、思わず深い溜め息を吐いてしまった。
遠い将来……この世界が完全に平和になった時。もしも、グランデイル王国とカルツェン王国が彼方を巡って争いを起こしたりでもしたら大変だ。
それを止める事が出来る存在といえば……今の所、南のバーティア帝国の皇帝ミズガルドしか紗和乃には思いつかない。
ただ……普段は理性的なミズガルド陛下も、コンビニの勇者の政治的な後見人に成ると公に宣言しているくらいだ。だからもしも何かの歯車が間違って噛み合わさってしまうと、帝国も彼方を巡る恋の三つ巴の争いに参加しかねない危険性がある。
となると……唯一、平和を維持する事が可能な国は、ククリア女王が統治するドリシア王国だろうか?
いやいや、幼い外見をしたククリア女王も、コンビニの勇者の彼方を見つめる視線が、少し怪しかったのを紗和乃は見逃さない。アレは絶対に、ブラコンの妹が兄にこっそりと甘えようとする仕草に違いない。
じゃあ、この世界でコンビニの勇者に興味を全く持たない女王が統治している国はあるのだろうか? ……そうだ、農業国のカルタロス王国があるじゃないか!
カルタロス王国の女王、サステリアさんはコンビニ共和国の運営をしているレイチェルさんに首ったけだ。
これから紗和乃がこの世界で平和な余生を過ごす為には、今のうちにカルタロス王国に移住するのが狙い目なのかもしれない……?
――いやいやいや! もしもレイチェルさんがコンビニの勇者の彼方だけに忠節を尽くす、彼方一筋の存在であるとサステリアさんが気付いてしまったら?
そしてレイチェルさんへの熱烈な片想いをこじらせて、恋敵である彼方の暗殺をこっそりと企てたりしたら?
きゃああぁぁ〜〜!! もう、この世界のどこにも『平和な国』は存在しない事になってしまうじゃないか!
私はクラスのみんなと平和に過ごして、大好きな紗希ちゃんとイチャイチャ出来れば、それだけで満足なのに……! どうしてこんなにも、この世界の未来には争いの火種が多く存在しているのよ!
こうなったら私が紗希ちゃんを誘拐して、地下に監禁して。2人だけの世界に閉じこもるしかないわ! そしてそこで2人だけの楽園を築き上げて、彼方くんの事なんて忘れさせるくらいの快楽地獄に紗希ちゃんを堕として。オスなんて全く興味が無くなるような、完全に私だけしか見えなくなるカスタム肉奴隷に紗希ちゃんを調教して……!
「さ、紗和ちゃん……? 顔が真っ赤になってるみたいだけど、どうしたの〜〜?」
「――な、何でないわよ!? この世界を平和に導く為の未来のビジョンを考えていた所なのっ!」
「そ、そうなんだ〜、紗和ちゃんは凄いね〜! いっつもクラスのみんなの為に、常に『先の事』を考えてくれているんだものね〜!」
「そうよ、私はいつだって『紗希の事』を真剣に考えているのよ! 私達が永遠にイチャイチャし放題になるラブラブ未来を必ず築き上げてみせるから!」
「……えっ? イチャイチャし放題のラブラブ未来?」
「ううん、今のは何でも無いから! 忘れてね、紗希ちゃん!」
クルセイスという、コンビニメンバー達にとっての宿敵を倒し終えて。ティーナと玉木と紗和乃が、少しだけ心を浮かれさせてしまっていた時――。
彼女達の後を追って、ようやくこの場に駆けつけた来た男が、大きな声で3人に呼びかけてきた。
「おーーい!! みんな、無事かーーっ?」
それは頭の上にコンビニ猫のフィートを乗せている、『火炎術師』の杉田だった。杉田の後ろには、青い騎士のアイリーンもついて来ている。
玉木と紗和乃に遅れをとったが、どうやら杉田達もようやく地上にやって来たようだ。
「――遅いわよ、杉田くん! 他のみんなはどうしたの?」
この場に遅れてやってきた杉田に対して、紗和乃が問いかけた。
「ああ、小笠原達3人娘は、まだ地下に残っているぞ。雪咲の目はダメージを受けたままだし。名取も倉持の側を離れないと言ってるからな。敵の白アリ兵の残党がまだ出現する可能性もあるから、3人にはそのまま地下に残って貰ったんだ。――それで? 肝心なクルセイスの方はどうなったんだ?」
「クルセイスなら、今さっき……私達が倒したわ! ティーナさんが、ここにクルセイスを引き留めておいてくれたおかげよ」
「ま……マジかよ!? とうとう、あのクルセイスが死んだのか!? それはマジで凄えぇぇなっ!! これで2軍のみんなも、そして委員長の倉持の奴も、やっと報われるだろうな……」
いつもは底なしに明るい杉田が、下を見つめて。普段は見せない感傷的な表情を浮かべている。
そんな杉田の様子を見て、ティーナも。そして玉木と紗和乃も、改めて自分達が宿敵であったグランデイル元女王のクルセイスを倒したのだという事実を再認識して。
その場でお互いの顔を見つめ合いながら、改めて頷き合うのだった。
「……そういえば、紗希ちゃん。巨大コンビニ要塞がもうすぐそこまで接近して来ているけれど。彼方くんの様子が気になるわ。敵の親玉のレイチェルは倒せたのかしら? 紗希ちゃんの『索敵追跡』の能力で、彼方くんの現在位置を特定出来る?」
「うん。分かった! 彼方くんの位置をすぐに調べてみるね〜! ええっと、彼方くんの現在の位置は……えっ? 彼方くん、すぐ近くにまで来ているみたい! それもこっちに向かって来てるみたいだよ〜!」
「彼方くんも、こっちに向かっている? そうなのね、じゃあ……彼方くんはまだ、あの巨大コンビニ要塞の上で敵のレイチェルと戦っているのかしら?」
紗和乃は、グランデイル王都のすぐ近くにまで接近してきている巨大コンビニ要塞を見つめて。
なぜか少しだけ、妙な違和感を感じてしまった。
もしもコンビニの勇者の彼方がまだ、あの巨大コンビニ要塞の上で、敵のレイチェルと戦っている最中なのだとしたら――。
どうして巨大コンビニ要塞は、王都に向かって接近し続けているのだろう?
少なくともそれぞれの陣営のリーダー同士が直接、戦闘状態に入っているのだ。そんな状況で、要塞だけが王都に向けて進軍し続けているのは不自然な気もする。
もしかしたらコンビニの勇者の彼方が、レイチェルとの戦いに敗れて。大きな傷を負って負傷し。どこか遠くの森の中で体を動かせない状態にあるのではないか……と、紗和乃は推測していた。
その為、巨大コンビニ要塞は進軍を再開して。グランデイル王都に迫ってきているのだと思えたからだ。
だが……玉木の『索敵追跡』の能力によると。コンビニの勇者の彼方はちゃんと健在で。こちらに向けて近づいて来ているという。
……という事は、敵の親玉のレイチェルと彼方は、まだ巨大コンビニ要塞の上で戦闘中で。その状態でなぜか、要塞だけはこちらに向けて進軍し続けているという事なのだろうか……?
どうも、嫌な予感がしてならない。ただ、どちらにしても。コンビニ要塞からの攻撃を避ける為に、元々自分達はグランデイル王城の地下深くに逃げ込もうとしていたのだ。
逃走したクルセイスを追って、地上に出て来てしまったけれど。このままここに残るのは危険しかない気がする。
「ティーナさん、紗希ちゃん! それに杉田くんも、すぐに地下に戻りましょう! ここに残っていたら、要塞の主砲に狙い撃ちにされる可能性があるわ。それに敵の前衛部隊がもう、接近して来ているかもしれない!」
紗和乃がここに集うコンビニメンバー達全員に対して。そう呼びかけようとした、まさにその時――。
グランデイル王宮の庭園にあるレンガの塀が突然、崩壊し。外から凄まじい数の黒いカマキリタイプの新型機械兵達が、大波のようにこちらに向かって押し寄せて来た。
「――うおおおっ!? こいつは、やべえぇぇっっ! みんなすぐに地下に逃げるぞおおぉぉぉッ!」
「敵を食い止めるしんがり役は私が務めます!! どうか、ティーナ様、玉木様、紗和乃様は、王城の地下に早く避難して下さい!!」
黄金剣を抜いたアイリーンが、真っ先に敵の前方に立ち。すぐにその場で迎撃態勢を整える。
だが……王宮の庭園に侵入してきた敵の数は、あまりにも多かった。
黒いカマキリ型の機械兵達は、地上の全てを飲み込む大津波と化して。猛烈な勢いで押し寄せて来ている。
おそらくアイリーンだけでは、その勢いを食い止めるのは絶対に不可能だ。
けれど例え紗和乃や玉木達がアイリーンに加勢したとしても。もう……敵の勢いを止める事は出来そうにない。
このまま地下に急いで戻り、全員で避難しようとしても。あらゆる方向から押し寄せて来る、黒いカマキリ兵達に追いつかれてしまうのは、ほぼ確実な状況だった。
つまり――もう、ここにいるコンビニメンバー達には逃げ場は用意されていなかった。このままではどう足掻いたとしても、全滅する事態は免れそうに無い。
「――きゃああぁぁぁぁっっ!!」
地下へ戻ろうと王城に向けて走っていたティーナ達の前方にも、黒いカマキリ兵が大量に出現し。驚いた玉木とティーナは、思わずその場で悲鳴を上げてしまう。
まさに絶対絶命の危機に直面し、コンビニメンバー達は全員が決死の覚悟で、押し寄せる敵と戦う覚悟を決めようとしていた、その時……。
突如として、周囲を包囲するように迫って来ていた黒いカマキリ兵達による進撃が――ピタリと止まった。
「……えっ? これは、どういう事なの?」
紗和乃は事態の突然の変化に驚き。目を何度も瞬きさせて、その場で硬直してしまう。
さっきまで、まるで大津波のように押し寄せて来ていた黒いカマキリ兵達の動きが完全に停止している。
この黒いカマキリ兵達は、あの巨大コンビニ要塞から出撃してきた兵隊達だ。
だから、カマキリ兵達の動きを『止める』事が出来る。あるいは……停止させる指示を出せる存在がいるのだとしたら、それはもしかして……。
「――よおッ! どうやら、全員ここに揃っているみたいだな。探す手間が省けて、助かったぜ!」
その声は、ここにいるメンバー達にとって。あまりにもよく聞き慣れた男の声である事は間違いなかった。
「彼方……くん?」
「――彼方様……?」
玉木もティーナも、聞き慣れたコンビニの勇者である秋ノ瀬彼方の声が聞こえた事に、すぐに反応した。
だが……なぜか彼女達は、その声の主が自分達のよく知る彼方のものなのか、確信が持てないでいた。
グランデイル王宮の庭園に向こうから、ゆっくりと歩いてきた男のシルエットは、明らかに秋ノ瀬彼方本人に見える。
コンビニの勇者専用の店長服と、黒いロングコートを全身に着て。堂々とした足取りでこちらに向かって歩いてくる彼方。
ただ……不思議な事に、なぜか彼の周囲に無数にいる黒いカマキリタイプの機械兵達は、目の前を歩いている彼方の事を襲おうとはしなかった。
それどころか、まるで『モーゼの十戒』の話のように。カマキリ兵達は王者の行進の為に、道を開けるかのように。両側に移動して、コンビニの勇者である秋ノ瀬彼方の歩む道を作り上げようとしている。
ちょうど庭園の奥からは、太陽の光が逆光となり。こちらに向けて歩いてくる、彼方の顔の部分が見えなかった。
だが……彼の声も、その外見も。全てがティーナ達のよく知る秋ノ瀬彼方の特徴とほぼ一致していた。
それなのに、ティーナも玉木も。自分が好意を寄せている彼方の登場を心から喜び。彼の元へと急いで駆け寄っていくという事が出来ずにいた。
それはきっと……彼女達が、常に身近で彼方の事を見てきたからこそ。直感的に感じてしまったのだろう。
今、この場に登場したコンビニの勇者の彼方と全く同じ外見をした男から感じる強烈な違和感と、そして彼の背後に漂っているドス黒い邪悪なオーラの存在を……。
「おおっ、彼方じゃないかよ! 来るのが遅いぞ! それで、巨大コンビニ要塞の方はどうなったんだよ!? 敵の親玉のレイチェルは作戦通りに倒せたのか?」
彼方の大親友である、『火炎術師』の勇者の杉田が能天気な顔をして、無防備にも男の元へと駆け寄って行く。
もちろん杉田とて、決して馬鹿では無い。
確かにいつも何も考えずに、直情的な行動ばかり取ってしまう事の多い杉田だが……。
直前に玉木が『索敵追跡』の能力を用いて、コンビニの勇者の彼方がこちらに近づいて来ているという情報を教えてくれた事と。
この時はまだ、彼方を除く他のメンバー達には、巨大コンビニ要塞を操る真の主人――5000年前にこの世界に召喚された、コンビニの大魔王が肉体を伴って復活したという情報は知らされていなかった。
そして、たまたま眩しい太陽の光が逆光となり。
杉田は、こちらに向けて歩いてきたコンビニ店長服を着た男の『顔』の部分が……。近くに寄るまで、見えていなかったという事も彼の判断を狂わせてしまった。
「……えっ? お前、本当に彼方……なんだよな? その髪の色はどうしたんだよ? 赤に染めたのか? おいおい、決戦を前にいきなりスーパー◯イヤ人に覚醒したみたいに、急にイメチェンなんてするなよな……!」
アハハと、いつものように軽口を叩いて。杉田はコンビニ店長服を着た男の肩に手を掛けようとした。
だが……、その瞬間に――。
杉田は、彼の親友だと思って。いつも通りに接しようとした男の背後に、突如として無数の黒い球体が浮かび上がり。
それらの黒い球体は、一斉に彼の前に立つ杉田に向けて青いレーザー砲のシャワーを浴びせかけてきた。
「――危ないですッ!! 杉田様!! その男の側からすぐに離れて下さいッ!!」
「えっ……!?」
それは、まさに一瞬の出来事だった。
コンビニの大魔王である、もう一人の彼方からの攻撃を予見したアイリーンが、杉田を庇うように前に飛び込み。
コンビニの大魔王が操る『完全なる・コンビニ』による、無数の青いレーザー砲の一斉照射を……杉田の代わりに全て浴びてしまう。
「きゃあああぁぁぁッ!! アイリーンさん!?」
ティーナと玉木の悲鳴が、同時に上がった。
アイリーンは杉田の身をギリギリ守る事が出来たが……。コンビニの大魔王の攻撃を受けて、右腕と右脚を同時にレーザー砲によって切り落とされてしまった。
「グッッ、……うぅぅ……!!」
体の半身を失い、必死に痛みに耐えようとしたアイリーンは、自分の身を守る為の黄金剣をその場に落としてしまう。
そんなアイリーンの姿を見て。赤い髪をしたもう一人の秋ノ瀬彼方は、面白いものを見たかのように。軽薄にケラケラと笑ってみせた。
「ハッハッハ、アイリーンじゃないかよ! マジで久しぶりに、お前に会えたな! ……だが、また俺の頭にチリチリとした痛みが一瞬だけ走りやがったぞ。どうやら、コンビニの関係者に接すると、『共鳴』反応が俺には起きるらしいな。お前の記憶が少しだけ、俺の中に流れ込んできたからな」
あまりの恐怖に、ブルブルとネズミのように震える杉田の前で。コンビニの大魔王は舌打ちをして、不機嫌そうにその場で顔を歪めて見せた。
「……チッ! 女神はゲートを使って、異世界に渡っちまったようだな。あの女だけ勝ち逃げをしたなんて、気に入らないぜ。しかもその肝心なゲートは壊れちまったのかよ……。それじゃあアイツの恋人であるティーナとかいう女を捕まえても、意味が無いじゃねーかよ!」
「――アイリーンさん!? 大丈夫ですか!!」
「杉田くん!! 早くその男から、逃げてッ!!」
ティーナと玉木の2人が急いで、重症を負ったアイリーンと。ドス黒い暗黒オーラを放つ、もう一人の彼方の前で完全に動けなくなっていた杉田の元へと駆けつける。
そんなティーナ達の姿を見たコンビニの大魔王は、彼の視界の中に『玉木』の姿が入りこんだ途端に――。
突然として様子が急変し。全身をワナワナと震えさせながら、瞳の色を真っ赤にして『攻撃モード』へと切り替わった。
「『暗殺者』の勇者は、見つけ次第必ず抹殺するッ!! 絶対に生かしてはおいたりはしないッ!!」
再びコンビニの大魔王の背後に浮かぶ、無数の黒い球体が作動し。
今度はさっきよりも遥かに多い数の球体を出現させ、彼の目の前に現れた『暗殺者』の勇者の玉木を目掛けて、青いレーザービーム砲を一斉に照射しようとする。
「――死ぬがいいッ!! 『暗殺者』の勇者よッ!!」
コンビニの大魔王が右手を前に振り下ろし。『完全なる・コンビニ』の攻撃を再び玉木に向けて降り注がせようとした、その時――。
””ズドドドドドーーーーーーン!!””
庭園の奥から、凄まじい威力を誇る別の青い2本のビーム砲が放たれ。
コンビニの大魔王の背後に浮かぶ無数の黒い球体を全て、高熱によって瞬時に溶かして消滅させてしまった。
一体、何が起きたのかが分からずに。驚きの顔を浮かべるコンビニの大魔王の背後から。
この場所に遅れて駆けつけてきた、もう一人の、『秋ノ瀬彼方』の声が聞こえてくる。
「――ティーナ、玉木。それに、みんなも待たせたな! 俺がここに来たからには、もう大丈夫だぞ! その男は必ず、コンビニの勇者であるこの俺が倒してやるからな!」
「彼方様……!!」
「彼方くん――!!」
まさに間一髪のタイミングで、グランデイル王宮の庭園に駆けつけた彼方の腕の上には、お姫様抱っこをされている『回復術師』の香苗美花の姿もあった。
庭園に後から駆けつけた彼方は、連れてきた香苗をいったん地面に降ろした後で。すぐに玉木とティーナの前に颯爽と立つと……。
この世界で5000年前からずっと続いてきた、コンビニの大魔王による『コンビニ大決戦』の決着をつけようと。真剣な眼差しで、戦闘態勢を整え始める。
そう……今、この瞬間に――。
とうとう2人の秋ノ瀬彼方による、最終決戦が始まろうとしていたのであった。




