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【コミック第2巻 発売中】外れスキル『コンビニ』で最強の勇者に成り上がる! ~異世界でコンビニ生活を満喫しつつ、オレを追放したクラスメイトを見返す事にしました~  作者: こたつ猫
第24章 グランデイルに集う者達

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第四百七十話 コンビニの中には『誰か』がいる


朝霧(あさぎり)の遺体……!? レイチェルさん、その写真の情報は確かなんですか!?」


 

 ノートパソコンにアップで表示された写真の画像を、俺は両目を液晶画面に(こす)り付けるくらいに近づけて、至近距離から凝視して確認しようとする。


 だが……画面に映し出されている女性の外見は、何度見ても朝霧(あさぎり)本人で間違いないように見えた。


 女神アスティアが俺に伝えてきた内容。そして女神の試練の中で確定されてしまった、現在この異世界に生存しているクラスメイトの合計の数は『17人』という事実。


 そしてその生き残りのクラスメイトの人数の中に……おそらく、朝霧冷夏(あさぎりれいか)は含まれてはいなかった。



 だから俺自身も、その可能性があり得る事を覚悟してたつもりだったけど……。

 だけど、まさかこんなにも早いタイミングで。しかも共和国にいるレイチェルさんから、朝霧死亡説の証拠ともいえるような情報が提示されるなんて思いもしなかった。



総支配人(グランド・マスター)様、この写真の情報は確かです。朝霧(あさぎり)様のご遺体は既に回収し、コンビニ共和国への移送も完了しております。共和国内でクラスメイトである藤堂様や北川様にも直接確認をして頂き、間違いなくご本人である事を確かめて頂きました」


「そんな……!? でも、どうして朝霧(あさぎり)はグランデイル王国の南西の村にいて、そこで死亡していたんですか? 遺体には状態保存用の魔法の粉がかけられていたって言っていましたけど、それには何か理由があるんですか?」


「……朝霧(あさぎり)様の遺体の件につきましては、ザリル様の配下の方々が現地で情報を集めて下さいました。なので100%それが真実とは限りませんが、おそらくこういう状況だったのでは……という、事件の証言や証拠も得ているようです」



 レイチェルさんはノートパソコンの画面越しに、俺にザリルの部下達が現地の村で得てきたという、詳細な情報を提示して順番に説明してくれた。


 その情報によると、朝霧が死亡したのはほぼ間違いなく今から約1年半前。

 ちょうど――俺がまだ、カディナの壁外区でコンビニを出して商売をしながら暮らしていた時の事らしい。


 つまり最後の目撃情報とされている、朝霧(あさぎり)がグランデイルの王都で水無月(みなづき)に声をかけて。街から一人で外に出てしまった、その後のタイミングになるとの事だった。


 王都を離れた朝霧は、グランデイル王国に南西の村にまで辿り着き。そこでしばらくの間、滞在していたようだ。

 当時、その村に異世界の勇者様が訪れていたという旅の行商人達の証言も複数確認されている。


 そしてその後……朝霧(あさぎり)が滞在していた村は突然、村外れの森から押し寄せてきた大量の魔物の群れによる襲撃を受けてしまい。その村の中にいた人々は、ほぼ全滅してしまったとの事だった。



 その時の詳細な情報はまだ未確認だが、おそらく村の唯一の生き残りであった教会の神父が、魔物の襲撃で亡くなった異世界の勇者様の遺体を保存しておく為に。状態保存の魔法の粉を朝霧にかけてくれたらしい。


 そしてその村の神父も、魔物の襲撃の時に受けた傷の悪化により、人知れず村の中で亡くなってしまい。


 教会の地下に安置されていた異世界の勇者である朝霧冷夏(あさぎりれいか)の遺体は、誰にも気付かれる事なく長い間、村の地下に放置されたままになってしまったとの事だった。



「それじゃあ、朝霧(あさぎり)の遺体が発見されたのは、本当につい最近の事になるんですね……」


「ええ、ザリル様は総支配人様との約束通り、ずっと行方不明になられていた朝霧(あさぎり)様の探索を続けていました。それがようやくつい最近になって、グランデイル王国女王のクルセイスによる支配体制が弱まり。王国の隅にある村々にまで、捜索の範囲を広げる事が出来たからのようです」



 何て事なんだ……。それではやはり、女神アスティアが俺に伝えてきた内容は本当だったんだ。


 この世界において本物(・・)朝霧冷夏(あさぎりれいか)は、既に死亡していたというのは間違いのない事実らしい。



 という事は……俺が今まで何度も会って会話をして。未来予知が出来る『仮想夢(かそうむ)』を見せてくれていた、あの朝霧冷夏(あさぎりれいか)は――やはり俺の心の中だけにしか存在しない、俺の妄想の中の人物だったという事になるのだろうか?


 ……でも、女神はそういった人物が、過去に召喚されたコンビニの大魔王の心の中にも存在していたと言っていたような気がする。



 それは一体……どういう事を意味するのだろう?



「レイチェルさん……。実は今、レイチェルさんに相談したい事があるんです。少し複雑で難しい内容になってしまうかもしれませんけど、今の俺には『コンビニの勇者』という存在について相談が出来るのは、レイチェルさんしかいないと思っています。もし良かったら、俺がこれまで歩んできた道のりと、それを支えてきてくれた『叙事詩(ポエマー)』の勇者についての話を聞いて貰えませんか?」


「……ええ、もちろんです。私もこうして、総支配人(グランド・マスター)様と2人きりで会話の出来る機会がほとんどありませんでしたので。総支配人様がこれまでどのような旅路を歩んでこられたのかを、私にぜひ教えて頂けると嬉しいです」



 ――前回、俺がコンビニ共和国に戻った時も。敵陣営のチョコミントの騎士であるパティが襲撃してきたり、眠りについていたアドニスさんを蘇生薬を使って目覚めさせようとしたり。

 そしてその直後に、ティーナがグランデイル王国の薔薇の騎士、ロジエッタに誘拐をされてしまったりと。


 あまりにも慌ただしく、様々な出来事が続いてしまった事もあり。俺はレイチェルさんと、ゆっくりと今までに起きた出来事を相談出来る機会がほとんど無かった。



 だから今こそ、全ての真実を包み隠さずに話そうと思う。俺の身にこれまで起きた全ての出来事、そう――『朝霧冷夏(あさぎりれいか)』という人物についての全てを話すんだ。



 俺は共和国を離れて、南のバーディア帝国に赴き。帝国の夜月皇帝ミュラハイトとの戦いにおいて、魔王領からやってきた虚無(アビス)の魔王カステリナの襲撃も重なり、絶対絶命の危機を迎えてしまった事があった。


 その時に、俺の前に姿を現した朝霧冷夏の力によって。俺は初めて未来に起きる出来事をシュミレーション体験出来るという――『仮想夢(かそうむ)』を経験したんだ。


 その後も俺は何度も、朝霧(あさぎり)の仮想夢の力を借りて。未来に起こる凄惨な運命を先に『経験』する事で、仲間から誰も犠牲者が出ないように自分の歩む道を切り開いてきた。



 その全ての出来事に、『叙事詩(ポエマー)』の能力を持つ朝霧冷夏(あさぎりれいか)が関わっていたのは間違いない。


 今の俺はもしも朝霧(あさぎり)が居てくれなかったら。一体……何度、死んだり、殺されていたのかも分からないくらいだ。

 きっと数えきれない程の回数を敵によって殺され、そして何度もティーナや、大切な仲間達を全滅させられていただろう。



 朝霧が俺に『仮想夢(かそうむ)』を見せてくれて。未来の危機を事前に知らせてくれたからこそ、俺はこれまでこの世界で、常にギリギリのラインで生き延びる事が出来ていたんだ。



「……なるほど。そのような事が、総支配人(グランド・マスター)様の身には起きていたのですね……。総支配人様の身を守るべき守護者として、まさかそれほど多くの危機に直面していたにも関わらず。お(そば)でお守りする事が出来ず、本当に申し訳ございませんでした……」



 レイチェルさんは驚愕の表情を浮かべて、俺の話に深く耳を傾けて聞き入り。ノートパソコンの画面越しに、深々と頭を下げて謝罪してきた。


 そしてその後ですぐに真剣な顔色に変わり、俺に対して冷静な口調で話しかけてくる。



総支配人(グランド・マスター)様、私は今の話を聞いた上で……今までずっと疑問に思っていた事についての『解答』が得られたような気が致しました」


「疑問に思っていた事……? レイチェルさんには、何か気になっていた事があったというのですか?」

 


 俺から問いかけられたレイチェルさんは、チーズケーキをこっそりと一人で食べていたオフタイムで、少しだけ乱れてしまっていたピンク色の髪の癖を改めて直すと。


 その場で一度、深呼吸をして。真剣な表情で俺に話しかけてくる。



「――ハイ、総支配人様、私は以前からずっと感じていたのです。それは……『コンビニの中には誰かがいる』という事についてです」


「……えっ? コンビニには誰かがいる?」



 今の俺は巨大カエルみたいに、きっとまん丸な黒目を大きく見開いてしまっている状態だと思う。


 それはレイチェルさんの言った言葉の意味が、全く頭の中で理解出来なかったからだ。


「すいません……レイチェルさん。それはどいう意味なんでしょうか? コンビニの中に誰かがいるのは当然なんじゃないですか? だって中で働いている、アルバイトの店員さんとかも常にいるでしょうし……」


「その通りです、総支配人様。コンビニというお店は、一部例外もありますが……基本的には24時間営業をしている店舗ですので、例え深夜だとしても店の中には『誰か』がいるものなのです。総支配人様は照明が落とされて、真っ暗な状態になっているコンビニを見かけた事がありますか?」


「ええっと、まぁ、郊外とかだと……24時間営業をしていない店舗もありますし。全てじゃないかもですけど、俺の地元にあったコンビニは深夜でもいつも明かりがついていました。だからどんなに夜遅くでも、コンビニに行けば明かりが灯っているし、中に誰か店員さんが居てくれるんだろうな……っていう、安心感はありましたね」



 俺がそう答えると、レイチェルさんは嬉しそうに微笑み。コンビニというお店がいかに素晴らしいかを褒められた事を、自分の事のように誇らしげ感じているようだった。


「そうなのです。コンビニという場所には、いつでも『誰かが居てくれる』のです。そしてその能力を象徴するコンビニの勇者様の心の中にも、常に『誰か』が存在していたのです。例えるなら、総支配人様が深い眠りにつかれている時も。その頭の中には人知れず活動をしている『何者か』が、常に存在していたという事になります」


「それが、俺にとっては……『朝霧冷夏(あさぎりれいか)』という存在だったという事なんですか?」



 レイチェルさんは、いったん灰色の制服のボタンを緩めると。オホンと咳払いをしながら、俺にも分かるように自身の考えを分かりやすく解説してくれた。



「ハイ、この世界の女神が言っていたように。おそらくコンビニの能力を持つ者には、自身の願望を実現出来る『隠された真の能力』が存在していたのでしょう。それが総支配人様にとっては……『未来予知能力』だったのです」



 なるほど。女神アスティアは確かに、レイチェルさんと同じ事を言っていたと思う。


 俺が自分の周りにいる大切な人達を守る為に、潜在的に未来に待ち受ける危険を回避したいと願う願望が、『仮想夢(かそうむ)』を始めとする未来予知の能力を俺に見せていたのだと。



「では……俺の心の中にいる『朝霧冷夏(あさぎりれいか)』という人物は、俺が潜在的に持っていた未来予知の能力自体が、独自の人格を持ち。まるで本物の人間のように『具現化』した存在、という事になるのでしょうか……?」


「ええ、おそらくそうだと思われます。総支配人様は、謎の言葉を残してグランデイルの王都を一人で離れてしまったクラスメイトの朝霧(あさぎり)様の事を……心の奥底で、ずっと気にかけていたのです。その想いが、総支配人様の願望である『未来予知』の能力に、オリジナルの人格を宿して具現化されてしまったのでしょう。もちろんその人物は、本物の朝霧(あさぎり)様とは異なり。総支配人様の心の中で創造された、別の人格が宿る朝霧様という事になりますが……」



 ――そうか。つまり、レイチェルさんの言っている事をまとめるとこういう事になるのか。


 元々、コンビニの勇者という存在には、他者の願望を叶える事の出来る『願望を実現する』能力が存在した。


 まぁ、俺のコンビニの地下には玉木が望む『回転寿司店』があったり。杉田の望む『結婚式会場』があったりしたらからな。

 クラスの仲間が増えたタイミングで、地下に『コンビニホテル』が出現したのも……そういう事なんだろう。



 そしてコンビニの勇者には、他者だけでなく。


 能力者本人が心から望む、真の願望を実現出来る能力も隠されていた。それが俺にとっては、大切なティーナが死んでしまう不幸な未来の運命を回避出来る……『未来予知』の能力だったのかもしれない。


 だけどその未来予知能力には、コンビニの勇者の心に宿る『何者かの人格』が付与されてしまっていた。


 それが――俺の心の中だけに存在していた『朝霧冷夏(あさぎりれいか)』という人格だったんだ。


 言わば、俺が何度も会って話していたあの朝霧冷夏は、俺自身が持つ『未来予知』の能力が人間の姿となり、具現化した存在と言ってもいいだろう。



 俺は自身に秘められた『未来予知』の能力である朝霧冷夏(あさぎりれいか)と会話をしながら、仮想夢(かそうむ)を繰り返し見て。

 これから俺の未来に起きる、仲間が全滅してしまうというバッドエンドや、大切なティーナが死亡してしまうという最悪な運命を回避してきた事になる。


 それは(はた)から見たら、俺が自分自身の心に存在するもう一つの人格と、自問自答しているようにも見えたかもしれない。


 でも実際には……俺の真の能力である『未来予知』能力が具現化した存在である朝霧冷夏(あさぎりれいか)と俺は交渉をして。

 自分の未来を切り開く為に、未来予知の能力を行使してきた事になるのかもしれない訳か。



「でも、レイチェルさんはさっき……ずっと気になっている事があったと言っていましたけど。それはもしかして、俺の心の中に朝霧冷夏(あさぎりれいか)という存在がいた潜んでいた事を、事前に察していたという訳なんですか?」



 俺からそう問いかけられたレイチェルさんは、ノートパソコンの画面越しに強く首を振って。その指摘を否定してみせた。


「いえいえ、お恥ずかしながら……私は、総支配人様の中に存在する人物については、全く気付けておりませんでした。私が疑問に思っていたのは、女神アスティアが言っていた内容と同じ事についてなのです」


「女神が言っていた内容と同じ……? それは、どういう事なんですか?」


「ええ。つまり、現在のコンビニの勇者様である彼方(かなた)様の心の中に『朝霧冷夏(あさぎりれいか)』という人物が存在していたように。この世界に5000年前に召喚され、今はコンビニの大魔王と成り果ててしまったもう一人の秋ノ瀬彼方(あきのせかなた)様の心の中にも、その人物の願望を実現する能力を具現化させた『別の人物』が存在していたのでは……という推測についてなのです」


「コンビニの大魔王の心の中にも、俺にとっての朝霧のように。真の能力を具現化した『誰か』が潜んでいたというのですか……? だとしたら、それは一体……誰なんですか!?」



 レイチェルさんは、少しだけ悲しそうな表情を見せると。重い息を吐き出すようにして、その人物の名前を静かな声で俺に告げてくれた。



「――ハイ。おそらく、5000年前に召喚されたコンビニの勇者の心の中にいたのは、現在……巨大コンビニ要塞を操っている『レイチェル』なのだと思います。彼女はコンビニの勇者の心の中から抜け出し。本当の意味でこの世界で具現化して、当時存在していた本物のレイチェルの体を乗っ取ってしまったのだと思われます」


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第三十二話 幕間――グランデイル城下街の最後の方に関して謎が残った。 そして願望がなぜ朝霧につながったのかが不明である。 う~ん(・ε・`)
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