第百二十話 エルフとの出会い
「でっけぇぇーー!! 超大型サイズのクマのぬいぐるみって、本当にゲームとか漫画に出てくる巨人みたいな迫力があるんだな……」
小笠原麻衣子の『ぬいぐるみ』の能力で生み出された、超大型サイズのクマのぬいぐるみを地面から見上げて。俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
真下から見上げてみても、全体の大きさが見渡せないくらいに凄まじいサイズの大きさがある。
……普通に考えたら、どう見てもラスボス級の敵キャラだろ、こんなの。
まるで都心の高層ビルを、真下から見上げているような感覚さえするぞ。
しかもその超高層ビルには可愛い足が付いていて。そのまま大地の上を歩き回ったりするんだから。マジで恐怖しか沸いてこない。
外見はもふもふのクマだけど、踏まれたら即死は間違いないだろうからな。
俺はミランダ遠征の後、コンビニがグランデイル軍の増援部隊から逃げている時に店の中で気を失ってしまった。
だから、こうして小笠原の出した超大型サイズのクマのぬいぐるみを目にするのは、今回が初めての事になる。
「――でも、こんなにでっかいぬいぐるみとまともに戦ったら一体誰が倒せるんだろうな? 正直、俺より全然小笠原の方が『魔王』の名にふさわしい気がするぞ。俺なんて、ほんの少し魔王軍の4魔龍公爵より強い守護騎士を3人も従えていたり、機械の兵隊を2〜300体所有していたり。攻撃ヘリや戦車扱ったり、大量のドローンを使って空からミサイル攻撃が出来るくらいしか能力の無い無能な勇者なのに……」
「それだけの戦力があったら十分、彼方くんは『魔王』と呼ばれるのにふさわしいわよ。私のぬいぐるみの軍団なんて、コンビニの屋上に付いてるガトリング砲で、簡単に蹴散らされちゃうんだから」
近くにいる、身長10メートルサイズのクマのぬいぐるみの肩に乗っている小笠原が、俺の呟きを聞きつけて。直接文句を言ってきた。
「あれ……小笠原? お前、あの超大型サイズのクマのぬいぐるみの上に乗らなくてもいいのかよ? あっちの上にいた方が安全そうな気がするのに」
「バカ言わないでよ! あんなに高い所に乗るなんて、無理よ無理っ! 70メートル級のぬいぐるみの肩に乗ったりでもしたら、私……怖すぎてすぐに失神しちゃうもの。地上から私はあの超大型ぬいぐるみを操るから、安心して見ててね! 土色のちっさな小人達なんて、私の可愛いぬいぐるみが全部踏み潰してやるんだから!」
確かに、あの超大型ぬいぐるみから見たら、3メートル級の『土魔巨人』の群れなんて、全部アリが地上を歩いているくらいにしか見えないだろうな……。
でも、間違ってコンビニを踏み潰す事だけは勘弁してくれよ。まあ、ここは全部小笠原を信頼して任せるとするか。
「よーし、じゃあ、小笠原! 後は頼んだぞ! くれぐれもコンビニは踏まないようにしてくれよ! ……後、もし森からエルフが出てきたら、すぐに超大型クマのぬいぐるみはしまってくれよな!」
「オーケー!! 私にまっかせなさーい!」
小笠原は笑顔で超大型ぬいぐるみを操りながら。森の土魔巨人達に向けて、ぬいぐるみ軍団を突進させていく。
あいつ、やけにノリノリだったな。
でも……何かやらかしそうで、俺はめっちゃ不安なんだけど。
小笠原の操る『超大型サイズのクマのぬいぐるみ』は、足元に群がる土魔巨人達を、次々と踏み潰していく。
それも、ただ踏み潰すだけじゃなく。時々両手に持っている巨大な銀製のフォークを、一気に振り下ろしたりもする。
おかげで地上にいる可哀想な土の巨人達は、巨人なクマのぬいぐるみの攻撃によって……。一瞬でペチャンコに潰されていき、跡形もなく森の土へと戻っていった。
こうなると、戦局は一気にこちらに優勢に傾いた。
これがもし、相手が人間や魔物だったなら……。
70メートル級のクマのぬいぐるみが目の前に出現した時点で恐怖を抱き。敵はすぐにでも降伏してきたのかもしれない。
……だが、感情を持たない無機質な土魔巨人達は、小笠原が操る超大型サイズのクマのぬいぐるみに対しても、投石攻撃を繰り返して。最後まで無謀な戦いを挑み続けてきた。
もしかしたら、森に侵入する外敵を自動で排除しようとする。ある種の機械的な動きをするような指示がされているのかもしれないな。
けれど大きな石をぶつけたくらいでは、小笠原の操る超大型サイズのクマのぬいぐるみはビクともしないぜ。
ぶつけられた投石は、全て巨大ぬいぐるみのもふもふな毛皮に弾かれて地面に落ちてしまうからな。
全体的に動きが超スローな所は、超大型クマのぬいぐるみの唯一の弱点なのかもしれないが……。
時間をかけて超巨大ぬいぐるみは、森の中で投石を繰り返す『土魔巨人』達を、ゆっくりとその巨大な足で順番に踏み潰していった。
まさにアリを蹂躙するゾウのごとし――だな。
しかも、そのアリ達は逃げまどう事もなく。その場でずっと立ち続けながら投石攻撃を繰り返してくるから、踏みつけるゾウの方は、攻撃がかなりしやすい環境だったと言っていい。
俺とアイリーンは、小笠原の超大型クマのぬいぐるみが踏み潰し損ねた敵だけを集中的に攻撃していけばいい。
そうして、しばらく時間が経つと。
コンビニの周りに立ち並んでいた土の巨人達は、ほとんど見えなくなっていた。
「よーし! コンビニの外にいる土魔巨人はもう、いなくなったみたいだな。これならもう、他のメンバーがコンビニの外に出て戦っても大丈夫だろう」
俺はある程度、コンビニの外の安全が確保されたのを確認すると。店内に残っている他のメンバーにも援軍要請をする事にした。
「おーい、紗和乃ー! もう外に出て一緒に戦ってくれて大丈夫だぞー! まだ、森の中に敵が少しだけ残ってるから一緒に戦ってくれないか?」
俺がコンビニの外から、店内にいる紗和乃に声をかけると……。
「OKー、了解よ! 私に任せなさい! コンビニ周辺の守りは私が固めるから、彼方くんとアイリーンさんは、森の中に残る敵の掃討作戦に移って頂戴! あ……それと改めて森の中にエルフがいないかを、慎重に見極めながら攻撃を加えていってね!」
待ってましたとばかりに、コンビニの中からドヤ顔の紗和乃が店の外に飛び出してくる。
途中参加にも関わらず。まるで水を得た魚のように、外で戦闘をしている俺とアイリーンに戦闘の指示まで飛ばしてきた。
紗和乃は店から出て、急いでコンビニの屋上に飛び乗ると。
壊れてしまった5連装式自動ガトリング砲の代わりに、自身の『射撃手』の能力を駆使して、魔法の弓による光の矢の連射攻撃を開始した。
森の中を縦横無尽に歩き回る破壊神と化した、小笠原の超大型クマのぬいぐるみによる恐怖の大行進。
そしてその破壊神の行進を免れた土魔巨人達を、コンビニの守護騎士であるアイリーンが黄金剣で一気に斬り裂いていく。
アイリーンの神速攻撃を逃れた、わずかな土巨人達を……。今度は俺が操る空中ドローンによるミサイル攻撃が、次々と空から爆破させていく。
そして最後に。まだコンビニに対して攻撃を加えてくる、わずかに残った敵の残党に対しては、コンビニの屋上にいる紗和乃が魔法の矢を連射して撃ち抜いていく――というコンビニチームの連携プレイが見事に決まった。
コンビニを取り囲む、土魔巨人の掃討戦はその後もしばらくは続いたが――。
やがて……1〜2時間もすると。
コンビニの周辺からは土魔巨人達の姿は完全に見えなくなった。
あれだけ凄まじかった投石の雨は、今は完全に停止している。
どうやらコンビニの外の安全は、やっと確保されたようだ。
「ふぅ〜〜! これでやっと一安心かな? みんなも本当にご苦労様! 怪我をしたりしたメンバーはいるかな? もしいたら、すぐにコンビニに戻って北川が調合をしてくれた治療薬を塗って傷を治してくれよな!」
俺は全員の無事を確認する為に、外で戦っていたメンバー全員をコンビニ周辺にいったん集合して貰う事にした。
今回の戦いで、コンビニの外で俺と一緒に戦ってくれたメンバーは――アイリーン、小笠原、紗和乃の3人だけかな?
こうして、その顔ぶれを順番に見ていると。
まだまだコンビニメンバーの中で、直接敵と戦闘が出来るメンツが少ないんだな……と、改めて思わされてしまう。
どちらかと言うと、うちのメンバーは攻撃の補助だったり、四条のように防御壁を作る建設系の能力だったりと。サポートをメインにした能力のメンバーが多い。
まあ、色々と個性的な能力者が集まっている事は間違いないんだけどな。
あ、そういえば……。
最も戦闘が得意そうな格好良い名前の能力を持ったメンバーが、うちのコンビニにはいる事を忘れていた。
うちには何といっても『暗殺者』なんて、ご大層な能力の名前を持った勇者の玉木がいる。
でももちろん、今回の土魔巨人達との戦いに玉木は参加させなかった。
親友の紗和乃と一緒に、玉木も外で戦いたいって言っていたんだけどな。俺は玉木が外で戦う事については許可を出さなかった。
今の所、玉木の能力は敵から自分の身を隠すような隠密系の能力が多い。だからまだ敵と直接戦闘が出来るような能力があるとはいえないだろう。
今回の戦いでは、結局俺は一度も土の巨人達の投石攻撃を受ける事なく済んだけれど……。
でも、それはアイリーンが特に俺に対して投げ込まれた投石を、集中的に剣で斬り裂いて。俺の身を常に守ってくれていたからだ。
やっぱり今のコンビニの現状は,『舞踏者』みゆきや、花嫁騎士のセーリスがいない分……。
コンビニメンバーの戦闘能力は、一時的にダウンしていると言ってもいいだろう。
将来の事を考えると、もうちょっと敵と戦闘の出来るメンバーを育てていきたい所ではあるな。魔王領には、もっと強い魔物達がうじゃうじゃと潜んでいる可能性もあるし。
「それにしても……。土魔巨人は全部倒したけど、肝心のエルフは森の中から出てこなかったわね?」
紗和乃が周辺の森の様子を観察しながら、俺にそう話しかけてきた。
「そうだな。俺達が倒したのはもしかしたら、この森の守護者みたいな存在だったのかな? 特にエルフが裏で操っているような雰囲気は感じなかったけれど」
うーん……。
俺も戦いの最中は、周囲の様子をよく見回してはいたんだけどな。もし、エルフが土の巨人達の中に混ざって戦闘に参加をしてきたりしたら……。小笠原の超巨大ぬいぐるみがそれを踏み潰してしまうのはまずいと思ったので、俺は結構周辺を注意しながら戦っていたつもりだ。
……でも、結局最後までエルフらしき存在は、俺達の前に姿を現す事はなかった。
俺達を襲ってきたのが、ティーナの言っていた伝説の『土魔巨人』だったとしたら。ここはエルフ達の住むエルフ領の森なんだと思ったけど……。
案外、それは違っていたのだろうか。
それとも、本当に何か古代の秘宝が眠る洞窟や遺跡みたいな場所に、コンビニが偶然近寄ってしまって。そこを守る守護者達に突然襲われてしまったという感じだったのかな?
周辺をぐるりと見回していた俺にアイリーンが突然、声をかけてきた。
「……店長、気をつけて下さい! 森の奥から何者かがこちらに向けて近づいてきています」
「えっ、それは本当なのか!?」
俺が状況がまだ分からずに。周りをキョロキョロと見回して警戒する。
小笠原の周りを取り囲む、小型のクマのぬいぐるみ達も小さなフォークを構えて戦闘態勢を取り始めた。
そして『射撃手』の勇者である紗和乃も、魔法の弓を構えて、森の奥から来る何者かに備える。
コンビニの戦闘メンバー全員が、近づいてくる敵を緊張した面持ちで待ち構えていると……。
そいつは森の奥の小道から。
堂々とこちらに向けて、ゆっくりと歩いてきた。
金色のサラサラとした、繊維の細そうな長髪が森の中を吹く柔らかな風で揺らいでいる。
色白で細身な長身のモデル体型。
先端の尖った、特徴的な細長い耳。
森の木々と同化をしてしまいそうな、色鮮やかな草色の鎧を全身にまとった凛々しい姿。
俺達の前に姿を現したのは――。まさに日本のアニメや漫画の世界でお馴染みの姿をした、金髪の美しい女性の『エルフ』だった。
唯一……イメージと違っていたのは、思っていたよりもかなり長身だったという所かな?
俺の身長は173だけど。やってきた女性のエルフの身長は、180センチくらいはありそうだ。
体のスタイルが細く引き締まっている。ヨーロッパのパリコレとかに出演している、ファッションモデルみたいな雰囲気だな。
そして予想に反して、エルフの女性の瞳の色は黒色だった。
何となくイメージ的に、ティーナのように深緑色の瞳の色をエルフはしていると思っていたんだけど。そこは少しだけイメージとは違っていたらしい。
俺がこの異世界で初めて出会った、本物のエルフの姿をマジマジと見つめていると……。草色の鎧を着た長身のエルフの女性は、こちらにゆっくりと近づいて来て。
俺達の前で、突然立ち止まった。
そして、コンビニの周りに立っている俺達一同ををぐるり見回すと。その場で、大きな声を上げて告げてくる。
「――聞け! 魔王に与する邪悪な魔物達よ! ここが由緒正しきエルフ族が住まう、神聖な森と知っての狼藉か! 古の協定を破り。我がエルフ領の森に攻め寄せて来るとは……己の無知さを恥じるが良い! 貴様らがどの魔王から派遣されてきた手下共なのかは知らんが、我らの祖先がお前達の主人である魔王達と結んだ、神聖なる相互不可侵の協定を知らないとは言わせぬぞ!」
エルフの女騎士は尊厳と誇りを持った態度で。俺達に向けて高らかにそう宣言をしてきた。
その高潔なる、堂々とした宣言を聞いた俺達はというと。
「――ん? 何でみんな一斉に俺の顔を見つめてくるんだよ?」
アイリーン、紗和乃、小笠原の3人が。
一斉に俺の顔をジーっと見つめてきている。
「だって、私達の代表は彼方くんでしょう? コンビニメンバーの代表として、彼方くんがちゃんとエルフと話をしてくれないと」
紗和乃が今更何を言ってるのよ、と言わんばかりのジト目で俺を見つめてきた。
ああ、そうか。
それは、そうだよな……。
今は俺がコンビニメンバーを代表する勇者なのだから、ここは俺がこのエルフの代表と交渉をするべきだろう。
正直、異世界で初めて出会ったエルフに感動して。つい言葉を失ってしまっていた。
俺は改めてコホン……と。
わざとらしい咳払いをした後で。
長身のエルフの女性騎士に向き直ると。自分達の立場を説明する事にした。
「俺はここにいるみんなの代表をしている、コンビニの勇者の秋ノ瀬彼方だ。まずは最初にお互いの誤解を解きたいので説明させて欲しい。俺達は魔王に仕える魔物ではないし、もちろん魔王の指示を受けてエルフの領地を侵略しに来た訳でもない。……ただ、魔王領に向かう途中で、たまたまこの森に入ってしまった所を、土の巨人達に攻撃されてしまい、やむなく反撃をしただけなんだ。俺達はエルフに対して敵対の意思は全くない」
俺の言葉を聞いたエルフの女性は、その高い身長で俺を見下すように見つめてくると。
「ほう……。我らが森を守護する土魔巨人達を全て全滅させておいて、今更我らに敵対する意思がないとほざくつもりなのか……? 愚か者め! そのような戯れ言を我らが本気で信じると思ったのか! 例え森の守護者たる土魔巨人を失おうとも、我らは最後の1人になるまでお前達魔王の手下共と戦い抜くぞ! 誇り高きエルフ族の力を思い知るが良いわ!」
「いやだから、それは誤解なんだって! 俺達はエルフと争うつもりはないんだよ!」
「黙れッ、この人を皮を被った魔物めが! 我らは神聖なる森を荒らした貴様らを絶対に許しはしないぞ! エルフ一族の誇りをかけて最後まで戦うゆえ、覚悟するがよい!」
「……ちょ、ちょっと、彼方くん!」
紗和乃が慌てて俺に近づいてくると。
小さく耳打ちをするように、俺に話しかけてくる。
「ねぇ、どうするの? これじゃあ全然交渉になってないじゃないの。エルフさんを怒らせちゃってるみたいだし」
紗和乃が俺に注意するように言ってくる。
「いやいや、俺だって普通に会話をしたいと思ってるよ! でもこのエルフの女騎士が頭でっかちで、全然話を聞く耳を持たないから俺も困ってるんじゃないか」
俺が思わずそう叫んでしまったので。慌てて紗和乃が俺の口を塞いで、エルフにこちらの会話が聞こえないようにする。
どうやらエルフという種族は相当にプライドが高く。そして融通が効かない頭の固い連中らしいな。
「……どうした? さっきからコソコソと隠れ話をしおって。我らと再び戦う意思を固めたというのなら、いくらでも受けて立つぞ! エルフの力が土魔巨人達を操るだけしかないとは思わない事だな。一族全ての力を持って、今度こそお前達を粉砕してくれようではないか!」
俺は好戦的なエルフの女騎士を真っ直ぐに見つめる。そして今度は少しだけ、話の方向を変えて交渉に臨んでみる事にした。
「……実は、今回俺達がこの森にやって来たのには本当の目的があるんだ。森の土魔巨人を倒せば、エルフが直接会いにきてくれると思ったから、交渉が出来るこの機会をずっと俺達は窺っていたんだよ」
「何……? 我らと交渉がしたかっただと? ほう、それはどういう内容なのだ。ぜひ、聞かせて貰いたいものだな」
エルフの女騎士がやっと、俺の話を聞いてくれる態度を見せてくれたので……。
俺は改めて、異世界で初めて出会ったエルフに対して堂々と宣言をする事にした。
「実は、俺達は異世界の便利なアイテムや、美味しい食べ物を扱う『コンビニ』という店を経営している商人なんだ。だからこの地であんた達エルフと商売がしたい。ぜひ、俺のコンビニに入って異世界の珍しい商品を見ていってくれないか? 絶対に気にいる商品が沢山あると思うぜ!」
俺は結構爽やか営業スマイルで、笑いかけたつもりだったんだけどな。
紗和乃も、小笠原も。一斉に目を点にして、俺の顔を唖然として見つめていた。
――アレ?
俺なんかヤバい事を言ったのかな?
だって、コンビニといったらまずは商売じゃないか。
どんなに頭の固い連中でも、うちの鮭おにぎりや幕の内弁当を食べたら、きっと超絶満足してコンビニのファンになってくれると思うぜ。
「彼方くん。あなたって人はね……」
紗和乃が青白い顔をして、俺に話しかけてきた。
この顔の紗和乃は結構怒っている気がするぞ。そんなに変な事を俺は言ってないと思うけどな。
紗和乃から慌てて目を逸らして、俺は目の前にいるエルフに再び向き直ると。
「ふっふっふ。ハッハッハッーー! 我らと商売をしにきただと? 面白い……! 見せて貰おうではないか、異世界の商品とやらを! ただし、我らエルフが気にいる商品が何も無ければ、即刻ここから立ち去って貰うからな。覚悟するが良いぞ!」