Ⅶ
「…雪羽」
顔を上げると雪羽は少し怯えていた
そして、僕は自分の目が人の目ではないことに気付き、慌てて左目を両手で隠した
「くっ……うっ……」
僕の口から声にならない声が漏れた
もう、これで日常は終わりだった
「リョウ…どうして…」
雪羽は僕の顔を今にも泣きそうな顔で覗き込んだ
僕はなんて言っていいか解らなかった
「…僕は悪魔だ」
僕の口はその言葉を紡いでいた。だが、その一言で雪羽のスイッチを入れてしまった
「ああああ!」
雪羽の絶叫が耳をついた瞬間僕の右腕が切り落とされていた
「くっ!」
肩から流れる血が痛くて仕方ない
「いやあああああ!」
雪羽は僕の腹に蹴りを入れ、一気に蹴り飛ばした
僕の身体脱衣所の壁を突き破り、はソファーを破壊して、テレビに背中を打ち付けた
テレビもパチパチと音を上げている
買い替えが必要だろう
そして、ずるずると落ちる僕の体にソファーを飛び越え、僕に向かい急降下する
当然回避を試みるが、足に力が入らず、その膝を腹部で受けてしまった
下位肋骨が折れてしまった気がするがこの際気にしないでいい
次の瞬間には雪羽の剣が僕を貫こうと持ち上げられた
どうやら、次には僕の頭は粉砕されるらしい
目を瞑ってその時を待った
「…なんで、そんな顔するのよ」
「え?」
雪羽の目尻から、僕の頬に雫が落ちた
「やめてよ…そんな穏やかな顔しないでよ」
そうか、僕は今微笑んでいるんだ
これで報われるのだから
「僕にはもう絶望しかないから」
僕の口からまた、言葉漏れた
「もう、人間じゃないから」
僕の左目から赤い雫が零れた
唯一人間である部分からはもはや涙が枯れて何も流れなかった
「出来ない…よ」
雪羽は剣を落とした
だが、この展開はまずい
「雪羽!ごめん!」
僕はとっさに雪羽を蹴飛ばした
「え?」
何かが物凄い轟音とともに、僕の家を破壊した
そして、僕の腹部にそれが突き刺さった