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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第七章:学園祭編
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第七十六話:おいしくな〜れ、もえもえキュン♡

 開始の時間からかなり経ってもまだ満席が続いているメイド喫茶。

 ミリアは働いと、ふと視界の端に、見覚えのある二つの影が映った。


 入口付近で、きょろきょろと落ち着きなく周囲を見回す少女と、少し背の高い少年。  制服はセレスティナのものだが、まだ着慣れていない様子がはっきりと分かる。


「…グレイシーと…フラム…?」


 ミリアが小さく呟いた瞬間、二人もこちらに気づいた。


「──あっ!」

「兄ちゃん!」


 グレイシーの声が上ずり、フラムは反射的に手を振りかけて――途中で止まった。


「「……え?」」


 二人の視線が、ミリアの頭から足先までをゆっくりと往復する。

 数秒の沈黙が流れた。


「…ミリア?」

「…兄ちゃん?」


 疑問形が、恐る恐る重なる。


「……はい、ご主人様。お席へご案内いたします」


 ミリアは営業用の微笑みを貼り付けたまま、淡々と答えた。


 次の瞬間。


「「うわああああああ!?」」


 二人の声が、見事に重なった。


「な、なにその格好!?」

「兄ちゃん、どうしたの!?罰ゲーム!?」

「…今は仕事中だから」


 そう言いながら、ミリアは二人を空いている席へ案内する。


 周囲の客達はというと、 「知り合い?」 「家族かな?」 などと、ひそひそ声。


(目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな目立つな)


 グレイシーとフラムは席に座り、フラムはまだ状況を理解できていないが、グレイシーは察したようで、ミリアに聞いた。


「これってさ、女装?」

「…そう」


 状況を理解したプラムと、グレイシーは目を合わせ、踊るように跳ねた。


「じゃあさ」

「指名できるんだよね?」


 嫌な予感が、背中を駆け上がる。


「……できる、けど」

「やった!」


 グレイシーが即座に手を挙げた。


「ミリア指名!」

「俺も!兄ちゃんで!」


 


 指名されたメイドはそのご主人様の対応をしなければならない。

 それはクラスで決めたルールだ

 ルールはルールである。


「……かしこまりました」


 そう言って、二人の前に立つ。


「ご注文は、いかがなさいますか?」


 淡々とした口調と、完璧な所作。  だが、グレイシーはそれを見て、ぷっと吹き出した。


「ふふ……」

「……なに」

「だって……その顔でその言い方…」

「可愛いけど怖いじゃん」


 フラムも肩を揺らしながら笑っている。


「兄ちゃん、こういうの好きだったの?」


 ミリアは一瞬だけ視線を逸らし、そして小さくため息をついた。


「…いいや、全く」

「だと思った」


 グレイシーはくすっと笑い、メニューを指差す。


「じゃあ、普通に頼むね。

 私は紅茶と、ケーキ」

「俺はココアに…あと……その、オムライス?」

「かしこまりました」


 注文を復唱し、厨房に伝える。


 戻ってくると、二人はどこか楽しそうだった。


「学園祭、すごいね」 「人も多いし」


「……そうだね」


 ミリアは少しだけ、表情を緩めた。


(こういう時間は……悪くないか)


 ほどなくして、料理が運ばれてくる。


「お待たせいたしました」


 皿を置いた瞬間、グレイシーが悪戯っぽく言った。


「ねえ、ミリア」 「なに」


「メイドさんなんだからさ」 「一つくらい、やってよ」


「……は?」


「ほら、あれ」 「“おいしくなーれ”ってやつ」


 フラムも便乗する。


「一回でいいから!」

「そうそう、記念!」


 ミリアは嫌な顔をしたが、すぐに顔を笑顔に切り替えてしまった。


「…おいしくな〜れっ、もえもえキュン♡」


 グレイシーとフラムは一瞬止まり、そして吹き出した。


「ぶっ…あっはっはっはっはっはっ!」

「ハハハハハハハ!」


 * * *


(疲れた…)


 ミリアは2人が帰ったのを見てから、先ほどの恥ずかしい行為を思い出した。


(あんな…!…恥ずかしい…)


 ミリアはもう思い出さないと心に決めつつ、奥に戻ろうとした。

 表よりも奥の仕事の方が多い。

 最初から奥で仕事をしているメイドもいるので、その人と変わり精神的休息をとってやろうという魂胆であった。


(そういえば…午後の演劇どうしようかな…)

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