第六十話:編入生、why?
基礎魔術学の授業は、そのまま「事故を起こさないための実践的理論」という形で進んだ。
ライクネット教諭は、先ほどミリアが口にした案を噛み砕き、黒板いっぱいに図式を書きながら説明していく。
「結界って聞くとね〜、大仰なものを想像しがちだけど、事故防止用の簡易結界は張るというより流れを歪めるような感覚なんだ」
火と風の魔術式の接点に、細い補助線が引かれる。
それだけで、魔力の流れが大きく変わるのが、基礎理論を学んでいる生徒たちにも分かる形になっていた。
「魔術の才能がある人と得意な人の違いはまさにそこでね。魔力制御に重きを置いているか、それを自然にできている人の割合が、得意な人のほうが高いんだ。
あくまで割合の話だから、信じすぎないほうがいいからね」
魔術においての『才能がある』は魔力量が多いということを意味する。
なので才能がある人物たちは魔力量に物を言わせた雑で荒居魔術を使うことが多くなる。
逆に基礎基本を大事にしている人物たちが魔術が得意と考えられているので、当然魔術の初歩的な部分である魔力制御を怠ることはない。
それからも授業が続いていくと、チャイムが鳴り、ざわりと教室が動き出す。
ミリアはいつも通り、周囲と距離を保つようにして教室を出た。
* * *
放課後。
ミリアは監査の残務を片付けるため、生徒会室へと向かった。
扉の前には、いつもより人だかりが多い。
「……?」
扉をノックし中に入ると、中では生徒会役員たちが集まって何やら話し込んでいた。
その中心にいるのはフィリップとエリック、それから、見慣れない二人の生徒。
一人は、淡い灰色の髪を肩口で揃えた少女。
もう一人は、少し日に焼けた肌の少年で、落ち着かない様子で辺りを見回している。
「失礼します」
「よぉ、遅いじゃいないかミリア。
今日一番最後に来たのはお前だったぜ?」
声をかけてきたのは、エリック。
相変わらず人を小馬鹿にするような声だ。
「まだ、開始時間ではない…ので大丈夫、でしょう」
「今日は開始前に伝えることがあったんだがな。
まあいい、今日は新たな編入生2人を紹介しよう」
その言葉に、ミリアの動きが一瞬だけ止まる。
「また編入生、ですか?多いですね」
「仕方ありませんよ、ちゃんとした編入生の方なので我慢してください」
ミリアが不満を出すとニーアが落ち着いた声で収めた。
「……編入?」
「はい。女子一名、男子一名です。年齢はどちらも十三歳」
またしてもミリアの動きが止まった。
(いや、まさかね…)
「それでは、2人とも自己紹介をしようか」
フィリップが言うと、呼ばれた編入生は喋り始めた。
「グレイシー・アルトです。よろしくお願いします」
「フラム・アルトです。お願いします」
(何で?)
ミリアは何故ここに知り合いがいるのかが頭の中でずっと回り続けていた。
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皆さん今日はクリボッチですか?
自分はクリボッチです…




