第三十九話:竜害の酷さ
ギー・ソリアの故郷は東の田舎だ。
ギーの生まれは、そんな田舎に相応しいような貧乏貴族のワーサリフト伯爵家であり、ワーサリフト伯爵領を取り仕切り、毎日のように訪れる竜害と向き合う。
ギーも、領民の前に立つ存在だった。
ギーには二人の妹と、一人の姉がいた。
姉は、竜に爪で切り裂かれ、見るも無残な姿になっていた。
一つ下の妹は、竜に食われた。ある意味殺されるより残酷だ。
三つ下の妹は竜害の際に、避難民を装った人攫いに攫われ、慰め者にされて自殺した。
ギーは許せなかった。
つらい日々を耐え抜いて生きている自分達を傷つける部外者を。
ここまで自分達を追い込む竜害を。
滅多に竜の現れない中央にばかり騎士団を配置して、一番必要な場所には設置すらしない国を。
そして何よりも、領民のために、人攫い共を殺すことを、国に相談すら出来ない、自分が許せなかった。
ワーサリフト伯爵領では、何もしてくれないレティーラ王国の代わりに隣国のザンバーレ王国が竜害から助けてくれていた。
ギーはザンバーレ王国に多大な恩義を感じているがゆえ、ザンバール王国には借りを返さなければならないと強く感じている。
第二王子のフィリップを裏から操るアズノール公爵はある目的のため、ザンバール王国と戦争をしたがっている。
だからこそ、フィリップが王になることは絶対に防がなければならない。
そのためギーは、隣の領地の出身であるギーの婚約者と共にフィリップの暗殺を目論んだ。
* * *
ミリアは分身を出していた。
理由は単純、第二王子を暗殺するために魔道具を設置した二人の暗殺者を捕縛するためだ。
分身は飛行魔術を行使し、周囲を探索しながら対象の人物を探していると、目的の人物を見つけた。
見つけたのは一人。
分身は見つけた瞬間、魔術を発動させた。
「『発動』」
属性は一番捕縛に適している土だ。
分身は土属性の縄の形状をした魔術でギーを捕縛した。
「っこれは?!」
「残念。
第二王子を殺させるわけにはいかないんだ、ギー」
ギーの対処は以上だ。
無駄な会話も応答も必要ない。
分身は無駄な魔力を切り、本体の様子を見た。
* * *
(やはりか)
本体のミリアは、倉庫の裏である少女を見つけた。
「キャッ!」
ミリアは気づかれないうちに魔術を発動し捕縛した。
「魔術?!」
「終わりだよ」
ミリアは彼女…セリアーネ・サザンドールに声をかけた。
「…なんで!」
「何が?」
「あなただって竜害の酷さは知っている側でしょ。
国が私達田舎貴族に何もしてくれないのも知ってるでしょ。
私達からしたら第二王子を王にするわけにいかないのよ!
なのに…なんで邪魔するの!」
「終わるころにはモナカと話はせてあげるよ」
ミリアはその一言だけを残して去っていった。
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