第三十話:後悔
ミリアが魔道具探しを始めて一週間。
もう探すところはなくなってしまった。
フィリップとセフィルの方も見つからなかったらしい。
それをライクネット教諭に報告し、「無駄足だったかもね」と言われたことで、この魔道具探し大キャンペーンは終了した。
* * *
ミ リ ア は お 茶 会 に 誘 わ れ た !
やはり、貴族の子女が集まるセレスティナの名物と言えば、ダンスと演奏とお茶会だ。
お茶会は男子よりも女子がやることが多く、男子のお茶会の授業はそう多くない。
そんなお茶会に誘われたのだ。
これは一大イベントに違いない。
ちなみに相手はわからない。 隠している理由もわからない。
正直理由なんてどうでもいい。 だが一片の興味はある。
* * *
茶会で使われることになるのは表庭だ。
表庭にミリアが到着すると、お茶会をする予定のテーブルには既に三人が座っていた。
全く知らない男子生徒三名だ。
「お招きいただき、ありがとう、ございます」
「いえ、本日はお忙しいところ、お越しいただき、ありがとうございます」
彼らはにっこりと微笑んでいる。 ー確実に、悪意を孕んだ。
ミリアは七賢者の中でも、政治に詳しいし、貴族とはそれなりに面会もしているため、たまに自分を利用しようと考えている貴族もいる。
そんな貴族たちの顔が決まってこうなのだ。 利用しようとする気を隠そうともしていない。
「あなたの出身地はどちらでしょうか?」
「バルッサです。 バルドン伯爵家に、迎えられてからは…故郷へ戻っていませんので、流行話は、あまり…」
前座で気分を上げてから、本題で操ろうとしているのだろう。
これは相手のほうが知っているという上げと、バルッサの話はしないぞという牽制だ。
(一応、相手に牽制はした。 どうするかな)
相手の思惑通りにはならないぞ、という牽制は、交渉の場以外でも、このようなおしゃべりでも、貴族の社交界ではよく使う。
さっきの下手な牽制でも、しないよりしたほうがいい。
牽制、優位性、経験値の三つを示せば大体うまくいく。 一応バルドン伯爵家のいじめられている養子というほぼ生きていない設定があるので、経験値は見せない。
「…ところで、あなたはニナ嬢と仲が良いそうだな」
「俺も、彼女があなたとやたら楽しそうに話しているのを見たな」
「あなたは恥ずかしくないのか?」
ミリアは理解した。
この男子生徒たちはニナのファンクラブだ。
この学校には元々三つほどのファンクラブがあったのだが、ニナが編入してきたことで、ニナのファンクラブが一つ出来上がってしまったのだ。
つまりこの男子生徒たちは、ニナから離れてほしいと言っているのだ。
「ニナから離れろ、と言うなら、僕ではなく、ニナに言ってください。 僕ではなく、ニナが絡んでくるので」
男子生徒たちは困ったような、驚いたような、怒ったような、三者三様の顔を見せた。
(せっかくのお茶会なんだから紅茶を飲みたい)
「…紅茶をいただいても、よろしいでしょうか?」
「え、ええ、どうぞ」
許可をもらったので紅茶を口に含むと、独特な味が広がった。
甘味はあるのだが、それ以上に紅茶とは思えない苦みを感じる。 そして紅茶において味と同じくらい大切な、匂いがしない。
ミリアが飲む紅茶は種類が決まっているので、他の種類の紅茶について詳しいわけではないが、それでも違和感を感じた。
(こんな紅茶があるのか?)
そう考えたと同時に、めまいがした。
そのすぐ後に、吐き気と頭痛、体の痛みも感じ始めた。
さっきまで感じていた心地よい暖かさの空気も、いつの間にか寒く感じた。
(…これは、毒? いや、この症状は、まさかー)
目の前が、歪む。
目に映るのは、突き放されたあの日。
ー人殺し!
(違う、『僕』は、君を守るために…人殺しなんかじゃ…)
目に映るのは、見放されたあの日。
ー糞野郎が。そうやって、俺たちをだましてきたんだろ?
『違う、だましてなんかいない)
ー####、愛してる
(ごめん、ごめん。 守れなくてごめん)
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