1387 さあ、夏の旅の始まりだぁぁぁ!
旅の始まりの集合場所は、そういえば私の家だった。
一階のお店のフロア。
なので慌てなくても、すぐに到着した。
もっとも私が一番最後だったけど。
「うむ。旅のメンバー勢揃いだね!」
ギリギリだったことはおくびにも出しませんとも。
セラ、エミリーちゃん、アンジェ。
マリエ、スオナ、そして私。
フロアにはお見送りとして、フラウ、ヒオリさん、シルエラさん。
それにファーの姿も二人あった。
二人?
と思って、私は気づいた。
片方はゼノだ。
そういえばゼノには、ファーと同型の「ガワ」を渡してあるのだった。
その「ガワ」はただの人形で、自立行動はできないのだけど、代わりに霊的存在であれば憑依して自由に動かすことができる。
基本システムは同じなので、ファーと同じように経験によって新たなスキルを身に着けていくこともできる。
そのスキルは「ガワ」の中から自由に使えて、それはまるでフルダイブ型のVRゲームで遊んでいるような感覚だ。
ゼノは、その感覚を大いに気に入った。
もっとやり込んで育てたいというので差し上げたのだ。
名前は、ファーツー。
現在のところは二番目のファーという安直なものです。
もっといい名前があれば変える予定だ。
そして私はすぐに気づいた!
ゼノもまた、旅のメンバー!
今回は7人旅なのだ!
「今回はファーツーで行くの?」
私は何事もなかったかのようにゼノことファーツーに笑いかけた。
ファーツーは、ロングストレートな銀髪のメイド美少女。
見た目は同型なのでファーと同じだ。
ただ表情は、憑依したゼノの影響を受けて、ファーの冷然とした素顔にイタズラ好きな雰囲気が加わる。
なので、一目でどちらがどちらかはわかる。
ちなみにファーツーは、憑依する前はゴーレムの見た目だけど、憑依することによってファーと同様の進化をする。
すなわち見た目が、ほとんど人間と同じになるのだ。
なので旅の中で奇異の目を向けられることはないだろう。
とはいえ美麗なメイドではあるので、目立つことは目立つだろうけど。
「ねえ、クウ。あのさ、まさかとは思うけど、またもやボクのことを忘れていたわけじゃないよね? 旅のメンバーを見る時、ボクの方を見ていなかったけど」
「え? あははは! そんなわけあるわけがないよねー!」
私は笑ってごまかした。
「ならいいけど。それより、さ」
「なぁに、ゼノちゃん?」
「ボク、今回はこのファーツーで行くから、いつもと比べれば弱いからね? まだこの子レベル2しかないし」
「……というと、どれくらいの強さなんだろ?」
レベル2と言われてもピンとこない。
「アンジェリカと互角くらいかな。何日か前に模擬戦したけど、いい勝負だった」
「そかー」
私、思う。
そして、正直にポロリと言ってしまった。
「それだとゼノ、今回は便利じゃないね」
弱いわけではないけど、なんでも自由自在という意味で。
「え」
「あ」
「あのさ、クウ」
「あははははは! ちがうって! なに言ってのゼノちゃん! 私たち、もう長い付き合いの友達だよね!」
「といっても、ほんの二年程度だけどね」
「密度があったでしょ!」
「それはまあね」
「よし! 今回も楽しくやっていこう! おー!」
なんとかごまかせました。
うむ。
友達を便利な道具扱いするなんて、よくない。
だけど笑っていると、今度はアンジェがにこりと笑って言った。
「ねえ、クウ。私も便利じゃなくてごめんね」
と。
「うわあああ! ちがうってばー! 間違えただけなのー!」
私は発狂してごまかした!
「クウちゃんは今日も元気だね」
最年少のエミリーちゃんが大人の微笑を浮かべる。
「そうですね」
「である」
ヒオリさんとフラウが同じく大人の微笑でそれにうなずいた。
「まさにこれぞ、クウちゃんだけに、くう! ですね! そうですよねマリエさん!」
「そうだね、セラちゃん」
セラの強引な振りに温かい笑顔で答えるマリエは、さすがの練度だ。
「さあ、クウ。荷物の搬入をお願いしてもいいかな?」
スオナが言う。
「そうだね」
いきなり遊んでばかりいないで、みんなの荷物を確認して、問題なければ私のアイテム欄に入れよう。
荷物は問題なかった。
この夏の旅も、これでなんと三度目だしね。
みんな、もう慣れている。
アイテム欄に入れて、準備完了。
これで見た目的には、日帰り気分のお気楽少女集団です。
「さあ、行こうか。黒騎士の人たち、きっともう待っているだろうし」
準備をおえて私は言った。
「良い旅を、マスター」
「うん。ありがとう。ファーも大宮殿での修行を頑張ってね!」
最後にファーと言葉を交わして、私は転移魔法を発動させた。
最初の目的地は城郭都市アーレ。
まずはアーレ近郊のダンジョンに飛んで、そこから黒騎士隊に守られて馬車でアーレまで移動する予定だ。
ローゼント公爵はどんな歓迎をしてくれるのか。
とても楽しみだ。




