1370 学院祭、二日目の朝!
「ふぁーあ」
目覚まし時計が鳴り響く中、私は大きなアクビと共に身を起こした。
眠い。
とてもとても眠い。
でも今日は学院祭の二日目。
今日は朝から、まずはユイとナオをマリエに預けて、それからジルドリア王国の武闘会参加者を迎えに行く。
なので特に寝坊はできない。
頑張って目覚めた。
おはようございます、クウちゃんさまです。
いやあ、昨日は夜まで大変でした。
おかげですっかり疲れて、起きるのも大変な有り様です。
チンピラどもは、キチンといいコちゃんに処理した。
もう二度と強盗しようとは思わないだろう。
何やら怪しげだった黒幕の男からは、しっかりと事情を聞き出した。
なんと闇の組織の存在を掴んだ。
なので黒幕の男については中央騎士団に引き渡した。
あとは国にお任せだ。
ちなみに干からびた姿は幻覚です。
実際には、吸血鬼のヒトたちがそれなりに血を吸っただけです。
ナオのゾンビ姿も、もちろん幻覚です。
アリスちゃんについては、アレはなんと本人。
私は、いくらまわりに私たちがいるとしても、本人がチンピラの前に立つのは危険ではないかと思ったのだけど……。
ゼノと本人が平気というので許したら、実際に平気で驚いた。
なんとびっくり。
すでにアリスちゃんは、悪党から攻撃を受ける経験も済ませていたのだった。
まったくね。
ゼノはアリスちゃんをどこまで鍛えるつもりなのか。
ちなみにもちろん無傷でした。
ゼノの防御魔法によってアリスちゃんは徹底的に守られています。
そして、チンピラの一人……。
よりにもよって魔王クスカイに助けを求めた狼男については、協議の結果、面白い運命もあるものだと言うことで――。
そのままどこかの山の中に、捨てちゃうことに決めた。
悪党なんて放置するものではないのだけど……。
魔王クスカイに助けを求められてはね……。
まあ、いいか。
と。
そうしてしまいました。
いや、うん。
私は決して魔王ではありませんけれども!
ともかく。
私たちは適度に楽しみ、同時に事件は解決したのでした。
身支度を整えて二階のリビングに降りると、すでにフラウとナオの二人が隣接したダイニングのテーブルにいた。
キッチンではファーが朝食の支度をしている。
「おっはよー、フラウ、ナオ、ファー」
「おはようである、クウちゃん」
「おっはー」
「おはようございます、マスター」
朝の挨拶をしつつ、私もテーブルの席につかせてもらった。
ちなみにヒオリさんは大宮殿に泊まって昨日は帰っていない。
簡易結界装置の開発が大詰めなのだ。
昼には学院長としての仕事があるし、大忙しだ。
「昨日は夜遅くまで帰らなくてごめんね。フラウ、お店の方はどうだった?」
「問題ないのである。いつも通りだったのである」
「そかー」
それならよかった。
お店の方は、本当にもうフラウとエミリーちゃんに任せっきりで私はほとんど関わっていない。
最近では商品すらフラウなら「生成」できるようになっているし。
でも、まあ、一応は店長なので……。
お店の様子だけはできるだけ聞くようにしている。
ちなみにファーは、昼の間は大宮殿に行っている。
メイドとしての腕を磨くため、なんとびっくり皇妃様の下で働いているのだ。
「フラウたちも店を閉めて、学院祭に来てくれていいからねー」
「今日は昼前に商品の受け渡しがあるので、それがおわったら遠慮なくエミリーと行かせてもらう予定である」
「うん。楽しんでねー」
「クウちゃんと回れないのは残念であるが」
「ごめんねー。いろいろあってねー」
「わかっているのである。ちょっとだけの愚痴なのである」
「落ち着いたら、また遊びに行こう。というか、夏の旅行があるか」
「うむ。それを楽しみにしておくのである」
学院祭がおわれば、学期末テストがあって、その後は夏休み。
今年も旅行に出る予定だ。
そして夏休みの後半、8月の下旬にはラーメン大会。
今年の夏も充実したものになりそうだ。
「それにしても、クウ。さっき少し話したけど、ファーはすごい。本当にニンゲンとしか思えなかった」
ナオが言った。
「だねー」
私の目から見てもそうだ。
実のところ、ファーはまだ一歳児でしかないのに、もはや完璧だ。
「メイドロボの量産はするの?」
「しないよー。さすがにねー」
「そかー」
と、これはナオです。
私ではありません。
「もしかして、作るならほしかった?」
「それはほしい。だけど、さすがにほしいとは言わない。メイドロボは、あまりにオーバーテクノロジーすぎる」
「ファーの素性については秘密でお願いね?」
「任せて。友人として接する」
「うん。ありがと」
話していると、ファーが完成したスープを持ってきた。
「ファーはどう? 大宮殿の仕事は楽しい?」
私はファーにたずねた。
「はい。皇妃様にも同僚の皆様にもよくしていただいています」
「それならよかった」
私は、ファーにはどんどん外に出てほしいと思っている。
友達を作ったりとか、ね。
ファーはゴーレム。
私が作ったもので、生物ではないのだけれど、人間と同じ思考を持って、人間と同じように動ける。
だから、できれば同じように暮らしてほしい。
もちろんファーの意思にもよるけど。
朝食は今日も美味しかった。
ファーの料理は、もともと良かったのに、さらに良くなっている。
お腹も満足して少しのんびりした後は――。
「じゃあ、行ってくるね」
登校の時刻だ。
ナオを連れて通りに出て、まずは中央広場まで歩いた。
中央広場には、すでにユイが来ていた。
さすがはユイ。
外泊でも待ち合わせの時間に遅刻することはなかった。
ユイは私たちに気づくと、メガネと帽子の変装姿で元気いっぱいに走ってくる。
「クウ、ナオ、おっはよー!」
その姿は朝日を受けて、キラキラと輝いて――。
いや、ちがう。
機嫌が良すぎて光の魔力を振りまいているのだ。
「ユイナちゃん、魔力」
「あ」
呆れて指摘すると、すぐに気づいて引っ込めてくれたけど。
「まさかとは思うけど、ずっとそうだった?」
「それはない! と思う! クウたちを見つけて、さあ、今日も頑張るぞーって思ったら気持ちが高まっちゃって、それで魔力が出ただけだから」
「ならいいけど」
ずっと垂れ流していたとしたら大惨事だ。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
ナオがユイに、有名のRPGの名台詞をNPCみたいに言った。
「あはは。やだなーもう。そんなことはないよー」
ユイはご機嫌に笑った。
「今日は私がハッピーさんを借りる。ハッピーしてもらう」
ナオが唐突に宣言した。
「え。それは駄目だよ? だってハッピーさんのところには、今日も私、遊びに行く約束をしているし」
「卑怯」
「卑怯じゃないよね? だってナオには関係ないし」
「借りるだけ」
「駄目ですー」
昨日は起こらなかったのに、今日は朝から火花が散ったぁぁぁぁ!
どうするのこれぇぇぇぇ!
そこに!
救世主あらわる!
「おはよー! ユイナちゃん、ナオちゃん! それにクウちゃんも!」
マリエが来たぁぁぁぁぁ!
昨日は大変だったのに、マリエもまた元気いっぱいの様子だ。
さすがはマリエ!
完全回復している!
よし。
あとは任せよう。
「じゃ! あとは三人でよろしくねー!」
私はすぐさま魔法を使って、ジルドリア王国に転移した。
マリエなら安心。
マリエなら確実。
きっとなんとかしてくれるだろう!
間違いない!




