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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍化】  作者: かっぱん


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1366 新作ラーメン一本勝負!





「――どうぞ。新作の特製塩ラーメンです」


 緊張感漂う中、シャルさんがテーブルにラーメンを出していく。

 私ことクウちゃんさまの前にも置かれた。


 現れたラーメンは美しかった。

 透明なスープが輝いている。

 その中で麺が整列している。

 乗せられた具材は、蒸した鶏肉に刻んだ緑のハーブ。

 それらすべてが第一印象から調和していた。

 前世の記憶で言うならば、ベトナム料理のフォーに似ていた。

 実に素晴らしい出来だ。

 とてもシャルさんが作ったとは思えない。

 という言い方は、さすがに失礼だけど、思わず私はそう思ってしまった。


「いただきます」


 緊張を破って最初にスープをすすったのは、ニヒルな中年男性――大宮殿料理長のバンザさんだった。


 私は自分ではまだ手をつけず、バンザさんの顔色を窺う。

 果たして、どんな評価をするのか。


 ただ残念ながら、バンザさんは完全にポーカーフェースだった。

 顔色ひとつ変えないまま、今度は麺をすする。

 その姿はまさに戦士。

 見事な食べ姿だった。


 私は、ドン・ブーリにも目を向けた。

 いつも大騒ぎしている彼だけど、今は彼もまた無言だった。

 真剣な表情でラーメンをすすっている。

 その姿は、かれもまた戦士。

 見事な食べ姿だった。


 そうか、これが食のプロか……。


 私は感心しつつ、自分でもシャルさんのラーメンをいただくことにした。

 スプーンを手に取って――。

 緊張の中、最初はスープを口に入れさせていただいた。


 すす――。


 口の中に透明なスープが広がる。

 優しくて爽やかなのに深い、素晴らしい味わいのスープだった。


「美味しい」


 同じくスープを飲んだナオが素直な感想を口にする。


「だねー」


 私はナオに同意しつつ、今度は麺をすすった。

 麺は、それ自体は普通だった。

 だけどスープによく馴染んで、美味しさは十分に感じられる。


 具材もスープに馴染んで、大変美味しくいただけた。


「ごちそうさまでした」


 気づけば完食。

 評価はS。

 スープの大勝利だ。


 テーブルでは、バンザさんにドン・ブーリ、ナオも食べ終えていた。

 それぞれにごちそうさまをして――。


「どうでしたか? 新作ラーメンは」


 シャルさんが緊張の面持ちで私たちに問う。

 さあ、評価タイムだ。


「美味しかった。100点」

「そだねー。シャルさん、本当によかったよー」


 最初にナオと私が素直に称賛させていただいた。


 続いて、


「ふむ」


 と、バンザさんが冷徹に口を開いた。

 ただ残念ながらバンザさんの口から「美味しかった」「不味かった」との感想が出ることはなかった。

 バンザさんが語るのはスープや具材の調理法だった。

 そして最後に「代金だ」と銀貨一枚を置いてテーブルから立つと、そのままお店から出て行ってしまった。

 銀貨一枚は日本円にしてだいたい一万円。

 ラーメンの価格としては高い。

 つまりは高評価と受け取っていいだろう。


 最後に語るのはドン・ブーリだ。


「前回の激辛ラーメンは、まさに熱の塊であったが。今回の特製ラーメンの、なんと涼やかなことよ。僕は今、湖でバカンスを楽しんだ後のような、充足感と寂しさを覚えている。もう食べ終えてしまった……。バカンスはおわった。だけど心には思い出が残っている。また来年も来よう。そう思った」


 そこまで語って、「ふう」とドン・ブーリは深く息をついた。


「ラーメン……。わかったつもりではいたが、まだ僕はわかっていなかったようだ。前回参加者シャルロッテよ」

「はい。なんですか?」

「残念だが、僕はしばらく来れない。いや、わかる。悲しいとは思うが、止めてくれる必要はないよ。なぜならこの別れは、ふふ、いや、やめておこう。皆まで言うのは無粋というものだね。次は大会で会おう」


 テーブルに二枚の銀貨を置いて、ドン・ブーリは店を出て行った。


「二度と来なくてもいいんだけど……」


 シャルさんがぼやいた。


「あはは」


 私は笑って受け流した。

 なぜならば。

 シャルさんの気持ちはわかるけど……。

 他人事として関わる分には、とても楽しいので。


 と、その時だった。


「ねえ、クウ」


 唐突にユイナちゃんが背中から声をかけてきた。


 ラーメン勝負の最中、ユイナちゃんは無言で、ずっとニコニコとしたまま姿勢を正して椅子に座っていた。

 なので、それは本当に唐突に感じた。


 振り向いて、私はビクリとした。

 長い付き合いだからわかる。

 間違いない。

 ユイナちゃんの顔は、表面だけは明るいものだったけど……。

 実際には限りなく不機嫌なものだった。

 特に目が怖い。

 一ミリたりとも笑っていないどころか、変装用のメガネの向こうで爆発寸前みたいに光の力が渦巻いてしまっている。


「ど、どうしたの、ユイナちゃん……?」

「もうおわったよね? 勝負は」

「う、うん……。そうだね……」

「じゃあ、帰って?」

「え。あ。うん。じゃあ、帰ろうか……。三人でうちに」

「二人で、ね」

「えっと」


 それはどういう……。


「実はね、さっきのラーメンは私とシャルさんで作ったの。だからこれから食通どもの感想を受けて反省会とかするから」


 ども、という呼び方に、並々ならぬ敵意を感じるのは……。

 きっと気のせいではないだろう。


「でもさ、反省会をするほどの指摘はあった?」

「ねえ、クウ」

「う、うん……。なぁに?」

「きっと朝までかかるから、私のことは気にしなくてもいいよ」

「え。それってまさか」


 ちなみにボンバーは今、律儀にラーメンの丼を片付けている。

 本当に意外だけど、実は真面目なヤツではある。

 とはいえ、だ。

 シャルさんもいるとはいえ、ボンバーとひとつ屋根の下で一夜は……。


「また明日ね」


 ユイがますますニッコリとする。

 まずい!

 私にはわかる。

 笑顔の裏側で怒りが広がった!

 感情を押さえきれなくて、ユイの光の力は溢れる寸前だ!

 大爆発になる!


「じゃ、じゃあ! また明日ねー! 朝には工房に来るんだよー! 明日は学院祭の遊園会に出るんだからねー! ほらナオ行くよ!」

「待った。私にも用が」

「いいから! 今日のところはおしまい! シャルさんもまたねー! ユイナちゃんのことよろしくお願いしますー!」


 ナオの背中を強引に押して、私は逃げるようにお店から出た。














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― 新着の感想 ―
くうちゃんが察するくらいの怒りw
リトさんが帰ってきたら大騒ぎになる予感がするけど、今大精霊2人を相手にして大変でしょうからまだまだ帰っては来ないでしょうかね
ユイさん本気なんだwww
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