持たざる者
持たざる者(何がとは言わない)
「いい加減にしろちゅーてんねん!」
私は今怒っていた。
珠洲がポテチをむさぼりながらゲームをしていた。部屋もごっちゃに散らかっていて、毎回毎回私二掃除させやがって……!
掃除するたびに怒りを覚えてるの知らないのか?
「毎度毎度いい加減にしろ! 私が掃除するからって汚していいわけじゃないんだぞ! 何このありさま。なんで一週間前に掃除したときより汚くなってんの! ポテチの食べかす! 袋! ゴミ屋敷か!」
「い、いや、片付けよう片付けようと思っててもつい後回しに……」
「うるさいわ! いいわけなんざいらない! 百歩譲って片付けてないのはいいとしても、勉強はどうした! 勉強に忙しくて片付ける暇がなかったのなら許してたわ!」
「あ、べ、勉強の……」
「遅いゆうてんねん!」
今日という今日は絶対に許さない。
いや、本当に怒ったぞ。なんで毎回毎回自分で片付けようとはしないんだ。私は珠洲の家政婦じゃないんだぞ。
「もう本当にゲーム禁止にされても知らないからね。せっかく見てあげてたのにそこまでやる気ないならもういいよ……。帰るわ」
私は珠洲の家を後にした。
珠洲に勉強を教えるという約束もなくなってしまった。暇になったなぁ。そう思って家に帰ると誰かお客さんがいたのだった。
金髪に髪を染めている……。え、なに。不良? 怖いんですけど……。
「あら、美咲。お帰り」
「た、ただいま……」
金髪の不良っぽい子と茶髪の女性。
え、誰。
「……誰?」
「あ、私は乾 明子といいます。娘の陽菜です」
「……うす」
と、金髪の不良さんが会釈してきたので返す。
「あ、美咲、陽菜ちゃんお風呂行きたいらしいから銭湯に案内してあげなさい」
「わかった」
どういう関係性なんだろう。
そういった疑問は残るけど近くにある銭湯に案内することにした。目つきも悪い不良の彼女は黙って私の後ろをついてくる。
ちょっと怖い。
そして、銭湯について、おばちゃんに金を払って中に入っていく。
上を脱いだ。
「……」
隣の陽菜ちゃんも脱いだ。
おっぱいがでかい。私が見ていることに気が付いたのか、「ふふん」と鼻で笑ってきた。バカにしてんのか? 喧嘩売ってんなら良い値で買ってやろうか?
すると、恥ずかしいのか自分の胸を手で隠した。
「そ、その……ごめんなさい。怖いです」
どうやら殺気が漏れていたらしい。
しょうがないね、巨乳は敵だから。
「そ、その……美咲、さん。目が……」
「なに?」
「獲物を狩るって言うか……殺人鬼の目です……。きょ、巨乳に親でも殺されたんですか……?」
「私の精神が殺されている。私は成長しないのに周りだけ成長しやがって……! 呪い? 呪いなの?」
なんで私の周りには貧乳がいないんだ! お母さんだってあるし珠洲や美鈴にもあるんだぞ!
それなのに私だけぺたーんだ。舐めてんの?
「そ、そうですか……。わ、私は逆に貧乳になりたいんです……」
「持つ者はそういうけどなぁ! おっぱいは女の特徴なんだよ! 私だって女の子なんだよ! そりゃおっぱいを少しくらいはエロい目で見られたいじゃん!」
たしかにじろじろ見られるのは嫌だ。けれどね? やっぱり欲しいんだよ。羨ましいんだよ。モデルみたいにナイスバディになりたいんだよ。
「きょ、巨乳も大変ですよ? 肩凝るし、太って見えるし……」
「うるさいうるさいうるさい! 持つ者自慢はいい!」
「自慢じゃないんですけど……。そ、その、入りませんか? す、少し注目浴びてますし……」
「はっ」
つ、ついここが人前だと忘れていた。
おのれ巨乳め……。恥をかかせやがって……!
完全なるとばっちりである。




