SS:【女将さん視点】⑤
あたし達が抜けた分を、新米ながら必死に動いてリカバーしようとしてくれている、その頼もしい姿に気持ちが和む。本当にいい子が入ってくれて良かった。
「カーラ、ちょっとおいで!」
「はーい!」
カーラが急ぎ足でやってくるとトレードマークのポニーテールがポンポン弾んで可愛らしい。「お呼びですか?」と笑う顔も元気いっぱいだ。
常連客達が「クリスちゃんの笑顔には癒やされるし、カーラちゃんからは元気を貰える」なんて言ってたのがよく分かる。
「クリス、紹介してやっちゃくれないか?」
「はい!」
オーズもコーティもクリスが連れてきてくれた縁だ。クリスから紹介して貰った方がいい。
「オーズさん、コーティ様、彼女は私の学園での友人で、先日からこのテールズで毎日働いてくれているんです」
「へえ、クリスの友達か! 元気の良さそうな娘じゃねえか」
「では、クリスの身分なども……?」
「はい、もちろん知っています。カーラさん、この方がオーズさん。西区の民生官で、武器屋さんでもあるの」
「カーラです! よろしくお願いします!」
うちの常連たちでも一目置く強面のオーズにも怯えることなく、カーラは朗らかに挨拶する。本当に頼もしい。
「そしてこちらがコーティ様。市井官で、とても頼りになる方よ」
「コーティ様ってこの前クーレイに行ったときの……?」
「ええ、よくご存じですね。コーティです、これからよろしくお願いします」
「よっ、よろしくお願いします!」
バッと頭を下げて、またバッと頭を上げたカーラは、そのまま石になったかのように固まった。
微笑んで右手を差し出すコーティに見惚れたまま、だんだんと顔が赤くなっていく。
おや。
おやおや、これは。
カーラのあまりに可愛い反応に、これは、と思ってクリスを見たらクリスとばっちり目があう。あたし達はこっそりと二人で笑い合って目配せした。
そうだよねぇ、笑った途端にさっきまでの冷たそうな印象が消えて、柔らかくて優しい印象になったもんねぇ。それにこれだけの男前だ、一目惚れしたって仕方ない。
「あ、じゃあ私、お仕事に戻りますね。お客様も待ってるし」
気をきかせたクリスがそう言った瞬間、魔法がとけたように動き出したカーラが、慌ててコーティの手をとり握手する。そして分かりやすくさらに顔を赤くしてすぐに手を離した。
「私も戻らなきゃ」
「せっかくだからカーラさんはもう少し話して来て」
「え、で、でも」
「そうだねぇ、クリスがいないときに二人のお役に立てるかも知れないしねぇ」
「おっ、そりゃあいい」
真っ赤な頬のままあわあわするカーラに、さりげなく援護射撃しておく。
市井官ってことはコーティは多分貴族なんだろうけど、好きになるくらいは自由だろう。
「助かりますね」
そう言ってまた微笑むコーティを見上げて、カーラからはもう湯気がでそうだ。
可愛いねぇ。
こっちまで気持ちが浮き立つみたいだよ。
クリスも幸せになったんだ。今度はこの子の幸せそうな顔を見るのもいいかもしれない。
終
これにてコミック②巻発売記念ssも完結です。
読んでいただきありがとうございました♪
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