1.非情
天気予報は後二日ほど雨が続くと言っている。こいつらは晴れてほしいと思うとぴったり予報を当てて、二日雨を降らしてくるから困る。
「んじゃ、行って来ます」
透明なビニル傘で雨を防ぎながら、雨が降る以外に違いの見当たらない通学路を歩く。
「あ、そういえば今日テストじゃなかったっけか?」
昨日まったくといっていいほど勉強していないが大丈夫だろうか……。その点に関しては掛川も一緒なのだが。
「まぁ、それなりにがんばるか。結果は翌日発表するとか教師陣もがんばりすぎやしないか?」
そんなこだわりでもあるのだろうか?
教室では掛川が倒れていた。
「勉強するの忘れてたな」
「國定も一緒か……一緒に死のう」
「誰が死ぬか。僕はお前より百個上の位に乗ろう」
「俺を馬鹿にしてないか?」
「馬鹿じゃないのか?」
「図星過ぎて反論できないんだから困るよ……」
雨の日というのは憂鬱だ。さらに今はもっと憂鬱だ。
「今から悪あがきでもするかな」
そういいながら掛川は教科書を取り出す。
一時間目の予鈴が鳴る。テストか、一時間目が数学、二時間目が物理、三時間目が英語、四時間目が情報だったよな。まぁ、なんだかんだ退院してから勉強にも力入れてるし、すごい簡単なんだけどさ、なんて掛川に言ったらどんな反応するだろうか。
一時間目の終わりのチャイムが鳴り、二時間目、三時間目、そしてテストが終わった。
「はぁ、終わった……」
「The Endだな、掛川」
「finishedと言いたい」
しっかりと過去形にするところが、掛川らしい。
雨なので、今日は昼飯を掛川ほか何人かと食っている。
「新聞屋はどうよ、今回」
新聞屋、新聞委員だか新聞同好会に属してる望月 澪だ。名前は覚えた。男みたいな口調だが、女だ。
「その呼び方どうにかならないのか?」
「無理だ」
見事なまでの即答だった。
「加法定理、倍角の公式とかをさくっと忘れて無事死亡だよ」
「もう何だよそれ……」
「お前の頭が何だよそれ」
「そんなことより、英語のあれ、『何々していたものだった』ってあれ何?」
「used toだろうが」
「オウノー! とか言いたいけど、もはやピンとこないや」
「お前それで大丈夫なのかよ」
「大丈夫、学年でも真ん中ぐらいに位置してるから」
ほかのやつらが掛川より馬鹿だと思うと酷く滑稽だ。
「國定君、だっけ。話変わるけどこのクラスどうよ?」
新聞屋がこちらへと話を向ける。
「どう? まぁ、居心地のいいクラスだよな。いくら訳あるとしたって、留年したやつをここまで構ってくれるなんてそうそうないからな。まぁ、留年生が余程インパクトあるやつだとしたら別だけど」
「ふぅん」
聞いてきたのに興味なさそうに鼻を鳴らす。
「おぅし、学級新聞的なの作って、初号は國定君のプロフィール決定だね」
……は?
「お前去年も同じこと言ってなかったか? 全員のプロフィール乗せるって。いや、実現しなかったじゃねぇか」
「ノーノーノー」
指を振る新聞屋。
「今回は先生が許してくれたのだー」
「逆に言えば去年は許してくれなかったってことなのか?」
「……國定君はグサッと心をえぐるような言葉を連続するねぇ」
シュンとしなる新聞屋。
そんな時、昼休みの終わりの予鈴が鳴る。次はホームルームか。




