3.秘情
学生会帰り際。ある人に声をかけられた。確か、総務の泉とか言う人だったかな。同学年だったはずなのに見たことすらなかった。
「ねぇ、國定君、って言ったっけ? 私が一年のとき見たことあるけど、留年生とか?」
「まぁそうだが、馬鹿じゃないってことだけは付け加えたい」
「あぁ、やっぱ。女の子なのに男のかっこうして変だな、と思ってたら男だったのね」
稀にだが、僕は女に間違われる。原因は不明なのがだが、髪が少し長いのが原因かもしれない。といっても女の人のショートがあるかないかだけど。
「で、何か用?」
「単純にそれが気になっただけだけど、後輩から溜め口なのは悲しいわね」
「どうしましたか? 私に御用がございますか? 愛理先輩」
泉はものすごい顔をする。その表情には、引きと呆れとかすかな戸惑いすら見えていた。ものすごく勝ち誇った。初対面の相手にだが。
「……やっぱ普通でお願い。ってか私の名前覚えてるんだね」
「僕の自己紹介の前だったからな」
「それだけかぁ。寂しいなぁ。じゃ、私はここら辺で」
「あいよ。じゃあな」
……一体なんだったんだ? 僕は帰りの用意をしていた小春に近づく。
「なぁ小春、少しいいか?」
「かまわないけど、質問? も、もしかして今頃になって学生会辞退とか言っちゃう!?」
「いわねぇよ。いや二つ、できれば三つ聞きたいことがあるんだけどさ」
「ほ、質問ならどんどん来ていいよ」
どれからにしよう。まずは鷲のことについてかな。
「何で鷲が企画なんて大役についてんだ? 企画が大役なのかはよくはわからないけど、多分結構大変そうなきもするんだけど」
「しらないかもしれないけど、鷲ちゃんは成績学年トップだよ。……國定君に抜かされるかもしれないけどね。國定君、なんだかんだ勉強がんばってるもんね」
う、自分の努力をよりによって小春に見抜かれるか。困るな。
「後、企画もののイベントなんて大体上の人たちががんばるもの。そんな企画って言ったって大変じゃないから」
「そっか」
それにしても鷲は頭がいいのか。意外っちゃ意外だし、見た目どおりとも思えるな。
「次は総務の泉 愛莉とか言うやつは、あいつは一体なんだ?」
「不思議な娘だよね。私と仲がいいけど、結構ひとをいじめるのが好きなドS思考の持ち主だってことを抜けば、すごく頼もしいひとだよ」
「欠点というのかは人次第だが、絶対的な欠点だな」
確かに操るのは大変そうだが。
「で、最後は、なぜ僕がいきなり会計なんだ。書記なんだ。てか、なんで書記と会計の面倒くさそうなのミックスしちゃった」
「それは先輩のアイデア。書記も会計もあまり仕事が無いんだよ。上でも案外そうなんだって。で、こっちでも分けるほど大層、って言うとなんか違うかな。分けるほど仕事量が多くないから。で、ここで私が一目置いてる國定君にまかせちゃおうと」
「とんだ買い被りだな」
書記も会計も得意名目には入ってないからな。やったことも無いけど。
「買い被りじゃないよぉ。國定君はすごいと思う。本当に」
「根拠は?」
「あの時が一番感じたかな。二月、私が國定君の家に入ったとき。行く理由はさ、帰宅中に國定君が風船取ってるの見たんだ。木元に誰もいないから、何でとってるのかはすぐにはわからなかったけどさ、國定君取った後鉄棒にくくりつけて紙はさんであったじゃん」
思い出した。というか、思い出さなくても割りと記憶には新しい。そうか、だから僕の家に来たのか。
「その話か……」
やめてくれ、そういう願いをこめる。その願いを受け取ったのか、話を止める。
「一年前の軽口言ってる國定君とは変わったのかな。それとも、私と同じなんて言ったら失礼かもしれないけど、言葉で自分を固めてる人なのかなって。でも、私と違って固める中身の質が違うけど」
最初は何の話かはわからなかった。しかし、彼女の声色も、表情もいつもと違う凛と澄まし、表情豊かなロボットみたいだった。まるで、この話するためだけにインプットされたように……。
「ごめんね、変な話しちゃって。もう質問は終わり?」
「え? うん、あぁ。邪魔しちゃって悪いな。じゃあな」
「うん、じゃあね」
手を振りながら帰る彼女は、いつもの喜々に富んだ表情に戻っていた。




