第六幕:飢えの前に立つもの
◆ 王都の外れ
石畳が途切れた先。
そこには、整備されていない区画が広がっていた。
「……ここ、同じ王都か?」
リナが呟く。
そこには“市場の外側”があった。
つまり――
富の外。
◆ 飢えの現実
小さな手が伸びる。
「……食べ物、ありますか……?」
声はかすれていた。
骨ばった腕。
薄い衣服。
明らかに栄養が足りていない。
孤児たちだった。
「またか……」
ミアが顔を歪める。
◆ 雑草を出す
俺は袋を開ける。
中には乾燥させた雑草。
焼き草パンの素材。
軽く加工した保存食。
「これを配る」
「……大丈夫なの?」
リナが聞く。
「食えるようにしたやつだ」
「味じゃなくて、生存用だな」
◆ 最初の一口
孤児の一人が受け取る。
恐る恐る口に入れる。
噛む。
数秒。
「……あったかい」
小さな声。
次の瞬間――
「もっと……」
◆ 飢えが消える音
周囲がざわつく。
「ほんとに食えるのか?」
「ただの草じゃないのか?」
「毒じゃないのか?」
だが誰も倒れない。
むしろ――
顔色が少し戻っていく。
◆ ミアの変化
「これ……すごい」
ミアが呟く。
「“助かってる”」
ただそれだけで、声が震えていた。
◆ リナの視点
「効率は悪いわね」
冷静な声。
「でも」
「“意味は最大級”」
◆ 群れになる孤児たち
「……これ、毎日もらえる?」
「どこで手に入るの?」
「ここにいればいいの?」
質問が増える。
それは“依存”じゃない。
生存への回帰だった。
◆ ひとつのルールが生まれる
俺は言う。
「ここでは盗むな」
「並べ」
「分ける」
それだけ。
だが、それで十分だった。
◆ 雑草の意味が変わる
さっきまで“商品”だったものが変わる。
今は――
食料
救済
そして秩序
◆ リナの独白
「ねえ」
「これってさ」
「商売じゃないわよね」
「当たり前だろ」
「じゃあ何?」
俺は少し考える。
「……生存だな」
◆ ミアの答え
「じゃあ私はここ守る」
「看板娘、まだ続けるの?」
「ううん」
「今度は“配る人”」
◆ 静かな転換点
王都の外れ。
誰も見ない場所。
だがここで初めて――
「飢えが減った」




