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芯が折れても許せねえ言葉

合宿から帰ってきたヒロトは、笑顔で母親に迎えられたようだ。一階から二人の笑い声が聞こえた。  


部屋に戻ってきた受験生は、日焼けしていつもより健康的に見えた。何の屈託もなく日焼けした顔をして笑うコイツを見ていると、何だかムカついて仕方なかった。


「合宿でさあ、『日本代表が大人になるまで』っていうテーマでレポートを書いて、二等をもらえたよ!コーチには『口だけは達者だからな』って言われてムカついたけど」


こっちのセリフだよ。ヒロトは、蒸し暑っ!と言いエアコンを付けた。


「ピッさん、ずっと暑かったでしょ。ひょっとして寂しかった?」


グワングワンと音がして、冷たい空気で部屋が満ちていく。


「何で黙ってるの?」


ヒロトは不思議そうに俺を見る。


「まあ、レポートの内容を話すよ。僕が書いたテーマは『全てをなげうってキャリアを築け!』恋人と別れてでも海外のチームに挑戦した森崎晴人選手は知ってる?その人の凄さについて書いたんだ」


 何でコイツ、そんなもん書けるんだ、バカ。


「それに比べて『妻に苦労かけたくないし、子供もまだ幼稚園だから』って海外チームの勧誘を断った小川孝宏選手は残念だって」


俺の芯の部分が、熱持っていくのが分かる。「父兄の人には『分かってないなあ、ヒロちゃんは』っていう人もいたんだよね。何でだろ?何でだと思う?」


「それが分かんなきゃ、書けねえよ」


「え?」


「お前みてえな奴に人の心をとっ捕まえて感動させる小説なんか書けねえっつてんだよ!」


ヒロトの顔がすっと青ざめた。


「お前に、何が分かるんだよ!」


「うるせえ、黙れ!」


ヒロトは俺を掴んで折ろうとした。勝手にしろと思って黙っていると、ギリギリで思いとどまったらしく、オレを放り投げた。前みたいに先端の芯が折れて、死ぬほど痛かったけど、必死の思いで声を出すのをこらえた。

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