4 うりませんよ(怒)
「おはよう、ふあ」
「おはよー」
「千歳さん、チグリスさんと同じ布団で寝てますね」
「チグリス、ひんやりしてるから」
「見た目は暖かそうだけど冷たいから寝やすいのかもしれませんね」
「何を飲む…?」
「ミルクちょうだい、冷たいやーつ」
「私は紅茶を温かいので」
懐記、千眼、ラウラスは朝食の支度をしており、詠斗、率、綴、晴海、ナイル、ラジカ、ニアは起き出して千眼に飲み物を淹れて貰う。
大河、千歳、チグリスはまだ気持ち良さそうに寝ている、何故か千歳とチグリスは同じ布団だが互いに気にせずに寝ていた。
「俺は《ガルディア》のポップコーンの手伝いにいくよー」
「僕は《トイタナ》のお店の材料の手配をユナイドさんの所でします」
「俺も行くよ」
「店の手伝いしたら、孤児院でアイス作る!」
「私は千歳さんの服を貰って《シーソル》という街で直して貰おうと思います、テトラさんも忙しそうなので知り合いに依頼します」
「それ、僕も行って良いですか?実は千歳さんのスーツ気になっていたので」
「ええ、是非」
詠斗とニアは《ガルディア》へ晴海は《トイタナ》の孤児院に、率とジラは《クイナト》のユナイドの元へ綴、ラジカは《シーソル》へ、懐記、ラウラス、ナイル、千眼は食事作りとカジノの建物造りをする事にきまった。
「朝はおにぎり、卵焼きと魚に味噌汁…さいこー」
「てんむす…おいしい!」
「やあ、おはよう。夜にチグリス君の布団に入ってしまったね」
『おはようございます』
「何を飲む…?」
「そうだね、まずは水を貰おうかな」
コップに千眼が冷えた水を入れてくれる、空いている席に千歳が座って水をゆっくり飲んで朝食にありつく。
「はぁ、おいしいねぇ。朝はいつもミネラルウォーターに近くのカフェのモーニングセット(1500円)だったからこういうゆっくりとした和食は良い」
「そ、で味噌汁は?おかわりする?」
「もちろん」
懐記から味噌汁のお代わりを貰い、ラジカと綴からスーツの話しをされ快く快諾する。
「僕もネクタイは幾つか欲しいな、ついでにオーダーして貰える?柄に拘りはないから」
「はい、構いませんよ」
「今日は挨拶回りをしたいから今度に行く時に僕もオーダーしようか…」
「《シーソル》は布や縫製の市場がありますから、今度皆さんで行きましょう。面白いですよ」
「次の店の休みに行こうよ!」
それを聞いた詠斗が言えば皆同意する、テトラも連れて行こうと決めて、各自の行動に移った。
「おはよう、今日もよろしくね」
「僕は千歳と言います。詠斗君達と同じ故郷から来ました。よろしくお願いします」
「お、おう!俺はランダだ!早速だが畑に植えた最初の野菜がもう実がなって数日で収穫可能だ!」
「やったね!収穫したら収納袋に入れてまた植えよう!」
「ああ!じゃ俺らは畑行くわ、後で教室に連れて行ってくれ!」
「オッケー」
千歳を見たランダが貴族かと狼狽えたがそうではない事に安堵し調子を取り戻す、ニアとルオとネオも畑に向かう。
千歳の佇まいは何処か気品があり市民という雰囲気も感じさせないが詠斗の仲間なら何も気にする必要はない。
「アシューは今日も来るの?」
「はい!この子…ファトが気になるので、大きい子にはアリルと名付けました」
「良い名前を貰ったねファト君、よろしくね」
今日のポップコーンの販売はアシューと同年代の生年と中年女性が2名、皆で働いた面子なので問題は無く、千歳が小さなホーライルホーラスのファトに挨拶するとコクリと頭を下げた。
「それじゃ、出発!」
「初めまして、千歳と言います。詠斗君達から話しは聞いています。フォークナーさんよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。早速噂になっておりますよ」
ファトが引いた移動販売車の前には人が集まりこちらを見ている、既に列が生まれていた。
「わ、すご」
「列は僕に任せて準備をするといいよ」
『はい!』
千歳が優しい笑みを浮かべ列を形成し、詠斗達はテキパキと準備を始めポップコーンを作っていった。
「おい、その食べ物とその馬を売れ」
そろそろ行列を締め切り看板でも出そうかとした所に行列を1人の男が割り込み横柄な態度でファトを指差す。
「ポップコーンは列の最後尾に並んで下さい、この子は売り物では無いです」
千歳がその男の前に立つ、男よりも頭1つ分以上高い千歳に一瞬怯むが咳払いをし更に横柄な態度でファトを指差す、アシューは後ろで震えて、詠斗は千歳を見守り何かあればすぐに動けるようにしている。
「その馬と卑しい庶民の食べ物を私の主人が所望している、売れ、これは頼みではなく命令だぞ」
騒ぎを聞きつけフォークナーが青ざめた表情で駆け寄ろうとするのを千歳が片手で制した。
「お断りします。何処の何方かは知りませんし、卑しいと言う物を貴方の主人に食べて頂かなくて結構。他のお客様の迷惑です、お引き取りを」
「おい!貴様!私の主人はダクラン家の当初ドレイフ様だぞ!ご命令に背く気か!《ガルディア》の五家の東だぞ!敵に回せばこの街にはいられんぞ!」
千歳は目の前の顔を真っ赤にし唾吐く男を眺め愚かだと思った、軽々しく千歳の前で主人の名を騙ったのだ《ガルディア》五家…千歳は後で知識を拾う事にし引き取り願う事にした。
「まだ今ならその馬とその食べ物を売れば許してやる、その馬は100,000ログで買ってやろう」
これには詠斗も頭に来た、だが千歳は涼しげな表情を浮かべだ。
「うりませんよ、お帰り下さい」
「なっ、どうなっても知らんぞ」
「それは楽しみです、お帰り下さい。他のお客様の迷惑です」
「貴様!覚えておれ」
「はい、さようなら」
千歳が笑顔で手を振り追い返す、客やフォークナーは青ざめながらも走り去る男と千歳たちを交互に見ながら拍手をまばらに贈った。
「カッコいい!千歳さん!」
「ふふ、おや?怖い思いをさせたね。さ、これで涙を拭くと良い」
震えながら涙をポロポロ流すアシューに千歳が懐からハンカチを差し出して涙を拭い、ハンカチを握らせた。
「ふ…ぅう…あ、ありがとうございます…ひっく、ファトが連れて行かれるかもって…貴族の…命令は…絶対だから…」
「ふぅん」
「チトセさん…不味いかもしれません」
フォークナーの顔色も良くはない、貴族…だからなんだというのか、千歳は1つ考えが浮かびスマホを取り出す。
「詠斗君、1度皆を集めたい」
「はい!」
《ガルディア》の貧民街にて、皆を集める事に決めた。
千歳は今、結構怒っていた…。




