1 有守 晴海
「なんで!あともう少しで!アイツに!」
宇宙空間を滑るように落下していく異常事態も感情の殺意が上回る、片手に握ったままの包丁、そしてこの空間の終わりの先、目が痛くなる程の白い空間に滑り落ちた。
「ようこそ我々の世界へそして《神の庭》へ…我々の救世主たる異界人よ…」
晴海の目の前には13名の白い衣装に身を包んだ人、そして彼らの背丈ほどの球体がゆっくりと自転していた。
「どうして俺の邪魔をしたんだよ!」
「…それはすまない…だがこちらにも事情があるんだ」
「そして来てくれた事に礼を…」
内心神々も子供来ちゃったよーと焦りながらも務めて平静を装う、小さい小柄な痩せた少年、だがもう神々も引けなかった。
「ふむ、まず元の世界には君は戻れん」
「アイツを殺す…」
「…貴方の手で命を奪うことはもう出来ませんが他の方法でなら命を奪う事が出来ます。まず、我々の話しを聞いて頂けますか?」
「……」
「…では話します、この世界は《アタラクシア》という世界ここは我々…神の存在する《神の庭》と呼ばれる場所です。そしてこの《アタラクシア》は病んでいます、それを治癒するには召喚の際に使われるエネルギーでのみ治癒が可能です。貴方の召喚で5人目…治癒完了まであと3名…計8名の召喚を持って完了となります…」
晴海は下を俯き包丁を握り締めたまま話しを聞いている、神々はこの少年が人を殺める前にこの世界に召喚出来て良かったと思った、本来は良い子なのだろう事情は誰にだってある。
「我々は貴方に誠意と感謝を込めて様々なものを用意した」
「まず肉体、不老であり不死。魔法、スキル、善行ポイントによる恩恵…これが我々の誠意と感謝を形にした物です」
「不老?年取らないって事?」
「はい、不死でもあり死ぬこともありません」
晴海の顔が上がるあどけない幼い顔立ち、瑞々しい肌と桜色の唇可愛らしい顔に疲労と翳りが見え隠れしている。
「そう…」
「では、次の説明をさせて貰う。ステータスオープンと心の中で唱えるか声に出してみてくれ」
「……」
有守 晴海 : 不老不死 肉体年齢 14歳 与える者
所持魔法
水魔法 雪魔法 風魔法 紙魔法 浄化魔法 転移魔法
スキル
状態異常無効 無限収納(時間停止) ステータス隠蔽 攻撃無効※ アイテム回収 通知機能
固有スキル
付与(紙を媒体として魔法を付与し 誰でも他者の魔法を使用できる※魔法にっては付与できない場合もある)
「ふむ、ユニークな魔法そしてスキルだな。ではステータス隠蔽を押してみて欲しい」
「……」
有守 晴海 : 14歳
所持魔法
水魔法
「ステータスはこのままだと人に見られた場合面倒なことになる、目立たない方が良い。次の善行ポイントは、この世界に来てくれた事への我々の感謝と誠意だ」
善行ポイント
10,000pt
現在交換可能
魔法
水魔法(水弾:50pt) 雪魔法(雪生成:50pt)
紙魔法(紙生成:50pt) 風魔法(風弾:50pt)
浄化魔法(自動清掃:300pt)
スキル
鑑定:500pt 無限収納(ウィンドウ表示:300pt)
自動マッピング:300pt
「善行ポイントは我々の依頼を受けた場合や我々が善いと思った場合付与されるポイントなのです、様々な物と交換出来たり増えたりもしますので時々みて欲しいなのです」
「……」
「次は魔法だ、まず頭の中で水をイメージして欲しい」
「出た」
手から水が溢れて床に吸収され何も残らない、晴海は特に感慨も無く受け入れた。
「ふむ、魔法は様々な応用が効く自分なりの魔法の可能性を見い出して欲しい。君の魔法は我々の想像を超える可能性を持っている」
「……」
「次は収納です、物体に手をあて収納を念じる。出す時は頭にイメージすればその物体が出て来る。時間停止機能容量は無限です、但し生物は収納できません」
「……」
「ここからはこの先にの話しをします。《アタラクシア》へ行くか…それとも此処で14番目の神として過ごすか…此処で14番目の神になるなら我々は貴方を歓迎します」
「神…?嫌だ」
「…分かりました、では《アタラクシア》へ…」
「アイツは?アイツを!」
「どうする?どういう死に方を望む?君の存在は日本では徐々に存在が薄れやがて消えていく、その父親が君を忘れる前に手を下す事は出来る。君を召喚した我々は君に誠意を持って応えたい」
「あ…」
晴海は父親が嫌いだった、同じ大人になるのも嫌だった、大人にならなければあの場所以外行けないと思っていた、けど今は大人にならなくても良い、父親のいない世界にいる。
自由だ…少し心が軽い、望んだ場所が異世界だというだけの話しだ。
「いますぐ向こうの俺の存在を消して…アイツはどうでもいい…ここにいないんだ」
「分かりました…他に何かありますか?」
「…ないよ」
「では次は今いる異界人…日本人4名は《不毛の地》と呼ばれる場所にいます。まずここに向かう事を勧めます。他の場所でも良いのですが…この世界は治安は良くはありません」
「いいよ、ここで」
「わかりました、最後にこの世界で生きていく為の知識と知恵を与えます」
晴海の額に神が指を充てる、小さな淡い光が指先に生まれ吸い込まれていく。
「これで終わりです」
「分かった」
「ここに手を伸ばせば《不毛の地》に行く事が出来ます」
「うん」
晴海が球体に手を伸ばす手前で止めて、神々を振り返る。
「また会える?」
「神は出来ない約束はしない」
「でも、きっと…なのです」
「元気…楽しい…沢山…皆導いて…くれる」
顔も表情も読み取れないが皆ほほ笑んでくれているのが分かる、晴海は皆に向かって一礼した。
「ごめんなさい、色々教えてくれたのに…俺…」
「いえ、謝るのはこちらです。貴方はまだ子供なのです、大人に甘えられる歳でしょう…それなのにこちらへ喚んでしまった…。感謝と誠意を持って貴方のこれからに幸多き在らん事を…」
包丁を収納にしまい《不毛の地》に向かって手を差し出す、足元にここへ来た時と同じ宇宙のような空間が広がる。
『いってらっしゃい』
「…あ…いってきます」
いってらっしゃいなんて言葉、産まれて初めて言われた気がする。
晴海ははにかみ乍ら笑みを浮かべて手を振って滑り落ちていく、神々は《不毛の地》に晴海が無事に着くまでずっと見送っていた…。




