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悪魔の陰謀 後編

 勇気は一人歩いて家に帰るわけでもなくある場所に向かう。

 警察の黄色のテープで立ち入りが禁止されている一軒家。的場家である。

 あれから、数時間が経過しておりふらふらと街中を歩いて夜。なんとなく勇気はここに足を運んでいた。

 マスコミの車も警察車両も夜と言うことで一度仕事を打ち切ったようだった。

 勇気は周囲を確認して黄色のテープをくぐろうとしたところ誰かに肩を掴まれた。

 驚いてかたまる。


「何をする気?」

「久遠さん?」


 後ろに立っていたのは息を切らして汗を流す久遠雪菜の姿。

 街灯に移された彼女の疲れ切った表情を見て自分を必死に探して追いかけてきたのだとわかった。


「追いかけた来たのかよ」

「悪かったかしら?」

「俺はもう一人になりたいんだ。復讐はやめる」

「本当に?」


 勇気はその問いに答えを返すことはなく、的場家の扉に歩み寄りピッキングを行い簡単に中に乗り込んだ。

 それなりの裕福な家庭だったのだろう3LDKの洋間風内装の家。

 最初にリビングルームに入って見渡すとソファにテレビや机、各種棚などの小道具があってカジュアルスタイルのリビングでそれなりに綺麗だった。


「争ったのはここじゃないのか」

「ねぇ、ココになにしに来たの?」

「姉さんの無実の証明となる物を探しに来たんだ」

「え」

「現状、芽衣姉さんは疑われてる。だけど、現場で芽衣姉さんが犯人じゃないという物的証拠を探し出せれば警察だって姉さんが無実だって理解するはず」

「ちょっと、素人がそう簡単に何かを捜しあてられると思うの? 第一、警察がもう捜索を終えてるはずでしょ」

「やってみなきゃわからないだろう!」


 勇気はずかずかとダイニングに進んではいる。キッチンと隣接されたダイニングもまたカジュアルテイストの様式だった。しかし、事件現場を物語るようにあちこちに血が付着したり物が散乱しており、警察の証拠現場と言うマーカーがしっかりとされていた。

 マーカーを崩さずに机の上を触る。


「血だけだ」

「当たり前でしょ。それよりもむやみに指紋をつけるべきじゃないわよ。あなたも容疑者として睨まれてるのよ」

「それならそれでいい。芽衣姉さんが解放されるなら俺が代わりに犠牲になってもいいくらいだ」

「あなたねぇ……それで、芽衣先輩が喜ぶと思うの?」

「……だったら、どうしろってんだ?」


 冷めた様な声が彼から放たれた。

 それを聞くと雪菜はびくりと身体を震わせる。

 鋭い眼光が雪菜に向けられる。


「復讐を支援するとか言いながら結局、この事態を招いた。支援? 何が支援だ。久遠さんには感謝はするけどもうこれ以上は口出ししないでくれ。ろくに支援もできないならな」


 ひどく辛らつに突き放して勇気は額に手を添えて涙をこらえ上を見上げた。

 そこで、気づく。


「なんだこれ?」


 天井に不気味な文字が一つ書かれていた。模様のある天井でもそれだけはその模様とはどれもちがく例外だった。明らかに書き足されたもの。

 ふと、天井の周囲に何かキラキラしたものを見る。

 勇気は机の上に椅子を立てその椅子に足をかけて天井へ手を伸ばす。

 きらきらした物質をポケットに入れていたピンセットで採取する。


「これは……体毛?」


 上質な毛皮のようなきらきらと光る毛。

 窓から差し込む月明かりにわずかに反射する。


「その毛……」


 掲げた毛を見て雪菜が息を飲むように声に出す。


「どうした?」

「見覚えがあります。どこかで……そうです! それはケルベロス!」

「は?」

「だから、悪魔の使い魔の代表格と知れるケルベロスの毛よ!」

「んなのもどうして天井に?」

「ケルベロスは影を移動して上からの奇襲を生業とする生き物。だから……」


 その彼女の言葉を聞いてパッチ袋を取り出してその中に毛をしまいこんだ。

 科学捜査官でも事件現場の上はあまり気にも止めることはなかったようだった。

 人の争い事断定し体格から考えて上にまで何かが飛ぶとは考えもおよばなかったと見た勇気は椅子から降りて周囲を見渡してほっと息をついた。


「明日これを警察に届けよう。そうすれば、芽衣姉さんは解放される」

「で、でもこの場所に侵入したことが知られて捕まる恐れもあるわ」

「この証拠を突き出せば注意くらいで済むと思いたい。捕まったらその時はその時だ。俺はあいつをいじめたのには変わりない」

「やはりあなたに善意が残ってるのね」

「あ? なんの話だよ」

「いえ、なんでもないわ」


 勇気が首をかしげるそぶりをしてその彼を見ながら雪菜は眉間にしわを寄せながら考えこむのだった。


(今回の犯人は悪魔の仕業で間違いないわ。でも、じゃあ、一体その悪魔は誰なの?)

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