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悪魔の陰謀 前編

 事件のせいでグラウンドは使えなくなったために朝は体育館で緊急集会を開くこととなった。

 体育館も昨日までは黄色のテープが張られ使用が禁止にされていたが現場の調査は大方済んだとのことで解放されたのだ。

 調査はすんで解放されたというけれども実際のところはその事件に携わったであろうと警察側で勝手に憶測を立てている容疑者候補を確保したからにすぎない。

 現在はその容疑者候補の女性、黒野芽衣は○×警察署で事情聴取を受けている。

 彼女の人となりを知っている数多くの生徒たちは体育館でその彼女が捕まったことに対しての疑惑を口にして噂していた。

 本当に彼女が殺したのだろうか。彼女は優等生の的場良治と付き合っていたのか。

 いや、そもそも的場良治は優等生であったか。彼女は付き合ってる人などいなかったはず。

 そのようなどれが本当か分からない噂はどんどんと脚色化されていく。次第に彼女は実は悪女であったんだろうという噂まで出てくると勇気は体育館のその空気に吐き気と嫌悪感を催した。


「クソッたれが」


 勇気の心の内は激しくかき乱されている。まるでミキサーでぐるぐると腸内をかき乱されてるかのような気分で気持ち悪い。

 同時に腹痛まで起こり始める。

 そのたびに鮮明に嫌なことまで記憶を振替される。

 遠い小さい頃の記憶。両親を殺された時の出来事。情けなくクローゼットに隠れて両親が死ぬ光景をじっと見てるしかできなかった情けないあの時。

 ふと、その光景を考えてると悪なる所業を重ねるがごとく、先刻に話をされた『悪魔』についてのことが思い出された。


 ******


「悪魔?」

「ええ。私たちの天敵ともいえる存在よ」

「悪魔ってあの地獄にいる生き物のことだよな?」

「ええ。その認識で間違いない。彼らは人の罪悪を餌にして生きてる生き物よ。特に彼らは人間と取引を結ぶことで人間に悪意を植え付けさせて誘導するようにその人の願望をその人自身の手でかなえさせる。最後はその淀みきった魂を食らうためにその手で殺すのよ」

「殺すだって?」


 その言葉を聞いて先ほどの光景を目にした。だけど、もし的場が悪魔と取引してたというのならなぜ彼は勇気の復讐に抵抗をしなかったのか。

 それがよくわからない。


「矛盾してるんじゃないか? 悪魔がいたと仮定したとしてどうして的場を殺したことと悪魔がつながる? 契約していたというのか? それならなおのことおかしい。俺の復讐にそんな力をもってるんだとしたら抵抗できたはずだ」

「そこよ。悪魔は的場君を殺した要因。もしかしたら、第3者が悪魔を操って的場君を殺したのかもしれないわ」

「いやいや、なんで第3者が的場を殺すんだよ。第一、的場の家族まで殺されてる。なんの意味があって殺す?」

「それは警察の仕事よ。第3者が誰かは私にもわからないし動機も不明。だけど、あの残忍な殺害の仕方や警察の不穏な勘の良さは明らかに私のような怪物が絡んでるわ」

「警察の動きにもその悪魔ってのが絡んでるって言うのか? そんな馬鹿な。第一、なんで俺らを貶めるような行為を起こす? 何が目的なんだよ」

「たぶん、私」

「は?」


 よくわからない回答に頭を悩ませる。

 なぜ、彼女単体が狙われるのか。それに自分らが貶められる要因とどうかかわるというのだろうか。

 彼女だけを狙うのだとしたらわざわざ的場を殺したりその家族を殺したりなどせずともよいはずだろうという疑問した。

 今までの見てきた『堕天使』の力から想像するに『悪魔』にもsれなりの力があるはずであるのならばその力を使えば直接的に彼女を奇襲でもできそうなものである。

   

「さっき、悪魔は私たちの天敵と言ったわよね」


 彼女は疑問に対してまずそう言葉を切りだして『悪魔』と事件の関係についての説明を語りだした。


「ああ」

「あなたも聞いたことはあると思うけど聖書にも書いてある通りに私たち天使と悪魔は犬猿の仲。まぁ、私は堕天使だけど、それでも悪魔とは仲が悪いのよ。いわばライバル会社のようなもの」

「ライバル会社……」


 もっともわかりやすいたとえ話だった。

 会社同士のいざこざと言うのならば策をもって優秀な人材やその会社の人材を減らそうとするのもわかる。

 もしくは、その人材を消そうという行為もわからなくもない。

 でも、『力』があるのにあえてそう遠周りな行為をするのにもわけがあるのだろうか。


「私たちが人間の願望をかなえるのは私たち天使や悪魔、それに堕天使にとってはビジネスなのよ。そして、相手のビジネスを破壊させる工作にはどんな悪行も平気で行えるのが悪魔の存在ってわけ。悪魔たちは他者が死のうがお構いなし。特に今回、私と言う存在を的場君を殺してその犯人にでも仕立て上げようとかいう算段でしょうね。もしくはその契約者でも捕まれば私のビジネスは破たんすると思ってる」

「つまり、一人でも敵を減らすためにわざわざこんなひどいことをしたってだけなのか? でも、力があるのになんで?」

「それは彼らも人との契約を求めてる上に魂と悪意を餌にしてるからよ。彼らが今回的場良治を殺害したのは魂も一つの目的だったのでしょうね」


 ある書物で勇気も聞き及んだことはあった。

 悪魔は契約の証として人間の魂を奪い取ると。

 その魂は地獄の果てにて焼かれると聞いたこともある。

 それがどれだけおぞましく怖いことが想像するだけで身震いを起こしそうだ。

 このことで勇気はある価値観の変化が起きた。堕天使である彼女が相当なひどい奴だと思っていたが実際のところ彼女はまだ優しいと思えた。逆に悪魔のほうが卑劣なのだろう。


「――そういえば、あえて聞かないことにしてたんだけど天使と堕天使って何か違うのか? 悪魔は堕天使よりも悪い存在でわるいことはわかったし敵対同士だ。天使ともそれは一緒だけど堕天使と天使の間柄はどうなんだ?」

「天使と堕天使の間柄もよくはないわ。私も元は天使だったのよ」

「え?」

「はぁー、話をするとね天使がある悪い行いをしてしまうと堕ちてしまうのよ。これは人間と契約した時にその非道な行いをしてしまった結果でおこること。私は過去に過ちを犯して堕天した」

「過ちって?」

「過去に契約した相手を殺してしまったのよ」

「え」


 それ以上は怖くて聞けなかった。

 同時にこのまま彼女を信用してもいいのかと不安になった。

 彼女を信用していけばこのままでは自分も最後は殺されるのではないかと。

 でも、今までの経緯からそれはないと思いたかった。

 彼女が幾度となく自分らを手助けしたことや的場たちの傷を治療していた行為。

 でも、心に揺らぎは生じる。


「で、でも、私はかわったのよ! もう、あのようなことはしないと決めたの! だから、信じて!」


 そう訴えて弁明したが彼女にたいして思えてしまった疑惑は薄れることはなくなった。


「…………久遠さん、あなたを今後信用しても平気なのか? 俺は不安でしょうがない。第一、芽衣姉さんがあんたと契約しておかしくなった。おまけに捕まってしまったんだ。そして最後は悪魔があんたのせいでからんでると来た。俺はあんたを信用していいのか不安だよ。しばらくはあんたと距離を置きたい」


 そう言って勇気は彼女の前から去った。


 ******


 記憶を振り返って下唇を噛みながら前の列にいる彼女の背中を見つめ続けた。

 壇上では校長先生が黙祷の挨拶を行い全員が黙とうささげる。

 嫌なやつであったが彼にも生きる資格はあっただろう。


「芽衣姉さん大丈夫だろうか」


 そんなことをついぼやいてしまう。

 天井を見据えながら大仰にため息をついて息を呑んだ。

 それは驚いたことによる挙動。背筋を冷たい刃物にでもおしあてられたかのような恐怖を感じた。

 視線をさまよわせてその正体を探る。明らかにそれは誰かの視線によって起きた感覚だった。


「今のはなんだ?」


 不気味な感覚に気づけば鳥肌が立っていた。

 身体を抱きしめる様にしてにの腕を手でこする。

 寒さを紛らわせようとした。

 何かが太ももで揺れて思わず声を上げる。


「なんだ、携帯か」


 携帯のバイブが振動しただけだった。

 携帯を集会中にとりだして誰からの着信かを確認した。


「芽衣姉さん」


 メールで『迎えに来て』とメッセージだった。 

 声を抑えながら彼女の無事を確認する返信を送った。

 数秒後に『無事です』とのメールで安心した。

 彼女は刑務所行きにならずに済んだようだ。 


「えー、本日は学校内で事件の調査を行うため各自教室に戻り次第完全下校とします。速やかに帰宅するように」


 話をほとんど聞かずにいれば集会は終わりを迎えた。

 生徒の完全下校が伝えられる学年順で体育館からの退出をされて退出していく生徒。1年次の番がくると勇気もさっそく教室への移動を開始した。

 手早く教室に向かい下校準備をしようと決めていた勇気だったが――


「黒野勇気君、ちょっといいかしら?」


 クラス担任の飯倉先生に呼びとめられて足を止める。

 呼びとめられたことに対いして不安と疑問を思いながら彼女のもとにまで歩みを進めていく。

 不安を感じるのは警察がらみでなにかあるのではないかと言う後ろめたい気持ちがあるからだった。

 実際に彼をいたぶった証拠が出ないにしても何かあったのではないか。


「呼びとめてごめんなさい。ちょっと、あなたにお話しがあるの。生徒指導室までいいかしら?」

「えっと、姉を警察署まで迎えに行かないと行けなくて急いでるんですが」

「お母様は? そういうのは保護者の役目じゃないの?」

「えっと、母は病気で寝込んでいまして」

「そうなの。なら、そんな手間は取らせないわ。10分だけ時間を頂戴」

「10分だけなら」


 彼女の懇願に根負けした。

 10分だけならばす時間を取られる心配もない。

 メールでは芽衣が迎えに来てほしいという時間は11時だった。

 現在は10時であり『○×警察署』まで学校から徒歩で30分で行ける。

 ならばおおよそ30分は余裕が持てる。

 早めに行きたかったのはあくまで彼女を待たせたくないという勇気なりの気遣いのあらわれだ。

 用事を済ませてから行くのも悪くはないのかもしれなかった。


「なら、一緒に行きましょうか」


 飯倉先生が他の教師に体育館の戸締りおよび1-Aクラスの下校の挨拶を任せると勇気を伴って生徒指導室まで向かった。


 ******


 生徒指導室は殺風景な部屋だ。ただ、書類だなと面接ようの座席が設けられただけの部屋。

 対面するように飯倉先生と座ると彼女はまず謝罪の言葉を口にして頭を下げた。


「ごめんなさい」

「えっと、先生? 急に謝られても俺わからないんですけど」

「的場君のことよ」

「っ!」

「ある生徒に的場君とあなたのことを聞いたのよ。実は的場君はあなたをいじめてたって」

「だ、誰がそんなことを……」

「それは彼女の希望で名乗れないんだけどね」


 先生の口から出た『彼女』、その密告者は女性であることはわかるが勇気のいじめを知っていたのはクラスの連中だけである。つまりはクラスの誰か。


(まさか、久遠? いやいや、久遠がなんでそんなことをする必要があるんだ)


 勇気が聞き流してるとは知らずに先生はずっとしゃべっていた。

 今までの経緯や勇気の過去のことを交えたことに対しての謝罪や悔恨。


「実はね、この件を警察の人にも話をしたの。もし、あなたが彼を……そうなら、自首してほしい」

「なっ!」


 つまりはそう言うことだったようだった。

 先生はまず謝罪をしてから勇気に自首を促したかったことがうかがえた。

 ここにまで呼んだのはそう言うことだったのだ。


「ふざけないでください! 俺は彼を殺していない! 誰が殺したかも知らない! たしかに彼を恨んではいたけど殺しはしていないんだ!」

「じゃあ、誰か女の人と協力して……」

「いい加減にしてください! これ以上先生と話をしたくありません。さようなら」


 あまりに一方的に犯人と決め付けた物言いに腹を立て生徒指導室の扉に手をかけた。

 彼女はそんな勇気に必死で謝罪して呼びとめた。


「おねがいよ、話をしましょう。黒野君が殺していないことは信じる。先生信じます。なら、誰か心当たりがないか先生に話をして頂戴。そう、お姉さんのこととか」

「ふ、ふざけてるんですか? 今度は俺の姉を疑ってるんですか?」


 その時に勘付いた。

 警察は手をこまねいて教師に頼み込んだのではないかと。


「そういうことですか。先生、警察に頼まれたんですね。芽衣姉さんがまともな事情聴取ができなかったlからあまりにも情報が少ないから事件の概要知ってそうな生徒から情報を聞きださせろみたいなことを。だったら、話は簡単です。俺は何も知りませんし俺も姉も事件には全く関与していません」


 一方的にそう告げてドアを締める。

 そのまま教室に向かい走る。

 教室ではまだ久遠が残っていた。


「怖い顔をしてどうかしたの?」

「教師にまで疑われてすべて終わりだよ。あんたと契約しなきゃよかった」


 八つ当たり気味に彼女の横をすり抜けてバッグを手にとりそのまま○×警察署にまで向かった。

 久遠は去って行った彼の背中を見て机に手をついた。

 涙がこぼれそうになった。

 あのころと同じ光景がよみがえる。

 ある家族の願いを聞いたが結果として悪魔に邪魔をされて最後は契約者を殺された。

 契約者を守れなかった上にそのミスは自分が契約者を手にかけたに等しい。

 そのことがずるずると心に残って引きずるはめになった。

 天使の業界においてもそのミスが久遠のミスにされて堕ちることを余儀なくされたのだ。

 


「同じ過ちは繰り返さないと決めたのよ」


 涙をぬぐい、急いで彼の後を追いかけた。



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