139-3 ヒナダムG発進
約二十メートルの高さを誇る巨大なプラットフォームと、ヒナダムGを繋いでいた搭乗者移動用のための武骨なブームが後退して仕舞われていく。
あくまで演出のために、そいつがゆっくりと動いている。
なかなかいい具合に昔の子供向け特撮映画っぽい動きだったので、俺的には大満足な出来だ。
こいつはネットでも配信するぜ!
そしてヒナダムGの目がピカリと光り、いかにももっともらしく、もたつきながら動き出していく。
ここは非常に重量感のある動きを実現するために苦心したところなので、今のところは合格だ。
「よし、動きのテストをするぞ。
ヒナダム・ジャイアント、各自前進」
『ビムッ』
『グヴォウ』
『ピヒュウ』
最後のは、ファルの進撃の女神だ。
こういった返事も各自で入力できるようになっている、『搭乗者と会話できる巨大ロボ』なのだ。
どれだけ大きかろうと所詮は子供の遊びの道具なのだからな。
なんというか、御子様と会話してくれるヌイグルミのロボみたいなものか。
こっちの方が遙かに過激な仕様なのだが。
なんといっても図体が超でかい。
ああいうものも、大昔の押すとキュっと音のする御人形やヌイグルミとか、御腹のボタンを押すとテープレコーダーが声を発する当時としてはハイテクな人形みたいな物の発展形だ。
なんたって、うちは幼稚園を主体とする施設なのだからな。
この手の玩具は充実させておかないと。
はたして幼稚園に巨大ロボが必要なのかどうかは知らないのだが、この園長先生にとっては絶対必要であるのだと固く信じている。
「それでは動きのテストをするぞ。
各パイロットはテストモードで動きのチェックをしてくれ」
このヒナダムG専用競技場には、いくつかのステージが用意されている。
ここは渓谷前の、広いスペースを持つグランドプラザだ。
スタート前のチュートリアルの会場にもいいかなと思い用意したものだ。
その先には高い壁が切り立つGキャニオンが用意されていて、壁を使ったプレーが楽しめる。
そう、映画やアニメなどで見られる壁走りなどの技術だ。
走り損なうと見事に落ちる定番のコントもやれる。
そいつはエディ好みのプレーだな。
ヒナダムGには基本的に飛行能力はないため、空を飛んで壁を登る事は出来ない。
ジャンプは可能だ。
それも例によって機体やパーツの選び方によって、その能力が決まってくる。
好みのステージには、ゲートを通って移動もできるし、各ステージを勝ち抜きながら通過するマラソントーナメントなんかも可能だ。
ステージは、まだ二つしか作っていないけど。
これはあくまでヒナダムの一種なのであって、汎用的な遊び方をするものだからな。
別にロボット・オリンピックのような競技を開催するわけではないのだから、これでいいのだ。
必要なら後でいくらでも拡張可能だ。
ファルの進撃の女神が、その場で大地をトンっと蹴って、助走も無しにジャンプしてくるっと回転した。
バク転ではなく、その場で飛び上ってくるんっと回るのだ。
相変わらず身軽な仕様である。
トーヤのエルシドが軽やかなステップで縦横無尽に駆け回る。
エディオムはエディ好みという事で、とりあえずタイプバハムートとなる、移動性を捨てた状態での高機動を発揮するタイプにセットしてある。
何はともあれ、搭乗した際の安全性を確認するテストなのだ。
機体の具合を確認する意味もあって、限界テストを行う予定だ。
「ファイっ!」
突撃する進撃の女神。
軸足はそのままに、その突進を華麗に躱すエディオム。
そこへエルシドが高速で突っ込むが、ひょいっと跳ねて避ける進撃の女神。
すかさず非移動性高機動型エディオムがエルシドを捕まえてバラしにいくが、その強力な攻撃を『技で』エルシドが強引に外した。
「うわ、何あれ」
「はっはっは、エディ。
ああやって搭乗者本人の能力や技で戦えるのも、このヒナダムGの醍醐味なのさ。
このルールだと、結構ファルに有利だけどな。
だがファルの機体はレギュレーションによる制約を受けるので、うっかりオーバークロックすると機体がフリーズしちまうから戦いにくい面もある。
他の子は全力を出しても大丈夫だからな。
その辺は純粋に技の勝負になるので、どんな結果になるのかなあ」
それを聞いて、もう乗り込みたくて、うずうずしている三人。
「ねえねえ、まだ乗っちゃ駄目?」
駄目と知りつつ訊いてくるトーヤ。
「駄目に決まっているだろう。
まだ仮組み状態で細かい調整もしていないしな。
次は渓谷ステージで試すぞ」
ここは壁を使った勝負になるので、耐衝撃性テストにはもってこいだ。
機体は壊れないだろうが、中のパイロットが無事かどうかだな。
彼らには各種のセンサーが組み込まれていて、ホストとなる魔法PCまで自動でデータを蓄積して送信してくれる。
三体で競争するように進み、入り口でまたバトルをしている。
人型のヒナダムGは全長十八メートルくらいだが、渓谷の壁は高さ百メートルほどだ。
渓谷の幅は三十六メートルに設定してある。
このあたりも味噌で、大型の筐体を選ぶと、こういうところでの取り回しが不利になる。
その一方で、狭いところでは大型の機体を使って、小柄な敵を壁に押し付けるという戦法も考えられる。
三体がどうするかというところだったが、進撃の女神がひょいひょいとすり抜けて、他の二体の頭の上を越えていくかの如く、軽やかに抜けていった。
そしてエディオムが掴みかかり、エルシドはそれを予期していたかのように、その腕をかいくぐりながら渓谷に飛び込んだ。
そして壁を駆けながらエディオムを上から急襲する。
と思いきや、更にその上へ駈け込んでいた進撃の女神の強襲を食らって叩き落とされ、エディオムの餌食になった。
「これは立体的な戦いだね!」
「ああ、中々面白いだろう?」
その答えは彼らの尻尾の動きにより、鮮やかに示されていたのであった。




