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139-2 男の夢

 ヒナダム・ジャイアントのシステムは予定通りに動くようなので、コクピット・コアと必要な制御のシステムを組んだ。

 これはラジコンのように多チャンネルになっていて、いろいろな機体やパーツに対応している。

 それを見てファルが少し難しい顔をして聞いてきた。


「これって、ファルが乗ったら動きに耐えられなくて動かなくなるんじゃない?」


「そうだな。

 レギュレーションにより自動的にリミッターが働くわけだ。

 それがヒナダムのルールだからな。

 そうでないと不公平だろう」


 こいつが野放しになるような機体を作ってしまったら、真面な競技にならないからな。

 所詮は雛祭りの行事というか、只のお遊びなのだから。


「ちぇ~」


「ははは。

 それでも機体の性能を最大限有効に引き出せる分だけは有利さ。

 そうはいっても、あまりギリギリまで性能を引き出すとオーバーヒートしちゃうけどな」


「仕方が無いなあ。

 競技用はこれでいいけど、最高性能のファル専用機も別で作ってね」


「任せとけ!」


 それはそれで見てみたいものだ。

 ヒナダム大会の時は凄かったからな。


 とりあえず、レギュレーション仕様である進撃の女神二号機用のパーツから作成した。

 さすがに人力では組めないので、大型ゴーレムが組み立てを手伝ってくれる手筈になっている。


「園長先生~、今度は何やっているのー」


 あ、小煩い御狐坊主が、もう嗅ぎつけてきやがったか。


「そんなもの、ヒナダム・ジャイアントに決まっているさ。

 あの種の御遊びで本家たるこの俺が、オニダムなんかには負けていられないぜ」


「やったあ。

 僕はまたエルシドで行きたいところだね!」


「まあ、待て待て。

 今、試作で進撃の女神二号機を組んでいるところなんだ。

 その後でね」


「エディオムもよろしく」


 反対側の背中側から、にゅうっと顔を寄せてくるエディ。


「おっと、いたのか、エディ」


 こいつは相変わらず唐突な登場を心がけているようだ。


 それから、小煩い御狐小僧達の監視を受けながら、俺は新しいヒナダムGのパーツなどの建造を進めていった。

 そして三体のヒナダムGを仮組できたので、発進のためのプラットフォームを建設した。

 なんというか、宇宙ロケットの打ち上げ用発射台みたいな奴だ。


 ちゃんとエレベーターで格好良く搭乗者が上に上がるようになっている。

 この三体は人型なので、高さやコクピットまで届くブームの長さなどの距離調整ができる汎用のプラットフォームを用意してみた。


「空間魔法で細工して、コクピット・コアごとエレベーターで昇るのもいいよねえ」

「いや、やっぱりコクピット・コアが空を飛んで、吸い込まれるように機体に合体する方がさ」


「はっはっは。

 まあ、そういう色々な乗り方が出来るようにしておくのも面白いかな。

 いろいろな形を作る予定だから、そういう乗り方をしないと乗りにくい物もあるかもしれない。

 今はまだ試作段階だからね」


「ねえ、ちょっと試乗してみてもいい?」


「うーん、小さなヒナダムと違い、巨大な搭乗型は安全性の確認をしっかりとしたい。

 先にゴーレム・パイロットに試験させたいから、それからだな」


「はーい」


 俺の安全第一主義をよく理解してくれているので、この子達も特に我儘は言わない。


 そして登場した可愛いケモチビスタイルのテストパイロット達。

 そいつらは試験用ゴーレムという事で、あえてモックアップの模型のような感じに作ってあるのだ。

 テストパイロットを本物そっくりに作ってしまって、間違って本物のケモチビに乗り込まれてしまっては困るからな。


 彼らは整列して敬礼すると、それぞれの機体の立たされているプラットフォームに向かって駆けていった。

 そして付き添いのゴーレムと一緒にエレベーターへ乗り込んで上がっていく。


 エレベーターはスケルトン仕様になっていて、剥き出しの鉄骨を組んで作られたプラットフォーム越しに、エレベーター上昇中に愛機のヒナダムGの雄姿が見えるようになっている。


「いやあ、男のロマンだなあ」

「園長先生って、こういうの好きだよね」


「ふふ、なんたって俺は昭和のおっさんだからな。

 そういうお前こそ、この手の物は大好物だろうに」


「えへへへ」


 目をにやけさせて涎を垂らすトーヤ御兄ちゃんの口元を、タオルで甲斐甲斐しく拭いてやるファル。


「そーれ、行け。

 エディオム!」


 エディも結構熱くなっているようだ。

 この子は、デザインも戦い方も渋めが好きなんだけど、中身的にはトーヤとそう変わらない子なのだ。


 やがて背中の開口部から顔を覗かせるコクピット・コアに乗り込むテストパイロット達。

 前部よりも後部に作った方が安全かなと思って、コクピット乗り込み口は背面に設けてある。

 コアは開口部があってそこから乗り込むが、これは空間を伸縮させて開閉するように作ってあるので、物理的な衝撃で開いてしまって子供達が外に放り出されてしまうような事はない。


 内部には超強力な衝撃吸収のエンチャントが仕込まれており、子供達をあらゆる危険から守ってくれる。

 立ったままケーブルを使って動きを伝えるシステムだからな。

 衝撃に対して無防備なスタイルなので、何かあったら大変なのだ。


 この手の巨大ロボは倒れたりすると本当に危険だ。

 立った状態からそのまま倒されると、二十メートルくらいある高さのロボットなら中の人間は確実に死んでいるのだ。


 なんだったら東京の港湾施設に作ったロボット像の中に人間を入れて倒してみればいい。 

 あれなんか、人が乗っていなくたって大惨事になってしまう。

 絶対に新聞沙汰は免れない。

 施行会社の責任が追及されてしまうのは確実だ。

 たとえ中に人間がいなくて、単にあれが倒れただけでも周りの被害は甚大なのだ。


 ああいうものを建設する時には、クレーン車とかが出動して工事の人が多数集まって作るレベルなのだし、安全第一なのは言うまでもないので交通整理などが大変だ。

 見物人も多い事だし。


 むしろ、それによる事前宣伝というかSNSによる口コミ拡散が期待されているのだ。

 宣伝してもらえないなら作る意味がないし。

 きっとWiFi環境なんかもきちんと整備されているはず。


 ああいう巨大建造物はきっと、名古屋駅前で言うところの『〇〇ちゃん人形』と似たような目的で、結構な費用をかけて建造されるのだろうからなあ。


 しかし、みんなが一斉にWiFiを使ったりすると酷い事になる場合がある。

 昔、本当に動く某多脚型ロボットをWiFi経由の操縦をして公開試運転で動かしていたら、いきなりフリーズして動かなくなって操縦者が大混乱したのだが、それは見物に来た大勢の客のせいで通信量急増による回線パンクを引き起こしたせいだった。

 今は回線容量も増やされているだろうから、そういう事もなくなっただろう。


 うちはそういう事はないので安心だ。

 それに直接的な操縦システムだしね。


 昔、こういう自分の体を動かして操縦するシステムの巨大ロボットが登場する特撮があって、子供の頃に乗ってみたかったんだよね。

 生憎な事に、その番組はさほど人気にならなかったのだが。

 でも幼稚園の子なんかには絶対こっちの操縦法がいいと思うし。


 そもそも、操縦桿を握らせてもチビっ子には上手く運転出来まい。

 車を操縦した事のない人間に戦車や巨大ロボットは上手に操縦出来ないはずだ。


 アルスあたりなら余裕でこなしそうだがな。

 生憎と、忙しいあいつは今回も誘ってやれないなあ。


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