130-7 綿毛
そして次に案内してくれたのが、ポフポフな毛玉のような奴のところだった。
まあなんというのか、タンポポの種子のような感じの。
猫とかでもいるよね。
長毛種で、洗うと毛がペッタリして面白い事になる奴とか。
ここのフワフワどもは、なんだか大量に集まって不可思議な動きをして蠢いている。
直径は四十センチくらいだろうか。
ほぼ大型のケサラン・パサランだな。
見かけた時の幸福感もその大きさに比例しているかな。
そして一言も発さずに、うちの娘が突如として突進していった。
目がいつになく真剣だ。
御祭とかに開催されるバルーンドームの中のような雰囲気があるからだろう。
だが犬も走った。
娘が突っ込むと綿毛魔物は一斉に飛び退って、娘は無様に転がっていくところだったのだが、滑り込んだワンコが背中でナイスキャッチだった。
「でかした、アキレス」
だが綿毛を掴み損なった娘は、ワンコの背中にしがみついたままの状態で半泣きだ。
「あーん、にげられた~。
あれすごく、きもちよさそうだったのに」
「はははは。
魔物さんだって、さっきみたいに、いきなり突っ込んでこられたら驚いて逃げるさ。
あの子達とは、ちゃんと御友達になろう」
何しろ、この俺の力で生み出された魔物なのだ。
造物主の御嬢様に懐かないなどという事は絶対にあるまい。
さっきのアルマジラは特別だろう。
あいつは自分と同類である、ここの迷宮魔物からも偏屈とか言われているくらいの奴なんだからな。
俺は風魔法を緩やかに放ち、空中にふわふわと漂っていた連中を、ゆっくりと動かしてやった。
それから伝わってくる自分達をも生み出した造物主の発する魔力の心地よさに、奴らも大人しく気流に乗っている。
そして、そいつらは終着点であるレミのところに柔らかく着地した。
あっという間にふわふわネコミミ令嬢の出来上がりだ。
可愛いぜ!
接写、連射!
日本製一眼レフカメラが連続シャッター音を軽やかに奏でて高速でシャッターを切り、この良き日の記念を大量に切り取っていく。
「うわあ、わたげだー。
さいこう~。ポフポフ~」
もう夢中でそいつらを抱き締めている娘。
タンポポの種みたいな感じじゃあないので、触ってもバラバラになるような事はない。
毛の長い動物っぽいイメージだ。
俺が娘に魔力をジャブジャブと注いでいるので、もう奴らも逃げていかない。
触っている娘の手から俺の魔力が連中に流れ込んでいくのだ。
俺も近寄って触って見たが、中々の触り心地だ。
綿毛っぽい感じだがタンポポのそれとは違い、かなり丈夫に出来ているようだった。
そしてシルキー・タッチとでもいうのだろうか。
いつまでも触っていたくなるような手触りだ。
本体の直径は、見かけの半分くらいだろうか。
子供の来園者には受けそうだな。
こいつをマスコットに採用してもいいくらいだ。
魔力をかなり振り撒いたので、よく観察すると壁からどんどん綿毛がポップしてきている。
いつのまにか凄く数が増えた!
毛玉をたくさん纏わせながら、次のゾーンへと足を運ぶ。
全員もれなく、もふもふになってしまっている。
「こいつらに名前はあるのかい?」
「特にはないですね。
皆も綿毛と呼んでいますが」
「そうか、どうしようかな」
マスコットにするんだと、いい名前にしないとなあ。
「とりあえず、英語の綿毛という事でフラッフにしよう!」
なんとなくイメージに合うし。
ふらふら、ふわふわ、フライな感じかな。
造物主から命名されて嬉しいのか、体を明滅させて喜びを表すフラッフども。
クリスマスの飾りつけみたいな奴らだな。
クリスマスには、各地の巨大ツリーの生きた飾り付けにしてもいいな。
色付きセロファンの洋服を作ってやったらどうだろう。
そういう物なら幼稚園の工作にちょうどいいしな。
あと夜中に光らせておくと、防犯灯の代わりにもなるかもしれん。
「あとは、あれですかね。
まあ、普通に可愛い感じですよ」
このトールは、ここの案内係とかでもいいかもしれないな。
他の奴らはマイペースにやっているか、可愛いだけで喋らないからなあ。
「お、いたいた、あれです」
何かなと思って近づいたら、こいつは!
可愛らしいカタツムリだった。
雨上がりの日に、こいつらを見て胸を躍らせなかった思い出を持つ子供がいるだろうか。
しかも、ここの連中と来た日には。
虹色に輝く殻に、カートゥーンのキャラを思わせるようなユーモラスな顔、体もなんというか可愛らしいデフォルメっぽい形で、あまりぬめぬめした感じはない。
大きさは色々ある。
子供が乗ったら、さぞかし楽しいだろうな。
その中でも、大き目の大人を乗せられるサイズの奴らが、俺達の前に集まってきた。
子供サイズの個体も二体、ハルとレミの前に来てくれる。
粘液がぬめって大変かなと思ったら、どういう仕組みになっているのか、連中が這った後は綺麗になっている。
どうやっているのか謎仕様なのだが、おそらくは日本人である俺が無意識に作ったものだから、後片付けまで面倒がない分解仕様になっているのだろう。
子供達は大喜びで、しかも追加で犬まで乗せてもらっている。
でも、巨大かたつむりの上に犬が四本足で立ったままというのもシュールな眺めだなあ。




