130-6 井上隆裕探検隊再び
引き続き、可愛い物捜索に赴く我々グランバースト公爵家の一行。
ガイドさんのフンドシ、じゃあなかったトールの案内で。
途中で、ちょこちょことプリティラットを集めつつ、ダンジョンを進む井上隆裕探検隊。
うちの可愛いネコミミ娘が、可愛い物に塗れて、なお可愛くなっている。
随伴の精霊カメラマンは、可愛いネズミっぽい感じの奴だ。
というか、よく見たらジャンガリアンハムスターだった。
七色に彩られていたが、それはペンキで塗った風ではなく精霊の森っぽい感じの色合いなので安心だ。
可愛いカメラマン自体も娘と並べて撮影しておきたいぜ。
ハルも一緒に来ていて、うちの子と手を繋いで、グレートデンの鼻面やガイド魔物を撫でながらの行軍だ。
ハムスター好きの西田ちゃんは、彼氏である織原はほったらかしにしてカメラマンにべったりだ。
何匹かプリティラットも抱えている。
一緒に地球へ連れていけないのが残念な御様子だ。
「この先に、魔王様が御所望の大変可愛い奴がいるのですが、何分にも偏屈な奴でして」
「偏屈?」
「まあ、行けばわかりますがね」
洞窟状の通路を少し行った、かなり広くなっている場所には何かが丸くなっていた。
なんというか、籠の中で丸くなっている猫のような感じだ。
確かに、可愛らしい雰囲気ではあるのだが、かなりの大きさだ。
もしかして丸虫?
あれもデフォルメされているならば、可愛いといえば可愛いけどな。
確かゲームセンターに置いてあるクレーンゲームの景品でも物凄くリアルな奴を見た事がある。
ダイオウグソクムシなんかだと、ちょっとキモイぜ。
あれは食べると美味しいらしいけどな。
ダイオウグソクムシ煎餅なんかが、深海魚が豊漁な清水港あたりの銘菓じゃなかったっけ。
最近は三河湾の蒲郡でもダイオウグソクムシの御菓子を売っているよな。
愛知の海にもいたか。
まあ全国的に日本地図上で見たならば、三河湾と駿河湾なんかはすぐ近所みたいなものなのだが。
それらの海も車海老や桜海老の名産地だ。
ダイオウグソクムシも海老の仲間か何かだって思えばいいんだけど、名前にムシって入っているのがアレだよな。
まあ、どうみてもビジュアル的には虫にしか見えんのだが。
どっちかというと、限りなくウオノエに近い感じのするエイリアン似のビジュアルだ。
あれも釣り人には御馴染みの物体で、いつの間にかクーラーボックスの中にいるので、食べる人は食べるんだよね。
あれは結構美味しいらしいんだけど、俺は是非試食を御遠慮しておきたい。
そして、そいつはむくむくと動き出し、丸い形態を解いた。
「あはは、これだったか。
うん、ちょっと可愛いかも」
それは巨大なアルマジロだった。
ずんぐりむっくりの体形をしていてユーモラスな感じで、目がまた凄く可愛い。
「うーん、誰?
騒がしくしないで。
今、眠いんだからさ」
そんな事を言って、また丸くなろうとしている、そいつ。
それに、こいつも言葉を喋った。
案外とここの奴らは喋るのかもしれない。
なんたって、俺がこいつらの起源なんだからな。
この連中は日本語すら喋ったっておかしくはないのだ。
「ああ、これこれ。
こちらにおわす御方をどなたと心得る。
神だぞ、造物主様だぞ~」
「そんなの、僕知らないよ。
お休み~」
「ああ~。
これ、アルマジラ。
これってば」
筋金入りのマイペースだな。
アルマジラ……またベタな名前だ。
まあ、ここでは俺のセンスで名前がついているのかもしれないが。
というか、物凄く賢そうなトールに名前が無くて、なんでこんな奴に最初から名前があるんだよ。
「よーし、じゃあこうしてくれるわ」
そう言ってスマホで呼んでみた。
「ファル~、ちょっとおいでー」
「なあにー」
ゲートの魔法で、よっこいしょっと押入れから出てくるかの様子で、後ろ向きに伝い降りてくるファル。
「ちょっと、そこで丸くなって寝ている奴を撫でてやってくれ」
「うん、いーよー」
ファルに「よしよし」をやられて、そいつは丸くなったまま凄い身震いをしたが、しばらくピクピクしていながら丸くなった体を開きかかっていたにも関わらず、なんとか初心貫徹を押し通した。
「おお、こいつすげえ根性をしているな。
ファルのよしよしが通じないとは」
「じゃあ、持久戦だね。
頑張っちゃお」
そう言って凄まじく撫でまくるファル。
ビクっとし、隙間を一センチくらい開けてプルプル震えながら、また閉じる。
だが、またピクピクし、ブルブル震えながらもぞもぞするので、閉じた体の隙間がグニャグニャと動き、面白い事になっている。
「うふふふ。
よして、御願い。
いや、途中で止めないで」
どっちなんだよ。
さっさと起き上がらないと、その地獄がずっと続くからな。
汝、この魔王たる者が創りし可愛い物よ。
神の御使いの威光を肌で感じるがよい。
そのままファルが一分ほど激しく責め上げていたら、さしもの奴も陥落した。
ファルも、こんなに落ちない魔物は珍しいので、面白がって滅茶苦茶に攻め上げていたし。
奴は引っくり返った状態で四肢を広げ、思いっきり目を回していた。
随分と気持ち良さそうにはしていたのだが。
しばらく起きそうもないので、そのまま放置しておいた。
こいつは可愛い上に丸くなるという芸があるので、人気になるかもしれない。
でも丸くなってばかりのような気もするのだが。
まあ、特にこのダンジョンから逃げてはいかないだろうから。
多分、アドロスなんかの迷宮魔物と同じで、このダンジョンの魔力から魔素を取り込んで生きているのだろう。
ここの魔物は離宮などでも、俺の魔力を与えておけば普通に生きていけるだろう。
うちの子孫も魔力は豊富だろうから、それが尽きる事もあるまい。
どうにも駄目ならば、ここの維持用に複数の大型魔力コンバーターを用意しておく事にして、そいつを使ってくれればいい。
そいつは真理にも預けておこう。
トールやプリティラット達がファルに群がっている。
プリティラットは可愛いのでファルも気に入ったらしい。
生憎な事に、このネズミは下等魔物らしくて、他のプリティ魔物のように人化したり喋ったりはしないようだった。
概ね、愛玩動物のポジションだな。
「じゃあ、トール。
次いってみようか」
「次ですか。
じゃあ、今度はあいつかな」




