123-6 変わった訪問者
そしてホテルのロビーで妻子と寛いでいたら、変わった御客さんが島を訪問してきた。
連れてきたのはトーヤだ。
「やあ、ヘンリー。
一体どうしたんだい?」
トーヤに手を引かれ、やってきたのは例の食い倒れ島で発見された、施設の保全用魔導製品の彼だった。
今日は大変におめかしで、帽子のようなキャップを装着している。
もしかしたら、外に出る時には防錆用の魔道具をオプションで装着しているのかもしれない。
元々は塩風のきつい南海の島勤務だったので、防錆塗料以外にも魔法で錆びないように工夫されているはずなのだが。
その発想は今までに無かったので、俺も自作の道具にも取り入れる事にしたものだ。
だが、それを装着した彼の姿は未来的かつメカニカルなデザインで、中々にスタイリッシュだ。
古代に作られたとは俄かに信じ難いSFじみた素晴らしい意匠で、まるで彼がモデルチェンジしたかのような様相を示している。
彼を作ったエンジニアは、自分が生み出した製品を限りなく愛しており、美しく仕上げたかったのだろう。
御客様により良い製品を提供する意味もあったのだろうが。
その職人魂に思わず共感するぜ。
だが、その職人魂を過去から受け継いで身に宿す彼はこう言った。
「いや、トーヤ達に招待されましてね。
あの島は新しく目覚めた仲間が見てくれています。
トーヤの話を聞いていたら、若干気になる事がありまして視察にきました」
「気になる事だって?」
なんだろうな。
このブルーアイランドに、何か彼が気にするような異常な事があるのだと?
ここは食い倒れ島のような事は無いはずだが。
この島を開発してから随分と経つが、特に異変などというものに今まで御目にかかった事は一度も無い。
その俺の微妙な反応を見て彼は言ってくれた。
「いえ、そう大した内容ではないので御安心ください。
ちょっとトーヤを御借りします」
そう言って、彼は滑るような動きでトーヤと一緒に仲良く行ってしまった。
彼は地球のガイドロボットのように車輪のみで移動しているわけではない。
そういう物が使えない時用に、オプションのキャタピラさえ装備しているが。
俺も魔法が使えない時が結構あったし、ヘンリー達は役目柄そういう緊急時にも活動出来る仕様になっているのだろう。
通常はパーツの損耗を抑えるべく、レビテーションのような物で少し浮いて移動しているので、ここでもそう不自由はしないだろう。
最初の頃、俺が使っていたバスに限りなく近いイメージだ。
彼のような古代の技術者による素晴らしい芸術作品を、俺の作ったナンチャッテ製品と一緒にしてはいけないのだが。
彼らは仲良く一緒に島の探険に行ってしまったようなので、それを見送って俺は御茶の続きをしている。
レミも探険よりカップケーキの方を取ったようだ。
可愛い御手手を振って、御兄ちゃん達を御見送りしていた。
ここって、もう特に珍しい場所じゃあないしね。
俺の娘であるレミからすれば、この島なんて単なる自分の家の別荘みたいなもんだから。
だがうちの御義母様には不評というか、なんというか。
ここは狩りに向いていないので、まだサミー島の方が御気に入りのようだ。
殆どドワーフの親戚だな、あの人は。
子供達は海で泳ぐ子、プールで遊ぶ子などに別れており、オプションで海岸線の湖探険コースがある。
釣りが出来るので、エリーンはリヒターを御伴にそっちの引率に行っている。
プール施設があり、また海で遊ぶので宿泊はホテルに陣取っているが、後で山間部の林間学校も開催する予定だ。
それからプールで、今度は恐竜かきで愛らしく泳いでくれる恐竜ボートっぽい感じの浮き輪さんと娘が遊んでいるのにしばらく付き合った。
シャチはいかにも本物っぽく泳いでくれるので子供達に大人気だが、こういうのも小さい子にはうける。
可愛い恐竜声で鳴くようにもしてあるので、それも人気の秘訣だ。
愛嬌のある顔で、表情も豊かで首を動かす仕草などが実に愛らしい。
対象年齢二~四歳といったところか。
もちろんSTマーク付きの製品だぜ!
海の方では豪快にバナナボート・ゴーレムが爆走している。
こちらは対象年齢が六歳以上なのだが、これもアルスがいたら熱中した事だろう。
あいつって遊びにかけては本当に子供っぽく熱中するからな。
あいつにとっては王様稼業なんて本当は苦痛なのかもしれない。
子供達にはスーパー・ライフジャケットを着せてあるので少々の事は問題ない。
衝撃・水圧などから子供を守り、勝手に脱げない仕組みにしてあるし、水中呼吸魔法による水中における呼吸の確保も万全だ。
それから、ブルーアイランド・ホテル&リゾートの新しい目玉として作ってみたドーム型水族館を子供達と一緒に見物しにいく。
それはまるでドーム型の、中身がキラキラと輝くタイプの玩具のように美しい。
『アクアミュージアム・アオイ』
島の名前に、ここをプロデュースしてくれた葵ちゃんの名を付けられなかったので、ここに使ってみた。
まあよくあるネーミングの手法だ。
この島には特に危険生物とかはいないので、生物相も穏やかなラインナップだ。
毒持ちの奴はいないが、南の海なので色彩豊かな生物も多い。
あちこちからゴーレムが、魔法で上手に剥がして集めてきた珊瑚を配置した、直径百メートルもある『グレート・サンゴ・リーフ』は一見の価値がある。
サンゴを採取した跡地にはエリクサーを使用したため、見事に復元というか、そこのサンゴ礁は以前よりも盛況な有様だ。
サンゴは水温が上昇すると、短期間の間に成長するらしい。
近年は温暖化の影響で、東京湾でも多くの種類のサンゴが成長した姿が見られるそうだ。
一言で言うなら、それは『海の箱庭』のようなものだ。
また、ゴーレム達が手入れをしているので盆栽っぽい雰囲気もある。
そして珊瑚と共生出来るような、色の綺麗な魚その他の生物達を飼っている。
周りに配置された見学コースに従い、グルっと見られるようになっている。
いつもの如く、魔法で子供が落ちたりしないような仕掛けもきちんと施してある。
プールの真上には十字型にクロスするように配置したブリッジ見学橋があり、真上からも見られるようになっている。
子供達は、周りをクルクル回る子達とブリッジに登る子達と色々で、新しい施設に夢中になっていた。
ブリッジの真ん中にはタワーが設けられていて、結構見晴らしがいいので人気のスポットになったようだ。
タワーの底には透明なガラス展望窓が用意されているので、これもまた子供達の人気を集めている。
おっさんは自分がそういうのを好きだからね。
うちの子にも気に入ってもらえたようだ。
おミミがピコピコと動いていて大変に上機嫌だ。
これって一歳の頃からの癖で、実に可愛いんだよな。




