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第118章 プリティベビー誕生   118-1 可愛い赤ちゃん

「メル、もうそろそろかい?」

「グルウ」


 彼女は離宮にある大部屋の一つで、厚手の敷物の上に寝そべっている。

 今はそれが彼女の仕事なのだ。


 メルこと、キメラのキャラメル。

 その御腹は大変大きくなっていた。

 御目出度なのだ。


 そう、メルに赤ちゃんが生まれるのだ。

 父親は、なんとフェンリルのフェルドだ。


 通常、迷宮魔物が子供を生む事などない。

 普通は迷宮内で完成された姿でドロップするのだから。


 親はダンジョン・コアなのだ。

 ただ、魔物達も子供を作るための器官は何故か持っているという不思議。

 そして男と女(雄と雌)がいれば恋も始まり、子供が生まれたりもする。


 しかし、遺伝子とかの問題は一体どうなっているのか。

 元々キメラは古代に合成されて人為的に作られた魔物のようなので、その辺はファジーなのか?


 とにもかくも、もうすぐ我が家に新しい家族が現実に誕生するのだ。

 どんな子供が生まれてくるのか俺も興味津々だ。

 ファルに言わせると、当の本人達も、その辺はとても楽しみにしているようだ。

 メルの傍にはフェルドが寄り添っており、その鼻面を愛妻に寄せる。


「わあ、もうすぐかなあ」


 言うまでもなく声の主は、好奇心の塊である御狐王子のトーヤだ。

 エディも当然コンビで見に来ている。

 ファルもついてきていて、メルの頭を撫でると気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。


 ケモミミ園の子供達も入れ替わり立ち代わり遊びにくる。

 みんな御腹の赤ちゃんに声をかけながら、メルの大きな御腹を撫でていく。


 そして返事をするかのように、御腹の中からキックが跳んでくるのだ。

 中々ヤンチャなのが生まれてきそうだな。

 まあ、それも今更なのだが。


 何しろ強力な魔物であるフェンリルやキメラの子なのだ。

 御腹の中でもヤンチャなのは当然だよな。


 御山から頂いてきた安産祈願の御守りに、ファルの御神籤から出た超吉が収められてメルの首からぶらさげられている。

 それには、一応大神殿でグスタフの祝福も込められていて、ファルの祝福の聖歌を「聞かせて」ある。


 教会で牧師が聖書を詠唱して聖水を作るように、神聖な霊的な歌は物体に影響を及ぼす。

 かつて地球で、若い頃には趣味の聖水作りに励んでいた俺なのだが、あまりその方面は造詣が深くないため、その手の手法は用いていなかった。


 聖水作りは、もっぱら科学的な製法が多かったのだ。

 だが、それでも最終的な製造工程では『念法』に近いような『心の力』のような物は使っていた。

 どうしても聖水という物の性質からそうなるのだが。


 だが、この世界へやってきて魔法的な物に多く関わると、向こうの世界、つまり地球から見たならオカルトなんじゃないかと思う手法が増えた。


 魔法・祝福・想い。

 そういった物が現実に強い力として作用するこの世界。

 家族のためには、ごく普通に当たり前の事としてそんな力を使うようになっている事に今更のように気付く。


 元々俺は色々とサイキックな人間なので、難なくそういう風習にも馴染んでしまったのだが。

 そう思いながらメルの頭を撫でて、鼻面を寄せてくるフェルドの下顎の辺りをもふっておく。

 鼻を鳴らして応えを返す姿は、今幸せいっぱいのようだ。

 うちもそのうちになあ。


「どんな子達が生まれてくるかしらねー」


 シルもちょっとメル達の子供の誕生を楽しみにしているようだ。

 そう、そしてきっとあの人も。

 どうせ呼ばれもしないのにやってくるはずだ。

 おそらくジャージ姿で。


「さあなあ。

 赤ちゃんの両親にだってよくわからない事が俺にわかるはずはない」


 御腹の中の子を鑑定・解析すればわかるかもしれないが、そんなヤボな事をするくらいなら、生まれてくるまで地球にすっこんで楽しみに待っている。

 それくらい俺も楽しみにしまくっているのだ。


 そして早くも名前を考えてそわそわしている子達がいる。


「御父さん似だったらフェメラ、御母さん似だったらキメルでどう?」

「それって名前じゃなくて種族名というか」


 トーヤとエディも喧々諤々の様子だ。


 でも、そのネーミングは悪くない。

 フェメラとキメルか。

 語感がいいな。


 わかりやすくフェンメラやフェルメラとかキメリルなんていうのも考えていたが、シンプルな方が語感もいいな。

 よし、それらは種族名として採用だ。


 はたして、どんな形で生まれ出てくるものやら。

 幼稚園や小学校の図工の時間に想像図を描かせてみた。


「一応、七夕マジックペンは使用禁止のルールでな」


 慌ててマジックペンを背中に隠す、御狐王子様達。


 出来上がった絵の群れはメルの寝室に張り出しておいた。

 目を細めてそれを眺めながら、メルとフェルドは二世誕生の時を待つのだ。


 山本さんとエバンス爺さんは、離宮の料理長ジョバンニやケモミミ園コックのランドさん達と一緒に、新しい家族達のための離乳食メニューや、メルの産後のためのメニューの考案に余念が無いのであった。


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