表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

629/1334

第101章 何故だか知らないが  101-1 園長先生、お呼び出し申し上げます

 俺はのんびりとリビングで寛いでいた。

 例によってファルを含めた精霊の森三人組がケーキに夢中で齧り付いている。


 実を言うと暇が出来たらやってみたい事もあったのだが、少し大掛かりになるので後回しにしていた。

 昔この世界で作られた物を再現しようと思っているのだ。

 再現というか、かなりパワーアップした物を作成するというか。

 それはそのうちにまたかかろうと思う。

 どうせ、概ね俺の趣味の案件なのだ。


 とりあえず明日あたりに、また日本に行ってこようかなと考えている。

 連絡を入れておいたので、総理も少し時間を取ってくれるらしい。


 日本の新作ケーキも持ち帰らねばなるまい。

 ケーキに夢中な目の前の餓鬼どもに目をやりながら、そんな事を考えつつ泰然とした態度でソファにふんぞり返っていたのだが、その時にスマホが鳴った。

 そして、その大気の振動から伝わってくるものは。


『胡乱な感じ』

 そうとしか言いようのない感覚。

 これは……。


「おや、総理じゃないですか。

 御久し振り。

 明日そちらへ行く手筈になっていたと思うのですが?」


「いや、それが都合でね。

 今日、こちらへ来られませんか?

 その、あなたにちょっと頼みがあるのですよ」


「じゃ、貸し一でね~」


 ふっと仄かに香るトラブルの匂い。

 ここは総理に恩を売っておいて損はないよな。


「はいはい、わかりました。

 貴方はいい政治家になれそうですね。

 それでは御待ちしていますよ」


 総理は苦笑気味に電話を切った。

 総理と電話しているのは普通のスマホだ。


 元々、俺の能力で日本とネットが繋がっていたのは、あの次元の裂け目が修復された後にもイコマの奴が強引に魔法の力を利用して魔力回線のような物を残しておき、インターネットと強引に繋いでくれていたらしい。


 アドミンに頼んで、そこを電波が通るようにしてもらったものだ。

 奴には電波というものが理解出来ないかと思ったが、さすがは神。

 こういう物が電波だと教えたら、あっさりと理解した。


「ああ、人間はこれを電波と呼んでいるのか。

 こんな物は自然界にも各種存在し、あれこれと馴染みの物だ。

 何しろ、我らはお前達の単位で何十億年も暇しているのだからな。

 この手の物でも観測していないと時間を持て余して身が持たない」


 さすがは古き神の一柱。

 何か凄い事を言っていたのだが、それでもちゃんと繋いでくれたのだ。


 御蔭で向こうの世界と普通に電話が出来るようになった。

 何故かIP電話が使えないので苦労していた。

 電話する度に向こうの世界へ跳ばないといけないので大変だったのだ。



 そして俺は、のこのこと首相官邸へ出かけていった。

 後になって考えてみれば、よしておけばよかったかなとか思ったような事件ではあったのだが。


「あ、おいちゃん、日本へ行くの?

 ファルも行く~」


 ファルも日本に味を占めたとみえて、一緒について来た。

 まだまだ魔力も必要というか、前にも増して入用な感じなので、俺もこの子を連れ歩くのは吝かではない。


 この子なら荒事になってもまったく平気だしな。

 どうやら厄介事のようなので、ちょっとうちの娘は連れていけない。

 まだ幼稚園の時間だし。


 現地の首相官邸へ着くなり、ロビーで現地駐在の精霊どもにわさっと取り囲まれてしまった。

 こいつらを日本へ島流しにしてあるからな。

 おやつ魔石では物足りなかろう。


 ばっさばっさと景気よく魔力を振り撒いておき、出迎えてくれた総理に向き直った。


「やあ、こんにちは」


「ええ、こんにちは。

 彼ら精霊は魔力というものを好むと聞きましたが、今それを与えていたのですか?」


「そらもうバッチリと。

 魔物なんかは、私の自然放射魔力が見えるそうですが、この世界にも視える人間がいるかもしれませんね。

 私は自然放射魔力という物を常時振りまいていますが、日本では特に犬に吼えられたりしませんので、彼らにも見えないのでしょう。

 視覚の波長領域の問題だけではなさそうです」


 それを聞いた総理は少し考え込むようであったが、すぐに顔を上げて話を切り出した。

 魔力の使い道でも考えていたのか?

 生憎だが、そこまで地球に干渉する気はないからね。


「実はですね。

 最近内戦が終了した国がありましてね。

 アジアの片隅にある国です。

 小さな国なので今までも知っている人は少なかったでしょう。

 パジーシャ王国は本当に小さな国です」


「知りませんね。

 向こうにいて、わざわざ日本のニュースなんか見ませんので」


 いやマジで知らないよ。

 そんな国、一体どこにあるんだよ。


 俺が子供の頃に学校で習った地図と、今の地球世界は少し異なる。

 あの頃はチベットなんていう国も地図上に存在したよな。

 セブン・イヤーズ・イン・チベット!


 あと、俺が小学校の頃に使っていた地図帳には「台湾という国名」が載っていた。

 確かあの頃の日本は台湾と国交を結んでいたので、日本から見た台湾は正式に国扱いだった。

 元々は国民党が支配していた中国と関係を結んでいたので、単にそのままだったのかもしれないが。

 国交のなかった中国も国名は地図帳に載っていた。


 当時は日本から見て二つの中国が当たり前だったのだ。

 国や地域という意味合いでの区分けではなく、国民党支配地区と中国共産党支配地区という感じの区訳だな。

 元々日中戦争の時代にも、国民党が圧倒的に優勢とはいえ、互いに争っていた彼らも二党共闘という感じで、どちらも日本と戦っていたみたいだし。


 北朝鮮や韓国が地図帳に載っている事には、同級生もみんな気が付いていなかった。

 大陸方面は国名地名の書き込みが物凄くゴチャっとしていて、あれらの国名は中国に埋もれてしまって見にくい上に、朝鮮半島については特に社会の時間には習わなかったので。

 そもそも、当時は中国自体もあまり存在感がなく、日本人は世界の中で超大国である米ソばかりに目が向いていた。


 まあこの永らく続いてきた日本だって、いつまで国として在れるものやら、昨今の情勢の中では些か怪しいもんだ。

 あの好戦的で邪悪なロシアが攻めてきたら御終いだな。

 攻めてきたのが中国ならば、皇紀二千六百年だなんだいったって、そんな物は一瞬の内に無かった事にされるわ。


 元々、俺は新聞もテレビも見ない主義なんだ。

 どうせ色々と話が歪んで報道されていたりするのだから。

 見ていると嫌になるので、うんざりして、もうすっかり報道は見なくなってしまった。

 日本では、こういう俺みたいな人が多いらしい。


 まあ、そんな事は俺が中学生・高校生の頃からずっと言われていた事で、今更な事なのだが。

 マスコミの胡散臭さに関しては、高校の政治経済や倫理社会の時間で正式にたっぷりと習った。

 最近はネットで話が急速に広まってしまっただけだ。

 昭和の時代では、学校でも教師からそういう事は色々と厳しく教わったものだ。


『新聞は読み比べろ。マスコミの言う事を鵜呑みにするな』

『マスコミのやる事はエロ・グロ・ナンセンスの塊』 


 テレビの視聴率も昔に比べれば、今はとんでもなく低い。

 最近、テレビや新聞を見ない人も少なくない。

 それは大概がネット派の人だ。

 テレビは単なるBGMの代わりだという人も少なくない。


 ネットが普及したら、そういう人が凄い勢いで増えたのだ。

 日本の俺の家にもテレビはなかった。


 昔からある大新聞も、もう昔日の勢いは無い。

 海外の老舗新聞なんかでも身売り話が絶えない。

 完全にネットに押されている。


 今いる年寄りがいなくなったら、日本からNHKも含むテレビ局や新聞社なんていうものは一切存在しなくなるのではないだろうか。

 その時は赤字の国営放送局や、市町村レベルの小規模ケーブルテレビあたりが主流になるのだろうか。

 小さな地方新聞なんかは、どんどん廃刊になっているから、そこまでいったら地方新聞なんて一つも生き残れないだろう。


 大手の広告代理店でさえ、収益の内訳は利幅の少ないネット広告が大きな割合を占めているはずだ。


 本来であるなら新聞の読み比べ、海外テレビも含むテレビの見比べをして、ネットの情報と照らし合わせないといけないのだろう。

 同じ歳の友人はちゃんとそうしていた。

 わざわざ、お金を払ってアメリカのテレビを見ていたし。

 あれは大したものだった。

 英語もちゃんと理解していた。


 特に昭和の時代なんかは、日本の教育で英語を特別に貶めていたのは、そういう海外の情報を日本国民が得にくくするためだったとも言われている。


 話が歪んでさえいなければ、マスコミによる政府や政治家への正当な批判は必要だし、国民もよく情報を見極めて関心を持たないといけないのだ。

 だが、おっさんはもう人生に希望を失っていたので何もかもに無関心だった。

 そして今では完全に異世界の住人なので、地球の事に対して買い物や遊び以外ではまったく関心が持てない。


 今回は、あくまで取引先である日本政府からの頼み事なので特別に関わるだけだ。

 そして総理は、そんな感じであまり関心のなさそうな俺に対して咳払いを一つしてから説明を始めた。


「現在、自衛隊が現地に行っていて国際支援活動に参加しているのですが、少し問題がありましてね」

「へえ?」


 何故そんな話が俺に回ってくるんだろうか?

 猛烈に嫌な予感がするな。


「あなたの事を『園長先生』と見込んでの依頼なのですよ」


 総理は一見すると爽やかそうな笑顔で俺に話しかけているのだが、その表情には大変よく見覚えがある。

 そう、異世界に生息する『タヌキ』達の、あの笑顔だ。


 パジーシャ王国なんて実際には無い国家です。


 知りませんでした。

 小説になろうサイトは百章までしか章が作れないんですね。

 今更どうしろと~。

 仕方が無いので、今後は各章の第1話の先頭に章の表示を入れておきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ