96-5 ネオ雛祭り開幕
そうこうするうちに仕度が整ったので、ヒナダムの会場へと移動した。
うちの離宮の大広間(畳敷き)が会場だから、靴を脱いで、おやつなどを食べながら楽しむようにした。
もちろん、主役は女の子と御雛様なのであるが。
それともう一人の主役は瑠衣だな。
可愛い赤ちゃん雛なので、きっと女の子達が可愛がってくれるだろう。
そしてレオンは瑠衣にべったりだ。
女の子達の面倒は葵ちゃんが見てくれている。
今日はルイにも出てきてもらうか。
今年は娘の初御雛様なので、山本さんが御菓子作りに張り切っている。
俺が日本から取り寄せたあれこれもあるので、大変に素晴らしい雛祭りになりそうだ。
本日の怪人赤マントごっこは禁止にしてある。
そのつもりで、昨日までは目を瞑ってあるのだ。
無論、おチビの女の子達は許さなかったのだが。
犯人は捕まると、あっという間に簀巻きにされてしまっていた。
だが彼らは、それでも心底満足そうにしている。
男の子達は本当に碌な事をしていない。
そして女の子達が不穏な気配を感じて振り向いた先には、また別の怪人赤マントが走っているのだ。
「こんにちは、グランバースト公爵様」
そんな風に挨拶してくれるのは、エミリオの婚約者であるサイラスのシェリー姫だ。
「おお、よく来てくれたね。
シェリー姫はしばらく見ない間に少し大人っぽくなったかな」
俺がそう言うと、彼女は少し嬉しそうにはにかんで笑った。
やはり、この年代は女の子の方が成長も著しいかな。
その一方でエミリオの方は、ここの御友達と遊ぶ時は弾けるようなので、只の男の子と化す。
今日は姉のハミル王女が来ていないので、のびのびしている。
今日はシェリー姫が来るので、ハミル王女がこちらへ来るのは御母様に禁止されているらしい。
さすがに彼女も今日みたいな日には自粛するようだ。
というか、弟が一緒だとついつい色々な可愛い服を着せてしまいたくなるので。
ウオッカ姫は相変わらずプリー君と手を繋いでいる。
テキーラ姫も爺やさんと手を繋いで張り切っていた。
このあたりも可愛いものだよなあ。
そして、まだ生まれてそうは経っていないプリティドッグの子供達もいる。
まだ小さいから人化しても一歳か二歳かといった感じの容姿なのだが、やる気満々のようだ。
それぞれに大きい兄弟がついて一緒に作るようで、親も参加するのだろう。
今年生まれたプリティドッグのチビ達は、一番最初にうちの子になったミニョンがフランス語の名前なので、フランス語で一から六となる名前を付けてみた。
アン・ドゥ・トロワ・キャトル・サンク・シス。
これも結構可愛い名前だと思うのだ。
アンとキャトルとシスが女の子で、あとは男の子だ。
もう色々な事が楽しくて仕方が無いので、あちこちをチョロチョロとしているのは人間の子供と変わりがないようだ。
ミニョンが初めてケモミミ園へ入って来た頃を彷彿とさせる。
「ところで、園長先生。
何故、その子がいるのでしょうか」
困惑を隠し切れないエリーンが訊いてきた。
「うん、いや面白そうだったから」
そう言って俺が顔を向けた先には、ほえ~っとした顔でボケっとした、うちの大神官見習いがいた。
念のために『御兄ちゃん』を呼んである。
安全装置をわざわざ呼んでおいたのだから、多分フィア時空を発症する事はないはずだ。
例の下宿先の女の子もベル君についてきてしまっていたが。
なんかフィアの方を睨んでいたけど。
「やれやれ。
織原君は?」
「ああ、来てもらってあるよ」
今頃は、彼女と一緒にこの離宮を仲良く散歩している頃だろう。
「いやこの間、織原からフィアに関して面白い話を聞いたのでな。
フィアにペットダムをやらせたら、どんな結果になるのかなと思ってさ。
それにあれこれと試して、あいつが現在どんな感じなのか現状把握しておきたい。
あいつの能力は俺の手にも負えないからな」
「ああ、なるほど。
それがありましたね」
一応、何かあったら対応するようにエリーンにも詰めてもらっているのだが。
あとエルミアの子供達も呼んであるので、実に賑やかな事だ。
あいつらも『髪の毛の伸びる呪いの雛人形』の製作者だからな。
どんなペットダムを作るのか、ちょっと興味がないでもない。
後はなんと言ってもファルだろうか。
どんなペットダムになるのか。
自立型ゴーレムであるペットダムのコアはヒナダムよりも高性能化してあるので、更に魂は宿りやすいのではないだろうか。
さあ、呪いの人形作成会……じゃあなかった、第一回シルベスター離宮ペットダム大会を始めるとしますか。
「じゃあ、これから雛祭を開始するよ。
まあ、のんびり楽しみながらやろう。
最初にルールを説明しておくね。
この各種部品を組み立てて『可愛い物』を作るから。
ヒナダムのように戦わずに、可愛さや動きなどで勝負するのだ。
判定はペットダムが自分達で自動にやる仕組みになっている。
いろんなタイプの部品や素材があるので、それで組んでみてくれ。
そして外見・動き・会話などで得点を競うんだ」
各種の部品はゴーレム達が管理して、組み立て方や遊び方も教えてくれる。
子供達は勇んで材料集めにかかった。
「みんな、作り方がわからなかったら俺か、あるいはトーヤやエディに訊いてくれ」
「ルイ、ルイ」
レオンはルイを呼び出していた。
瑠衣が霊光を放って、御姉さんの姿に変わった。
「よっこいしょ。
またみんな、変な遊びを始めたのねえ。
まあ頑張りますか」
二人は仲良く手を繋いで部品の品定めにかかった。
傍から見ていると、親戚の御姉さんに手を引かれているおチビにしか見えないのだけれども。
ルイは今日も白っぽく輝いていて、非常に眩しいような感じであったのだが、ここでは誰も気にしたりはしないのであった。




