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96-3 可愛い物?

「トーヤ、いるかい?」


 俺はエルドア王宮へ跳んだが、鍛冶をしていたらしい可愛い御稲荷様が、鍛冶用の厚手のツナギと皮手袋を脱ぎ捨ててやってきた。

 エディも一緒だ。


「なあに~。

 今色々と想像してたら何か作ってみたくなっちゃって。

 この世界の普通のやり方でさあ」


 トーヤは現代日本などの大工場でやられている方法や、3Dプリンターなどによる製作方法までも知っている。


 3Dプリンターは日本の御土産にくれてやったので、エディと二人で夢中になって弄り倒していた。

 完成品の実物をやると分解したがるので、本式3Dプリンターの組み立て式の物をくれてやったのだ。

 さすがに色々と調整して真面に動くところまで持っていくのは苦労したらしいが、最近覚えた英語まで駆使してメーカーやネットのマニア達にあれこれと質問して、とうとうモノにしてしまった。


 だがそうなるとまた不思議なもので、むしろドワーフ達がやっている普通の魔法鍛冶をやってみたくなるらしい。

 腕輪に大容量魔力バッテリーを組んでやってあるし、呼べば火精霊の御友達がいつでも来てくれるので、魔法鍛冶をやるのに何の問題もない。


「ああ、お前らにいい物をやろうと思ってな。

 この『髪の伸びる呪いの雛人形』だ」


 男の子へ雛祭りのプレゼントとして与えるには些かズレた代物ではあるのだが。


「うわあ、凄い」

「これ、もしかしてエルミアの!?」


 予想通り、二人共大興奮だ。

 うん、気に入ると思っていたよ。


 二人とも、もう夢中で御人形達を見ている。

 その間、雛人形は凄い顔をして連中を威嚇していたのだが、そんな事をしても二人は手放しで更に大喜びするだけだった。

 さすがの呪いの人形達も、御狐王子達の飽くなき探求心の前には、ちょっと諦めたような顔をしている。


「じゃあ、これはお前らで供養しておいてくれ」


 本当はバルドスのところの日本式神社で供養してもらおうと思っていたんだが、まあいいかなと思って。

 一応、彼らだって初代国王所縁である由緒正しい異世界船橋神社の御稲荷神使様でもあるしな。



 次にエリの家に行って訊いてみた。


「マリー、純日本製の七段御雛様を買ってきたんだけど、どうする?」


 相も変わらず、御雛様の前で座り込んでいるマリーが振り向いた。

 去年やった雛人形に凄く愛着があるらしい。

 だが、ちょっと考えている。


「見るだけ見てもいい?」


 それを聞いて、マリーの御雛様が少し絶望的な表情を浮べた。

 こいつらもか。

 どうもこの世界の人型には、やたらと魂が宿るな。

 やっぱ魔素があるせいかな。

 これは普通の雛人形であって、ゴーレムなんかじゃないのだが。


 なんか地球からもっとあれこれと持ってきたくなるぞ。

 やっぱり小学校の理科室に飾ってある古びた人体模型とかがいいかなあ。


 マリーは、一応並べられた御雛様をしっかりと検分したが、にっこりと微笑んで彼女は言った。


「園長先生、その子達はキッチンエリに並べておいて。

 立派な御雛様だもの、きっと御客様が喜んでくださると思うの。

 私の御雛様は、この子達がいるのだから、そうしておいて」


 そう言って愛おしそうに自分の御雛様を優しく撫でるマリー。

 それを聞いてマリーの御雛様はもうニコニコだ。


 うーむ。

 人形とて愛されれば菩薩に、虐げられれば鬼になるか。

 それもよかろう。

 この御雛様はエリの御店で可愛がってもらうとするか。



 キッチンエリに寄って御雛様を置いてからケモミミ園に帰ったが、ファルが『ヒナダム』を出して、じっくりと弄り回していた。

 その目には一片の曇りの無い勝負師の気概だ。


 うーん、去年からちょくちょく引っ張り出してチューンナップパーツを作ってやっているのだが、遊んでいても他の子がまったく勝てなくなっちゃったからな。


 どうしたものか。

 というわけでヒナダムには、やはり改良が必要だろう。


 その前に魔物用の御雛様を用意してやった。

 竜舎の方にもドラ子とゴン美用に巨大雛段を二組飾ってある。


 海生魔物であるウミネコ達は、雛壇の前でチビ達と一緒に御満悦な様子で雛アラレを食っていたし、子供達は何故か巨大イソギンチャク用のプールの前にも御雛様を一式飾っていた。

 あれに果たして『女』という概念があったかなあ。


 そもそも、奴らの中に『女の子』なるものがいたっけかな。

 あの手の生き物って、雌雄同体が基本じゃなかったっけか。

 一応は生物学的な分類にすれば雌という文字も入っているのだが。

 果たして、あいつらも喜んでくれているのだろうか??


「うーん、どうするかなあ」

「あら、また何をやってるの?」


 俺がテーブルの前で唸っていると、奥さんが娘と一緒にやってきた。

 侍女さんが、すぐに熱いほうじ茶を出してくれたので、礼を言って啜りながら答える。


「いや、もうすぐ雛祭りなんだが、今回の御遊びをどうしようかと思ってさ。

 ヒナダムはもうファルの一人勝ちになってきちゃっているからなあ。

 どんな風にしようかと思ってね」


「ふうん。ねえ、レミちゃんはどんなヒナダムがいいの?」

「ロボットみたいにカワイイの」


 あっさりとそう答える娘。

 良かったぜ、芋虫みたいなのとか言われなくて。


「よし、じゃあ今回のヒナダムは可愛いのにするか」


 最近、日本の御土産で買ってきたペットロボットがケモミミ園では大人気なのだ。

 こいつらは、うちの娘も大の御気に入りなのだ。


 トーヤの御気に入りは小さな愛嬌のある二足ロボだ。

 犬型のヤツはプリティドッグのチビ達に人気だった。


 既にトーヤとエディの餌食になったロボもいて、それはカミラの御気に入りの奴だったので、トーヤがカンカンになったカミラに足でげしげしされていた。

 仕方がないので同じ奴をもう一回買ってきて、なんとか収めたのだ。


 ああ、そういえばもうすぐカミラ達も卒園だなあ。

 ここのところ色々と忙しくて、行事もおざなりにしている事が多くて、学芸会も園長先生は不参加できてしまった。


 裏ダンジョン、ゲルス、裏ダンジョンという感じで、どこかで最後の魔界の鎧が挟まっていた気がする。

 もう魔界の鎧もすっかり脇役になってしまっていたな。

 何かもう忙し過ぎて、『ゴメン、もう君に構ってあげている暇があまり無いから』みたいな感じだった。


 今回の学芸会は『実録! アルバトロス初代国王』を演目にしてやったらしい。

 あの頃はまだAI武がうちにいたからなあ。

 あいつを御本人様の人造妹である真理に持たせておいたので、その意見を参考にして葵ちゃんが脚本を書いたらしい。


 どんな演目だったのか、園長先生としては非常に心配だ。

 来賓で来られた国内勢の方々からも、何か非常に物議を醸したと聞いている。

 そう話してくれた、来賓の一人を務めてくれていたミハエルの顔が少し強張っていた。


 初代国王は、この国では特別な存在だからな。

 しかも、そのオイタをやらかしたのが、まさにその本人の分身であるAI武そのものなのだが。


 AI武の奴め、一体何をやらかしていたのだろうな。

 なんというか、『本人そのもののノンフィクションな狼藉』をそのまま演じたんじゃないだろうな。

 今では、あの初代国王の性格も知れ渡ってしまったので、きっとノンフィクションなエピソードがリアルな感じに伝わったのだろう。


 何しろ初代国王本人の分身が、かつての助手である副園長先生と一緒に作った物語だからなあ。

 俺が居なかったので真理がケモミミ園総責任者であったのだ。


 学芸会のビデオを見るのが怖くて、まだ見ていないのだが。

 真理に言わせると、あれはそう実物と変わりない性格だそうだが!


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