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88-2 御年玉プレゼント

 我がケモミミ園は、目出度く二度目の正月を無事に迎えた。

 あれこれと敵からターゲットにされていたせいで、いつ終わってしまってもおかしくない施設だったから、誠にもって喜ばしい。


 世の中に、そんな物騒な幼稚園って滅多にないよな。

 異世界に幼稚園なんて、たぶんここにしかないだろうから、まあそれも当然の話か。

 これが地球ならベトナムとかイラクなんかには在ったかもしれない。

 戦争で幼稚園を攻撃するのはもう禁止な!


 今日から五日間は御祭だ。

 一昨年はまだ何も無かったし、俺も持っていたパックの餅を食う事さえ忘れていた。

 当時のアドロスは正月ムードなんてなかったし。


 王都でもバタバタしていただけだった。

 今年は餅米を再現出来ているので餅つきがやれそうだ。

 新スキルが大活躍している。

 昔は家でも餅つき機でついていたので、餅も餅米も俺にとって馴染み深いものだった。


「よおし、つくぞ~」


 親方達を連れてきたトーヤが張り切っているが、『手打ち餅』にせんようになあ。

 一応は、ゴーレムどもがマンツーマンで付き添いしているけど。

 なまじ力が強い分だけ、獣人の子はやらかした時は始末に負えない。


 みんな餅つきを張り切っていたが、餅で喉を詰まらせないようにね~。

 もう去年のように大仰な餅対策はやめたが、餅は小さめに作らせてよく噛んで食べるように言ってある。


 そして今年は晴れて愛娘になったレミと一緒なのだ。


 去年、いや一昨年の年末は慌しかった。

 レオンが生まれて、そのせいで俺は寝込んでいたんだったっけ。

 今年もアル・グランドの騒動があったので慌しい年末だった。


 いつのまにか、この世界へ来て二年の歳月が経ってしまっていた。

 年明けにはまた裏ダンジョンへトライしにいかないといけないし。

 今年こそ日本への帰還を果たそう。


 葵ちゃんのところは、もう無事に赤ん坊も生まれてしまったので、日本への帰還を急ぐのも今更だった。

 もはや慌てる事は何もない。


 なにしろ、日本へ帰還するための手段は見つかっており、後はそれをクリヤするだけでいいのだから。

 ただ、そいつが相当な難問なので、そこが大問題なのだが。


 二人の家族も赤ん坊の写真やビデオも見られたので、またゆっくりと顔を見せにおいでと言ってくれているようだ。

 ちゃんと日本人同士で結婚して生まれた子供だしなあ。

 形だけとはいえ、日本でもちゃんと結婚式をやったので、葵ちゃんの家族の人達も落ち着いたしね。


 葵ちゃんは瑠衣だけじゃなくて『ルイ』のビデオも送ったらしい。

 それを見て家族は相当面食らっていたようだが、もうそれも今更だと思ったらしい。

 娘があんなに派手な人間消失事件のヒロインを演じて報道されまくり、異世界なんていうところへ行ってしまっているだけでも充分過ぎる異常事態なのだ。


 あの子も俺張りに、超ド派手にこっちの世界へ来たので、それはもう大騒ぎだったらしい。

 彼女の場合は都会の街中だったからなおの事だ。


 俺は人里離れた山の中のキャンプ場だったが、葵ちゃんは住宅街のど真ん中にある公園で遊具を巻き添えにして、大穴を残して消えたようだし。

 実質的に公園が殆ど消失してしまったのではないだろうか。

 市役所の公園緑地課も穴埋めがさぞかし大変だった事だろう。


 やっぱり自衛隊がドカドカと派手にやって来たらしい。

 消えたのが美人女子高生だったからマスコミも必死で特集していたしな。


 俺も自分が異世界へ来た時の大穴を写真で拝見して、思わず眩暈がしたものだった。

 確かに、こっちへ来た時には小山の上にいた訳なのだが。



 というわけで、新年なので御年玉を配布する事にした。

 御祭り用の御小遣いとは別に、それに何かを一品つける事にした。

 まず愛娘に。


「レミ、はい御年玉」


「わーい。

 ありがとう~」


 この子にはポチ袋と一緒にポシェット型の可愛い収納袋をやった。

 当然魔力抵抗で弾かれて、活きのいい蝉とかは絶対に入らない仕様だ。

 ここが一番肝心の部分だな。

 死んだ蝉なら入ってしまうのは、もうしょうがない。

 レミも人生で初めての収納袋を手にして、嬉しそうに御年玉を出したり入れたりしている。



 お次はファルだ。

 こいつにはおやつ専用の無限収納リュックをくれてやった。

 ファルは自分でも無限収納を持っているのだが、リュック型というだけで気分は違うだろう。

 いつも御出かけの時には、わざわざリュックにおやつを入れて背負っているのだし。

 いくらでもオヤツが入る魔法のリュックに目を輝かせた神聖エリオン様がいた。



 トーヤには携帯工作室を授けた。

 エディにも同じ物をやっておいた。

 ちなみにクリスマスには、サイズは一切関係なしに作業可能な魔導万能十特工具をプレゼントしてある。


「さあて、何を分解しようかな~」

「自動車なんかどう~」


 うーむ。

 さすがに、これはちょっとまずかったかな~。

 要監視案件指定だ。



 カミラには俺の新スキルで再現した『電動ミシン』だ。

 これは形も旧式なのだが、俺の家にあった奴の色は昭和の香りが漂う感じの水色と薄緑色を混ぜたような微妙な色合いなので、これは可愛らしいピンク色にしてみた。


 うちで俺が子供の頃に使っていた物で超旧型だが、パワーは本物に比べて軽くブーストしてあるし、もちろんミスリル針を採用している。

 電気が無いと動かない本物のミシンなので、マギ発電機も内臓させたのだ。

 カミラも夢中で試し縫いしている。


 子供用品は作っていて非常に楽しい。

 ちょっと魔導技術が入った物ばっかりだけどな。


 うちにいる冒険者達や職員さんにも、御年玉というか御祝儀を渡す。


 そしてエルミアの教会にいる子供達や冒険者達にも新年の御祝いの品を贈ったが、エリーンには特製の武器を贈っておいた。

 それはオリハルコン製の魔法弓だ。

 やはり、この世界で狩りに行くのに銃では風情が無い。


「いいですね、これ。

 大物が取れそうです」


 満足そうに手にするエリーン。

 またエルミアの領主様から狩りに誘われているらしい。


 あの人は大型の石弓を手持ちで使うようだ。

 この世界でも普通はそんな事はせんけどね。

 あの御領主様も常識の外にいるような方だし。

 もしかして本当は、あの人もSランク冒険者とかじゃないの⁇

 まあそれなら、爵位がもっと遙か上のはずだから、それはないか。


 それを地球の武器に例えると、二十ミリ・アンチマテリアルライフルを手持ちで撃つようなもんだ。

 さすがにあれは南アフリカ辺りの屈強な男にも無理じゃなかったか?


 確か、あの辺りの軍隊はマズルブレーキ付きの12・7ミリ対物ライフルを手持ちで使っていた気がするが、さすがに二十ミリ砲の手持ち射撃は無理だろう。

 あんな物はライフルとは名ばかりで、完全に砲だぞ、砲。

 あれは重量が重過ぎるので使っている国が殆どない。

 分解運搬するのがまた豪い事だ。


 その昔、二十ミリ機関砲で金庫破りをする泥棒の映画があったが、そんな事は現実ではまず有り得ない。

 硬い金庫に当たって跳ね返った破片や跳弾が危なくって仕方がない。

 あんな物は、破片が当たっただけでも余裕で死ねるわ。

 第一、二十ミリ対物ライフルよりも、もっと重すぎて一人じゃ絶対に持ち運べない。

 二十ミリライフルだって複数人で分解運搬する代物なのに。

 それくらいなら普通に壁の外から盗んだ重機で壊すわい。


 というかドワーフでもなければ、そんな人外な真似は絶対に出来ないはずなのだが、一体どうなっているんだろうな。

 鍛練か? やっぱり鍛練あるのみなのか?

 それも、あのハイドの王様なら余裕で使いこなすかもしれない。


 エリーンはそんな有り得ないような武器で獲物を狩れる人間と普通の弓で五分に渡り合う腕前なのだった。

 今回渡した弓はオリハルコン製の複合弓のロングボウで、重量軽減の魔法ライトウエイトが付与がされているので扱いやすい。


 手持ちの大型クロスボウのように魔導モーターで素早く弦を引き、魔法を込めたオリハルコン製の大型魔法矢を打ち込める。

 矢はホーミングして何度もリサイクル発射が可能だ。


 この矢はオリハルコンという材質はもとより、かなり強化をかけてあるため少々の事で変形してしまうような事はない。

 これならかなりの大物でも、エリーンの腕と相まって仕留め損なう事はあるまい。


「後でデニスにも届けておくか。

 こいつはスカイバード用の新しい乗用鞍だ。

 タンデムモードもあるので、後ろにお前を乗せたら弓で飛龍狩りを楽しめるぞ」


「それはいいですねー。

 でも肝心のあいつが滅茶苦茶に忙しそうなんだけど」


「そのデニスって一体誰なんですかっ!」


 少し気色ばんだリヒターが、俺達の話に割り込んで聞いてくる。


「彼女と同じチームエドのメンバーだよ。

 うちで雇っているのにアル・グランドへ応援に行ったまま、ちっとも帰ってこんがな。

 というか、お前まだこっちにいたのかよ!

 この忙しいだろう新年の御祭の真っ最中に、帝国宰相のお前がここにいていいのか!?」


「はっはっは。

 自慢じゃありませんが、皇帝陛下の御傍について以来御休みなどは只の一度も貰っておりませぬゆえ、陛下も丁度いいから休んで来いと仰られて」


「そうだったか……まあいいけどな」


 まあ、あいつだって腹心にも嫁を娶らせたいのだろうがな。

 あそこはまだアル・グランドほど仕事が逼迫していないし、最近は皇帝にも少しは余裕も出ているようだ。


 それにしても、帝国もブラックだな。


 新作です。

「二重スキルの冒険者 召喚スキルで商売繁盛」

 https://ncode.syosetu.com/n9336el/

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